第41話 異常状況下の告白?
竜史郎さんのフォローもあったからか。
これで彼女の口から情報が洩れることはないと思う。
しかし、琴葉が最後に言った「価値観が変わった」ってどういう意味だ?
その彼女も学園三大美少女と呼ばれるだけに、とても清々しく可愛らしい微笑を浮かべている。
悪い意味ではないだろうと割り切ることにした。
おや?
今更ながら学園三大美少女が全員揃っているよな……。
こうして見ると、やっぱ凄いオーラを放っていると思う。
それに、彩花や香那恵さんもまったく引けを取らないくらい魅力的だ。
こんな彼女達に囲まれている陰キャぼっちの僕って、実はやばい状況のかもしれない……。
「とりあえず地下の掃討任務はコンプリートだな。念のため貯蔵庫も調べた後、早急に物資を運ぶようにしよう」
僕の他にもう一人の男性である竜史郎さんが提案してきた。
でも、この人はカッコイイから女子達の輪に入っても普通に溶け込んでいる。
寧ろ主人公キャラって感じ……そこへいくと僕ってモブなのだろうか?
「少年、どうした?」
「いえ、なんでも……竜史郎さん、随分急ぐなと思いまして」
「理由は幾つかある。一つはこのまま物資を放置できないということ。きっと『反生徒会派』も狙っている筈だからだ。そして夜になると、
なるほど、流石は竜史郎さん。
先々を見据えた用心深さだ。
「では私が大熊先生と体力自慢の男子生徒達を呼びに行きましょう。その間、貯蔵庫の確認をお願いします」
「わかった。西園寺……いや苗字で呼ぶのもアレだな。『イオリ』と呼ばせてもらうぜ。単独は危険だから護衛をつけよう、シノブが一番元気そうだな。ついて行ってくれるか?」
「いーよーっ。でも姫先輩も元気そうだけどね~」
「……私も別に構いませんけど?」
彩花に振られ、有栖は答えながらも若干の戸惑いを見せている。
一度は学園から逃げ出してしまった後ろめたさと、唯織先輩の幼馴染みであり元彼である『笠間 潤輝』との関係が引っ掛かっているのかもしれない。
っと言っても、唯織先輩から有栖への言及は一度もないんだけどね。
「いや、嬢さんは少年の護衛をしてくれ。大丈夫とは思うが一応は負傷者だからな」
「そういうことなら喜んで。ね、ミユキくん」
竜史郎さんが僕の名を出した途端、有栖は機嫌よく声を弾ませて近づいて来た。
その仕草が、どこか懐かれた子犬っぽくて可愛さと愛しさが入り混じる。
だからって勘違いはしちゃいけないけどね。
あくまで、有栖が僕に対する信頼と優しさからの交流だと察した。
「ごめんね、有栖さん。また守ってもらっちゃう形で……」
「いいよ。普段は私が支えてもらっているんだからね」
「え? 支えている、僕が?」
「なんでもないよ。一緒に行きましょ、ね?」
優しくて柔らかい微笑みを浮かべて見せる、有栖。
その表情に思わず、ドキッと胸が高鳴ってしまう。
お互い血飛沫を浴びたまま、しかもあちらこちらで、
普通、異常だろ? こんな状況で……。
いくら憧れの片想いである女の子を相手でもだ。
つい緊張感なく、ときめいてしまう自分に対してそう言い聞かせた。
ボイラー室の奥側の開閉扉を開け、貯蔵庫の照明を付ける。
某大型スーパー並みに部屋びっしりと大量のダンボールが積み重なっている。
防災用の非常食や保存水など、その他生活に必要な物資が入った備蓄品の数々。
にしても相当な数だ。
何せ全校生徒480名+教職員28名が三日間は過ごせる量だからな。
これだけあれば、当分の間は困ることがないだろう。
「
竜史郎さんの的確な指示で、僕達は二手に分かれて見回りを行う。
僕には有栖と琴葉が傍についてくれている。
「多分、
有栖は言い切った。
「姫宮先輩、何故そう言えるんです?」
琴葉が眉を顰め聞いてくる。
「だって気配しないもの。それに独特の腐敗臭もないし」
「……姫宮先輩、本当に何があったんです? しばらく見ない内に、すっかり別人になったみたい。あの驚異的な身体能力といい……それに笠間先輩のことだって」
「――前に城田さんに教えた通りだよ」
「
「信じてとまでは言わない……でも、私がこうして学園に戻って来れたのは、全てミユキくんのおかげだから……私にとって、それが全てなの」
「……夜崎先輩のことは信用します。でも笠間先輩のことは、いくら切り傷を見せられようと微妙です……彼を疎ましく思っていた富樫副会長なら信じるでしょうけど」
あの副会長、唯織先輩に気があるからだろ?
馴れ馴れしい年下の幼馴染みに嫉妬していたって感じに見えた。
だけど、琴葉……いつの間にか僕を見る目というか、何か態度が変わったよな?
前は興味なさそうに
まぁ、認めてくれるだけ嬉しいけどね。
それから有栖は何も言わない。
特に問われた『身体強化』については、僕の体質に関与することであり、また不明なところが多い段階だ。
きっと、『黄鬼』状態で僕を噛んだ唯織先輩も彼女達と同じになるだろう。
しかし、琴葉はまだ聞き足りない表情を浮かべている。
「……姫宮先輩、最後にひとつ聞いてもいいですか?」
「なぁに?」
「夜崎先輩のこと、どう思っているんです?
「ブッ!」
噴き出したのは有栖じゃなく、僕の方だ。
「な、何を言ってんだ、琴葉さん! どうして僕が出てくるんだよ!?」
「……姫宮先輩に聞いているんです。夜崎先輩は黙っていて」
え!? でも僕のことについてだよね!?
やめてくれ! 有栖の返答次第じゃ、僕ぅ、この場で自害するかもしれないから!
「それは――」
有栖は何故か僕の方をじっと見つめてきた。
とても真剣な眼差し、黒瞳が潤ませている。
さらに頬を染め、形の良い唇が震わせながら。
その仕草はまるで――
ドキッ
僕の心臓が一気に跳ね上がる。
え? え? まさか……これって、こ、告……
「――少年、貯蔵庫に
離れた場所から、竜史郎さんの声が響き渡る。
有栖は出かかった言葉を呑み込み、そのまま黙ってしまった。
一方の琴葉も溜息を吐きつつ、「もういいです」と首を横に振るう。
結局、僕に対する有栖の気持ちは聞けなかった……。
果たして彼女は何を言おうとしていたのだろうか?
残念だと思うと同時に、ほっと胸を撫で下す自分もいる。
有栖の返答次第じゃ天国から地獄に落とされかねないからな……。
僕は大声で「わかりました!」返事し、扉前で竜史郎さん達と合流を果たした。
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