第49話 忠告よりも今日の宿


「それでは明日、よろしくお願いしますね、ルセリナさん」

「善処します」


 数日ぶりの再会も、時間で換算すると多分ほんの少しで終わった。

 後はこっちの頑張り次第。さあてどうしてくれようか。


「そうだ、最後に一つ」

「ん?」


 何だろう、アドバイス?


「ヒューベル様のことですが、あまり信用し過ぎないように」

「えっ……」


 先輩ったら何を言うかと思えば。それ、最後に不穏なこと言って去ってくキャラじゃないですか。やめてよ、フラグが立っちゃう。裏切りのフラグがすくすく二足歩行で歩き出しちゃう。

 うーん、かくなる上は。


「だいじょーぶ、大丈夫。ワタシ ベルサン シンジテルヨ」

「……なんですか、そのふざけた片言は」


 予想通りの反応ありがとう先輩。でも、そんな哀れんだ目で見ないで欲しい。これにはちゃんと理由があるのですよ。


「フラグを少しでも緩和させようと、相手を信じる純粋な女の子になってみました」

「その発言が既に純粋さを失っていますね」


 ははは、そーですね。

 畜生、返す言葉もねえ。



===



「あ、おかえりー」

「うわ」


 ベルさん、いたのか。

 そこ、さっき君と別れた場所だよな。確かにベンチはあったけど、そこに座って待ってるとはまさか思わなかったよ。


「き、帰宅してなかったんですね」

「うん。すぐ戻ってくるかなって」

「そ、そうですか」


 本当に? 本当にそんな理由で待ってたりする? レイズ様ならたぶん即帰るよ? 私も即帰るし。

 あーなんか、シュタイン先輩の言葉のせいで、妙に胡散臭く見えるわ。


「それにもう少しだけ一緒に過ごしたかったし」

「???」


 胡散臭いな!!! 何その発想。今もう夜遅いんだよ? 帰ってお風呂に入ってゴロゴロして、それからぐっすり寝落ちしたくないの? 一緒に過ごしたいって、そんな会って一日も経ってない人と過ごしたい? そんな馬鹿な。


「えー……誠に申し訳ございませんが、私はもう家に帰って寝たいです」

「正直だね」

「ええ、正直だけがモットーでございます」


 嘘も方便という言葉をご存じだろうか。


「うーん。なんだか急に他人行儀に聞こえるんだけど」

「気のせいでございましょう」

「で、ルセリナちゃんはこれからどうしたいんだっけ?」

「暖かい布団で寝たいです」

「じゃあ質問」


 質問? なんだろう。


「今日はどこに泊まるのかな?」

「どこにって」


 そんなの適当なところで宿屋を探して……あ。


「……………」

「どこに?」

「まだ……決まっていませんね」


 喫茶店のコーヒーくらいのお値段で泊まれる『お一人様』用の格安ホテルとかどこかにあったかな。


「そんなルセリナちゃんに美味しい話が。一緒にちょっとお話に付き合ってくれるだけで、宿代を提供してくれる人間がここに」


「……承りましょう」

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