虫取り大会~秋の虫偏~

 「ただいまから、虫取り大会を始めるのじゃ!」

木漏こもれ日林道に集められたヒビキたちは、カメじいの説明を聞く。

「今回のテーマは、秋の虫なのじゃ!制限時間内にどれだけつかまえたのかを競うのじゃ!」

こうして、虫取り大会が始まった。

「チンチロリン…」

ミッケとドドは、

「えいっ!」

「これはスズムシ!」

「スズムシは、大型の日本産コオロギ科昆虫かこんちゅうである。古くはマツムシと呼ばれるなど、双方に混同があった。英語ではBell cricketという。体長は二十一ミリである。頭部は小さく、複眼のみで単眼は退化している。はね幅広はばひろく、うりの種のような形をしている、羽は二枚と思われがちだが、羽化直後の成虫個体は四枚あり、その後にこうきゃくで後翅を自ら脱落させる。羽化間もない個体は飛ぶこともあり、明かりに集まり、自動じどう販売機はんばいきの下などで鳴き声が聞かれることもある。なお、長翅型と短翅型があり、飛ぶのは長翅型のみである。飼育しいくを重ねた販売個体は短翅型の割合が多い上、飛翔筋ひしょうすじの発達も悪いことが多いため飛ぶことは非常に稀である。夜行性のため触角しょっかくが長くなっており、触角は白い部分が多く一部は黒い。スズムシの声は古くから鳴く虫の王と呼ばれている。雄の羽は幅が広くみゃくが発達しており、太い脈の一部はヤスリのようになっていて、羽を垂直に立てて細かく鳴き続ける。成虫は夏に出現し、森林しんりんえんまたはススキなどの多い暗いしげみの地表に生息する。自然の豊かな農村などでは、田畑のわきの草むらで大きな石やコンクリート片などをひっくり返すと、多数の個体がひそんでいる姿に出会うこともある。他の地表性の種、たとえばエンマコオロギなどに比べ脚が比較的ひかくてきながく、細いため、あなることはなく物陰ものかげに隠れるのみである。基本的に夜行性であり、昼間は地表の物陰に隠れ、夜に下草の間で鳴き声を上げるが、くもりの日などは昼夜を問わず良く鳴く。めすさん卵管らんかんを土中にし込み産卵する。成虫の羽化は七月下旬頃に始まり、九月いっぱいまで鳴き声が聴かれる。十月初旬にはほぼ全ての野生個体が死亡するが、飼育下ではしばしばさらにおそくまで生存する。食性は雑食性ざっしょくせいで、野生下では草木の葉や小昆虫の死骸しがいとうを食べている」

スズムシを捕まえた。

「鳴き声を聞けば近くにいるか判別できる虫もあるのじゃ!げられるといつきにくいから、ゆっくり近づくのじゃ!」

カメじいからのアドバイスを聞いたリンリンとタンタンは、

「あそこにいる!」

「それっ!」

「コオロギ、捕まえた!」

「コオロギは、分類体系によってはコオロギ科ともなるが、指し示すものは同じである。日本ではコオロギ科コオロギ亜科あかに分類されるエンマコオロギ、ミツカドコオロギ、オカメコオロギ、ツヅレサセコオロギなどが代表的な種類としてげられる。ただし人によってコオロギの概念がいねんことなり、コオロギ上科の中でもスズムシ、マツムシ、ケラなどを外すこともある。成虫の体長は二十五センチメートルほどだが、アリヅカコオロギ、マダラスズ、シバスズなど数ミリメートルしかないものもいる。日本に分布するコオロギで最大種は体長三十五ミリメートル前後のエンマコオロギやケラだが、海外にはタイワンオオコオロギをはじめ五十ミリメートルをえる種類も多い。体色は黒〜茶色のものが多く、太短い円筒形えんとうけい紡錘形ぼうすいけいの体つきをしている。頭部には体長以上はある毛髪状もうはつじょうの触角を持つ。また、尾端おはたにも後ろ向きに二つの尾毛があり、これも触角同様に周囲の様子を探る感覚器である。脚の中では後脚が特に長く太く発達し、移動や逃走とうそうの際には後脚を利用して跳躍ちょうやくするものが多い。また、前脚脛節のつけ根に耳を持ち、これで周囲の物音や他個体の鳴き声を聞き取る。成虫には翅があり、翅を使って飛翔する種類がいる。その一方で前後の翅が鱗状りんじょうに退化したものや全く消失しているものもいる。オス成虫の翅にはやすり状の発音器や共鳴室があり、発音器をこすり合わせて鳴くものが多い。翅を使って鳴く種類のオスとメスを比べた場合、メスの前翅の翅脈は前後に直線的に伸びるが、オスの翅脈は複雑な模様を描く。中にはメスに翅がなく、オスに鳴くための前翅だけがあるカネタタキのような種類や、オスは羽化後に後翅が取れてしまう種類もいる。樹上性の種類の中には、立派な翅があるにも関わらずおすも全く鳴くことが出来ないものも少なくない。コオロギは雌を寄せ付けるときに鳴くほか、縄張なわばりを守るために鳴いている。メスの尾端には長い産卵管があり、産卵の際に土中や植物の組織内に産卵管を差し込む。地上性-半地上性の多くの種類は他のバッタ目昆虫に比べむね柔軟性じゅうなんせいがあり、頭さえ通ればその隙間すきまをくぐり抜けてしまう。しかしスズムシのようにこの特技を持ち合わせていないものもいる。コオロギ上科の多くの種では、同種、同性であっても、環境その他の影響により前・後翅が長く発達し飛翔することのできる長翅型と、それらが短く飛翔できない短翅型が出現する。これらのちがいは、その個体が生育するうえで被ったストレスに関係があることが実験により確かめられている。幼虫時に脚や尾毛等の付属肢を切断したり、高温や低温にさらして飼育すると、その個体は短翅型として羽化し、一方、完品のまま適温てきおん範囲内はんいないで成長した個体は長翅型として羽化する。また、長翅型として羽化して直後に脚を失うと、飛翔せずに後翅を脱落させ飛翔能力をすみやかに放棄ほうきする。これらのことから、コオロギは、体にストレスを受けると、体内のホルモンが、長翅による飛翔という冒険的ぼうけんてき行動こうどうをその個体にひかえさせるよう働くと考えられている。鼓膜こまくを伴う進化的な耳を持つ点で、他の上科と区別され、前肢ぜんしすねぶしに存在することが知られる。キリギリス亜目の鼓膜の獲得かくとくは多系統的であり、キリギリス科 Tettigoniidae 等も独自に鼓膜を獲得しているが、構造や場所などにより区別でき、また、コオロギ上科のたん系統性けいとうせいが確認できる。田畑、草原、森林、人家の周囲などの地上に生息するが、乾燥地かんそうち湿地しっち、山地、海岸など環境によって見られる種類は異なる。ほとんどのコオロギは夜行性で、日中は草地や石の下、穴など物陰に潜むことが多い。中には洞窟性どうくつせいのものやアリヅカコオロギのようにアリの巣に共生するものもいる。触角、尾毛、耳などの感覚器や鳴き声はこれらの暗い空間に適応したものである。夜間に地上を徘徊はいかいする種類には飛翔して灯火ともしびに飛来するものもいる。完全な草食や肉食もいるが、ほとんどが雑食で、植物質の他にも小動物の死骸などを食べる。小さな昆虫を捕食するほか、動物性の餌が長らく手に入らなかったり、脱皮中で動けなかったりしていて同種個体と遭遇そうぐうした場合、共食いをすることもある。飼育下でも雑食性の種類は植物質と動物質の餌を適度に与えた方がよい。脱皮後のコオロギの羽は白色をしており、しばらく時間をかけて羽が固まり黒っぽく色付いていく。また、自身の脱皮した抜けがらを食べる習性がある。天敵はカマキリ、クモ、ムカデ、カエル、トカゲ、鳥類などである。このような天敵に遭遇した時は後脚で大きく跳躍して逃走する。また、湿地に適応した種類は水面に落ちてもよく水にき、人間の平泳ぎのように後脚で水面をってかなりの速度で泳ぐ。オスが鳴く種類は同種個体との接触に鳴き声を利用し、メスと出会って交尾するか、他のオスと戦って排除はいじょする。交尾が終わったメスは土中や植物の組織内に一粒ずつ産卵する。温帯地方に分布するものは秋に成虫が発生し、卵で越冬えっとうするものが多い。孵化ふかする幼虫は小さくて翅がない以外は成虫によく似た体型をしており、成虫と同じ食物をって成長する」

コオロギを捕まえることに成功した。

 そして、

「タイムアップじゃ!」

ついに制限時間を迎えた。

「今回の優勝者は、八匹捕まえたリンリンなのじゃ!」

「やったね!」

今回の虫取り大会の優勝者は、リンリン。

「これを受け取るのじゃ!」

「おめでとう!」

リンリンは、カメじいから金メダルを受け取ったのであった。

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