第17話 ターゲットの居所
深夜、人目が少なくなったところで裏門を守護する兵士二人をイリスが素早く始末し、叶たちが町に潜入した。
路地裏などで時間を潰して夜明けを待って行動を開始する。何か、勇たちに関する情報がないかの調査だ。
それぞれ別れて聞き込みを始める。イリスとレンを見送り、叶は路地裏を重点的に探してみることにする。
少しはファンタジー小説をかじっている叶は、こういう暗いところに情報屋が店を構えているのではないかと考えていた。あると信じて情報屋を探す。
が、一向に見つからない。やはり作り話なのかと落胆して路地裏から出ていこうとした。
「――へっ。嬢ちゃん見ない顔だな」
いきなり声を掛けられ足を止める。
叶が不審な目で声の主を見ると、その人物はフードを深く被った男のようだった。
「なに?」
「いや、な。嬢ちゃんがここらをずっとうろうろしてるから気になっただけさ。誰かお探しかい?」
「ええ、そんなところ」
「へ~。教えてやろうか? 金さえ払えばなんでも教えてやる」
男の言葉は、まさしく叶が求めていたもの。この男はいわゆる情報屋ではないかと思う。
手を差し出す男に金貨を握らせる。満足そうな顔をした男に叶は冷たい声で聞いた。
「ここから一番近い勇者の仲間ってどこにいるの?」
「勇者の仲間? 嬢ちゃんそんな御方がこんな路地裏にいるわけないだろ。あの方々は今、町の中心地の貴族街にいらっしゃるよ」
「……今、この町にいるのね?」
「ああ。でも、嬢ちゃんじゃ会えないと思うぜ。護衛に教会騎士がついているからな」
「大丈夫。私のジョブは暗殺者だから、いくらでもやり方はある」
最後に男から叶と話した記憶を消し去り、その場を立ち去る。
路地裏を出て表通りへ。そこでほんの少しだけ闇の力を解放する。
常人では気づくことはできない微量の力。だが、彼女たちは気づくことができる。
人通りがなく、薄暗い場所に入る。ちょうど二人も現れ、叶の前に並んだ。
「見つけましたか?」
「ええ。町の中心地。貴族街に」
「うーわめんどくさいなぁ。こっそり見てきましたけど、あそこかなり警備が厳重でしたよ~」
心底嫌そうなイリスが呟く。
もちろん、護衛など叶たちにかかれば瞬殺することは容易だ。だが、その騒ぎで本当に殺したいクラスメートに逃げられることが一番困る。
だが、当然対策は考えている。要は、バレないようにやるか騒ぎが広まっても逃げられる前に仕留めてしまうかすればよいのだ。
「リリス。レン。何か良い技を持ってる?」
「そうですねぇ……コウモリの姿で吸血すれば静かに殺すことができますね」
「常闇の剣戟であれば、型はほぼ無数に存在します。当然、大多数を一気に殲滅する技も」
「分かった。なら、こうしましょうか」
叶が浮かべる笑みが怖いものへと変わる。
「開幕の一撃にレンが常闇の剣戟を叩き込む。討ち漏らしをイリスが片付けて二人で付近を警戒。増援を始末して。その間に私が奴らを殺す」
「「了解」でーす」
「作戦決行は今夜。……ふふっ、覚えていなさいな」
殺意が膨れ上がる。待ちに待った瞬間を目前に控え、これ以上ない嬉しさが込み上げてきていた。
叶たちは今夜の集合場所を話し合って一度解散する。その後、叶は町の道具屋を巡ってみることにした。
魔力や闇だけでなく、様々な道具も使ってより面白く、苦痛を与える。より大きな絶叫であればアルマも満足してくれるだろうと期待も込めて。
多くのナイフや魔道具を購入した。決行までの時間はこれらのものに細かな細工を施して時間を潰していく。
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