第31話 私の存在理由について


 前回の話で『森の中の馬車故障編(?)』が終了したと思っただろう? 実は違うんだなぁ。


「ここで重大発表ージャジャーーン!」

「は?」

「何……? さっさと出て行きなさいよ」


 よーし良かった。とりあえず無視されずに済んだ。

 ご覧の通り、実は私達はまだメイちゃんの宿屋から出ていないのであった。


「おい、行くぞ。あとさっきからその手、離せよ。服に皺が付くだろ」


 はい残念! そのくらいでは皺になりません。

 そんな事よりもこっちの方が一大事なんだって。


「えー実はですね、腰が抜けました」

「は?」

「さっきの剣でバシュッてやるやつでですね、あれで死ぬかと思いまして、ええ。そしたら腰が抜けました」


 仕方ない。だっていきなりだったから。普通はこうなる。チビらなかっただけ褒めて欲しい。


「そうか」

「はい」

「分かった」

「分かってもらえましたか」

「仕方ない」


 でしょでしょ。お分かりいただけて何よりです。という訳でここは一つ、私を……


「じゃあ俺一人でいいわ」

「ちょっ……」

「ちょっとー忘れ物はやめてよねー」


 メイちゃんまで。

 大体私、忘れ物っていうか人なんですけど。じゃなくて。


「それは勘弁してください」


 移動手段もお金もないままここに放置されたら、私は確実にデッドエンドしてしまう。


「レイズ様、慈悲を」

「……」

「どうか私にも馬車の鍵ような慈悲を」


 お姫様抱っことは言わない。

 せめて俵担ぎでいいから、私も一緒に連れて行ってくれ。


「お前」


 お。慈悲か?


「はい?」

「お前、今回何した」


 ええー寄りにもよってそんな質問。


「え。いや、何って」


 そんなの見りゃ分かるだろう。


「……何もやっていませんね」


 あーでも、最初に縄くらいはほどいた(異空間に収納させた)かな。


「俺思ったんだけど」


 あ、なんだか嫌な予感。


「お前必要か?」


 やっぱり。

 すると思ったよ、存在否定。


「確かに俺とお前は一緒に追放されたけど」

「ええ、されましたね」

「別にその後の行動まで一緒じゃなくてよくないか?」

「……」


 おっしゃる通り。

 遂に気づいてしまったか、その事実に。私もね、まあ薄々は感じてたんだ。薄々は。言うのは得策じゃないから黙ってたけど。


「そもそも、俺がこうなったのもお前が余計なことをしたせいだし」

「!?」


 いやいや、それは元はと言えばレイズ様がアリスちゃんの形見を勝手に盗んだことが原因だろう。


「そ、それは、レイズ様が原因な部分も少し……いや、かなりあるかなぁって」

「とにかくだ」


 あっ、話を遮られた。


「俺とお前が一緒にいる意味は……無い」

「!!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る