第26話 久しぶりの屑
「きゃは! センパイってば超ウケるぅ~!」
お約束通り、彩花が僕をイジってくる。
しかも城田と接点がないと知った途端、やたら嬉しそうだ。
「もう、彩花ちゃん! そんなこと言ったら、ミユキくんに失礼だよ! 城田さん……ジュ、いや笠間君はもうここには来ないと思うよ」
有栖が僕をフォローしてくれると同時に、城田に言い聞かせている。
「姫宮先輩、どうして? だって先輩達は付き合っているんですよね? どうして別行動なんですか?」
「……別れたの。正確には、私は
言いながら、有栖は制服の右腕袖をめくって見せる。
まだ薄っすらと残っている傷跡――。
笠間が
あの時、有栖が涙を流して話してくれた光景を思い出す度に、沸々と怒りが込み上げてくる。
「そ、そんな……あの笠間先輩が、姫宮先輩を見捨てて自分だけ逃げた?」
「本当だよ。そして彼……ミユキくんに助けられたんだぁ。本当に感謝しているの」
有栖は僕に向けて優しい眼差し向けてくれる。
もう、この子にさえ見限られなければ、他になんと思われようと構わない。
「……その手に持つ拳銃も、そこの先輩からもらったんですか? 軽々と扱っていましたけど、それ本物ですよね? てか同じ学園の二年生みたいだけど、何者なんですか?」
「銃器類は俺が彼女らに渡したものだ。仲間として迎えた上でな。少年も仲間の一人だからな、余計な詮索は不要だ」
竜史郎は冷たい口調で言い切る。
相手がどんなに可愛らしい美少女でも冷静沈着な塩対応だ。
香那恵さんが城田に近づき、優しい手つきで触れながら調べている。
「見たところ、どこも噛まれてないようね。大丈夫、立てる?」
「ええ、おかげさまで……大丈夫です」
城田は自力で立ち上がる。思いの外、元気のようだ。
「そうだ、キミは『西園寺
「はい、勿論。この学園の生徒会長ですから、寧ろ知らない生徒はいないと思います。それに、私は『生徒会派』なので……」
生徒会派だって?
そう言えば、立て籠っている中で不満を持つ生徒同士が分裂して『反対派グループ』っていう派閥ができたんだよな?
きっかけを作ったのが、真っ先にキレた『笠間 潤輝』らしい。
ユーチューバーの中田も配信動画で言っていたし間違いないだろう。
「都合がいいな。助けて正解だ。では彼女のところに案内してくれないか? どうしても会う必要があるんだ」
「わかりました。助けて頂いたことですし、ご案内いたします」
城田は素直に頷き、先頭に立って僕達を案内してくれる。
これまでの彼女の言動から、きっと「面食い」に違いない。
だから、カッコイイ竜史郎さんの塩対応でも不満なく応じるのだ。
――間違いない。僕の『ぼっち眼』がそう言っている。
他者と関わらない分、周囲の素振りと心理には鋭いんだ、僕は。
特に色恋沙汰には呪詛を唱えながら眺めていたからな。
有栖以外のカップルに対して……。
「ところで、キミ……シロダさんか? 武装しているとはいえ、どうして一人でここにいる? それなりに対策を施されているとはいえ、単独では危険じゃないのか?」
「今日は私の番なので仕方ないです。でも一人じゃなかったんですよ……途中まではね」
「途中まではか……では仲間は
竜史郎さんの問いに、先頭を歩く城田は振り向かず黙って頷く。
「あのぅ、『私の番』ってどういう意味なの?」
僕は気になり聞いてみるも、城田に無言だった。
なんだ、こいつ……まさか僕がイケメンじゃないから無視ですか!? シカトですか!?
イラっとするわ~、この一年。
ちょっと学園の三大美少女に挙げられているからって~!
そこへいくと同じ美少女でも有栖は本当に天使だわ。
こんな僕でも、いつも優しく声を掛けてくれているからな。
同じ一年でも、まだ彩花の方が遥かにイケて可愛いいし性格もいいと思う。
不満を過らせた途端、城田の足取りが止まっていることに気づく。
どうやら僕を無視していたのではなく、先に何かに気づいた様子だ。
「――ケンちゃん。もうバケモン去ったかな~? 何匹が頭カチ割られていたけど、誰が殺ったのよぉ?」
角の方から複数の男達の声が聞こえる。
そして、すぐに姿を見せた。
明らかな校則違反の学生服をラフに着こなした10人くらいの男子生徒。
「あいつらは……」
僕にはその連中に見覚えがあった。
三年の不良グループ。
特に真ん中を堂々と歩く短髪の金髪野郎は、前に僕をカツアゲした『
僕は当時の記憶が過る。
そして思った。
――白コートのアラサー男との関係性。
奴らの言葉の節々から、誰かに頼まれた上で僕をカツアゲした可能性がある。
もし、あの男に依頼された事なら合点も行く。
何故なら、僕はアラサー男に介抱された後に謎の高熱を発症して笠間病院へ緊急搬送され入院。
その日の夜中に、担当医を偽ったアラサー男によって昏睡状態となり、空白の一ヵ月間へと繋がっているんだ。
今、思うと余計、こいつらが何か関与している可能性がある。
「あ~れ~? 結構生き残ってんじゃん? ん? 見たことのない奴もいんぞ……それに他校の奴に、モデルガンを持った奴……なんで刀を持ったナースがいんの?」
不良グループの一人が僕達に向けて指を差してきた。
全員、金属バットや工具用のバール等を所持し武装している。
竜史郎さんが肩に掛けている『M16』をモデルガンだと思っているようだ。
まぁ、日本だと無理はないだろう。
「ほう、シロダさんのお仲間か?」
竜史郎さんの問いに、城田は首を大きく横に振るう。
「まさか! あいつらのせいで、他のみんなが
「おい、ネエちゃん、人聞きの悪いこと言ってんじゃねーぞ! 俺達は自分の身を守るために、『生徒会派』のお前達に囮になってもらっただけじゃねぇか、ええ!?」
「それでもわざと音を出して、身を潜めて行動していた、私達の存在を奴らに教えたのは貴方達よね! 血液を沁み込ませた風船玉を投げつけてまでぇ!」
大方、防犯カラーボールの要領で、血液が入った風船玉を生徒目掛けて投げて割らせたってところか。
割れて飛び散った血液が、生徒の身体に付着した時点で
くらだないこと考えやがって……。
「フン、クソ鼠共がうっせぇわ! 学園三大美少女とかなんとかは知らねぇけどよぉ、その弓矢とシャベルを置いてけば、このまま見逃してやってもいいぜ! 後はいらねーわ、どうせ全部偽モンだろ、それ?」
山戸が大声で言ってきた。
こいつが最もムカつく。直接殴られたこともあるからな。
けど連中は僕を見てもなんの反応も示さない。
一ヵ月前だし、もう忘れられているようだ。
「……よく話がわからんが敵であることはわかった。駆逐しよう」
「待って、リュウさん。こんな連中キルしても弾の無駄だよ。それに
ライフルを構えようとする竜史郎さんに、彩花がシャベルを翳して引き止める。
「別に素手でも50通りの殺し方を会得している、問題ない」
いや大問題だろ!?
つーか、竜史郎さんが一番やべーよ!
「きゃは、リュウさんウケる~! センパイの次にね。でもここは、あたしに任せてくんない?」
彩花はニヤリと不敵に微笑み、瞳孔を赤く光らせた。
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