第27話 「結婚すれば」なんてアドバイスしてくる奴は基本他人事である
「縁が出来たってことだろ」
「その通り。なーんだちゃんと分かってたんじゃない」
えん、円、縁。
さも当然のように返された言葉のキャッチボール。私はそれに混ざることが出来ない。
「縁っていうと……?」
「つまりね、馬車の所有者になることで私達はルメール家と関係を持っていますよっていう証明が出来るの。お金の融資も社交場への立ち入りも思いのまま。もうこんな貧乏生活とはおさらばだわ」
大きく伸びをして、よっぽどせいせいしたんだろう。
「レイズ様、知ってたんですか?」
「当たり前だろ」
「そうでしたか、ふーん、へーえ、ほーお……」
しっかしその馬車にそんな価値がねぇ……。何でも思いのままかぁ……。
「って、なんでそれを説明してくれなかったんですか!?」
それがあれば、例え無一文で投げ出されたとはいえ、いくらでも生活の基盤は作れたってのに! むしろハスターパパはそれを承知の上で馬車を用意してくれたんじゃないの!?
「家を追放された立場でそんなものに頼ってたまるか」
は。
「はぁぁ? プライド? プライドってやつですか。そんなもん一銭にもならないんですよ」
これだから思春期ボーイ(20歳)は困る。自分を物語の主人公か何かと勘違いしてるんじゃないか。ないない。自分達に限って主人公なんてポジションはありえませーん。地道にやんなきゃいけなかったんだよ、私達みたいな人種はさぁ。
「あーあ欲しかったなー、ルメール家の財産欲しかったなぁー」
「自分で移動魔法と交換するって言いだしたんだろ」
「うっ……」
痛いところを。
「大体、あの家の財産が欲しいなら結婚でもすりゃいいだろ。フェリクスあたりと」
「はいぃ?」
聞き間違いか? 私の聞き間違いなのか?
「なんであの常人の思考とは思えない特殊な性癖をお持ちの義弟様と結婚を? そもそも一使用人がその主人と結婚とか身分違いもいいところでしょう。主人に好かれているとか、特殊なフラグを立ててるとか、そういう特別な事情がない限りありえませんから」
シュタイン先輩やアリスちゃんのお母さんみたいにさ。
この場合、好かれていようがそんなフラグは火炎放射器で海の藻屑と化してやるけど。
「好かれてるのかと思った」
感性死んでるのかコイツ。
「あれですか、レイズ様は好きな相手の命を週三くらいの頻度で狙ったりするんですか」
「するか馬鹿」
「でしょう? そんな話はまずありえません」
「あっそ」
あっそじゃないよ、あっそじゃ。随分適当な言葉のキャッチボールだな、おい。
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