魔物討伐

 晴天の下、騎士達が魔物を相手に剣を振るう。さほど強くはないが、数だけは多い。


「植物系はすべて燃やしなさい!」


 魔物にはいくつか種類があり、それぞれに警戒するべき点がある。


 植物系の魔物には、種を植え付けて繁殖すると言われていた。死体が対象だが、怪我人であれば生きていても可能となるのだ。


「リーナ様、そろそろ休憩です」


「問題ありません。あなた方は下がりなさい」


 ずっと魔法を使うことはできず、援護として使っている騎士達は交代制で動いている。


 けれど、リーナには問題がない。この程度で疲れるほど、弱くはないとレイピアを握り直す。


「次の部隊、続きなさい」


 休憩を終えた騎士達が戻ってくれば、リーナは魔物の群れへと斬りかかった。


 魔物討伐として、ローランからランダート周辺の探索に入って十日。魔物との戦いは三度目だった。


 これが多いのか少ないのか、判断には迷うところだ。


「それで最後です! 逃さないでください!」


 自分から離れている魔物を見て、リーナが他の騎士へと指示を出す。


 すぐさま一人の騎士が向かい、この討伐は完了した。


「お疲れさまです。交代までもう少し時間があるので、警戒を怠らないようにお願いします」


 日暮れまでは、昼の担当となる。夜を受け持つ仲間へ交代するまで、今日の職務は終わらないのだ。


 月光騎士団の人数なら、部隊を三分割もできる。しかし、小隊長ができる人材がいない。


(仕方ないよね)


 こればかりは、どうしようもないとリーナはため息を吐く。


 隣をちらりと見れば、クオンが鋭い眼差しで周囲を見ている。


 若さなど関係ない。けれど、若すぎる団長に不満を持つ者は多く、彼が団長になると同時に辞めた騎士もいた。


「心配なの?」


「シルヴィア…」


 近寄ってきた女騎士はシルヴィア・ソレニムス。クロエの妹で、リーナよりは三つ年上。現在二十歳の女性だ。


「クオンなら、大丈夫よ」


 一年前ローランから月光騎士団へ配属変更された人物で、二人との交流もある。


 おそらく、意図的に配属されたのだろう。わかっているからこそ、クオンも扱いが慎重だった。彼女がいつまでいるかわからないから。


「親の力で騎士になったわけじゃないし、団長になったのも実力よ。私達がわかっていれば、いいの」


 微笑むシルヴィアに、リーナも頷いて応える。


 多くの騎士を失ったかもしれないが、得たものもたくさんあった。すべてが悪いことではないのだ。


 不満を持つ騎士を抱えるぐらいなら、今ぐらいがちょうどいい。それに、すべてが去ったわけでもないのだから。


 残った者や新しい者。誰もが一年で気付いたことだろう。若いからでも、親の力でもない。彼の実力と先を見据えた結果、団長となったのだと。


「わかってる者は、みんな残っている。クオンは底知れない強さを秘めてるからね」


 笑いながら言うから、リーナはなんのことかと見る。


「そのうちわかるわよ」


 残りの職務をこなしましょうと言われれば、ハッとしたように頷く。まだ職務中なのだから、こんなところで話している場合ではない。


 もう一度だけクオンを見て、リーナは怪我人の確認を行う。






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