メイドインザダーク

亜未田 久志

ブラックメイド


 大きなお屋敷があった。瀟洒な洋館。その一部屋、眠りこける男が一人。

 その部屋にそっと忍び込む女性。その姿はメイド!


「お覚悟を」


 ナイフを取り出すメイド。ベッドに突き立てようとする、しかし。


「うーん……」


 寝返りをうつ男。それで躱される。メイドのナイフは男ではなくベッドを捉える。

 ザスッ、ぞんな音が響く。


「ちっ」

「んー? ザスッ……? なんの音だってうわぁ!?」

「おはようございます、ご主人様」

「なんでナイフが刺さってる!?」

「さぁ」

「……さぁ!?」


 驚きながらも、仕方なく起き上がるご主人。



 そう毎朝、ナイフがベッドに刺さっているのは日常茶飯事なのだった。


「朝食の準備は出来ているか?」


 もう慣れっこのように振る舞うご主人。

 足がガクガク震えている。


「くすっ」

「笑ったか!?」

「いえ」


 朝食は鮭のムニエル。スープにトースト。

 なのだが――


「なんだこの色……」


 実に毒々しい緑色のスープがそこにはあった。


「グリーンスープでございます」

「こんな色のグリーンスープがあるか!」


 仕方なくスープだけは避けて食べるご主人。

 スープを飲んでいたら即死とも知らずに。

 運の良い事だ。


「では行って来る」

「いってらっしゃいませ」


 車に乗り込み会社へ向かおうとした、その瞬間。

 車が爆発した。


「……は?」

「しまった、時限装置の設定が」

「おい、今なんて」

「いえ」


 これで何台目だろう。また車の手配をしなくてはとご主人はあちこちに電話をかける。

 実はご主人は分かっていた。その全ての犯人がこのメイドである事を。

 この財団の当主つまりご主人、実は、義理の子供であり、メイドの方が本当の当主筋子供なのである。男の当主が欲しかった親が貰って来た孤児、それがご主人の正体。だからメイドはご主人が憎いのである。しかし、そんなメイドをそれでも愛おしく思う。それがご主人。


 二人の殺し愛、殺され愛は続く。

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メイドインザダーク 亜未田 久志 @abky-6102

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