第9話:絶対的な安心感
レイアSIde
ジムの投げたがれきが、奴の何かを壊したのが見えた。
その瞬間、空を覆っていた黒い結界が消えていった。
(ジムがやった!)
私はボロボロだが、サクラのおかげで多少は起き上がれるようになっていた。
「てめぇええ!ふざけてんじゃねぇぞ!」
奴がジムに向けて一気に飛んでいく。
4本の腕から猛ラッシュが繰り出される。
槍を使わずなぶり殺すような形でぼこぼこにしていく。
ガン!ガン!ドコ!バキ!
「こいつがいくらしたと思ってんだ!てめえ簡単に死ぬんじゃ済まされねぇぞ!」
ジムは身動きも、声を上げることもできずに一方的にやられている。
周りに血が飛び散っていく。
「やめて!ジムが死んじゃう!」
「サクラ!ダメ!」
サクラが思わず飛び出す。
奴がクルッとこっちを向いた。
「てめぇもうっとうしい魔法使ってんじゃねぇぞ!」
奴は今度はサクラに向かってきた。
(だめだ、間に合わない!)
今のこの状態じゃ走れなかった。
サクラは棒術で応戦しようと構えた。
持ち前の超パワーから放たれる強烈な一撃だったが、相手が悪かった。
軽々と躱され、逆に殴り飛ばされていた。
「うぐぅ・・・」
「おせぇんだよ!」
サクラが地面にうずくまる。
奴は少し冷静になっていた。
「結界も消えた以上長居はしねぇ。さっさと殺す。」
黒い槍を出現させてサクラに歩み寄る。
(まずい・・・)
私が声を上げようとしたとき、弱弱しく、そして小さい石が奴に飛んでいく。
あまりの弱弱しさにもちろん当たるはずもなく、軽く弾き飛ばされた。
ジムが顔も腕上げられないようなボロボロの状態で、かすかに聞こえる声でしゃべった。
「・・・おまえ・・・の・・・相手は・・・僕・・・だろ・・・」
「・・・てめえ相当死にたいらしいな!だったら最初に死んどけ!ー雷を呼び起こせー”黒槍・飛天”」
奴の持っていた槍が大きく禍々しい形に変化した。
「死ねぇ!」
奴が腕を振るとビュン!と槍がジムめがけて飛んで行った。
(ああ、今度こそ無理だ・・・)
大切な友人の死を覚悟したその時、
「流舞剣・双牙」
ジムと槍の間に急に人影が表れた。
その人物は2本の剣をするりと沿わせると、飛んで行った槍は瞬く間に方向を変えて空へ消えていった。
私はその人物が誰なのかすぐに分かった。
そして安堵から涙が溢れだした。
「ダリアさん・・・」
「あなたたちよく頑張ったわ!後は・・・任せなさい。」
奴をきっと睨んだダリアさんから闘気があふれ出る。
それは私が今までに見たことないほど強大なものだった。
(す、すごい・・・)
「・・・ダリア=ルータムだとぉ!?」
「この子たちが随分と世話になったようね。悪いけど・・・ただでは帰さないわよ。」
「伝説のエルフ様が相手かよ・・・ふん。だったら本気で行かねぇとな!」
奴はそういって懐から赤い小瓶を取り出した。
(なに・・・あれ・・・)
小瓶は禍々しい魔力を発している。
「くっくっく。こいつはデーモンポーションつってな。魔族の力を得られるんだよ!これさえあれb!?」
「話が長い。」
この場にいる誰も気づかなかっただろう。
それぐらい早かった。
奴がしゃべっている間にダリアさんは奴のすぐ目の前まで移動していた。
そして、瓶を持つ腕を切り落としていた。
ダリアさんは赤い小瓶をキャッチした。
「・・・いつの間に!?」
「これほしかったのよね。ありがとう。」
「貴様ぁあ!ー闇夜我に従えー”闇分身”」
奴の背中から2本の黒い腕が生えてくる。
槍を4本の腕に持ち、一気に切りかかる。
「片手で防いでみろやぁ!」
「いいえ。・・・もう終わってるわ。」
ダリアさんがそういった瞬間、ブシャァ!という音とともに血が飛び散った。
奴の2本の腕が宙に舞う。
そして、黒い腕が音を立てて消えていく。
「・・・へ?」
「この剣ね、封魔剣っていうのよ。なかなかお洒落でしょ?」
「・・・なんだ・・・それ?」
「残念だけど、私に切られた時点でもうご自慢の闇魔法は使えないわよ。」
「・・・は?」
「ー悠久に封じ込めよー”
ダリアさんが魔法を唱えると、奴の体が一気に水に覆われた。
サクラの使った
中で何かを話しているようだが、外までは何も聞こえてこなくなった。
「レイア、よく頑張ったわね。お友達も傷を手当てしなさい。これを飲んで。」
ダリアさんから小さい小さい小瓶を手渡された。
先ほどの赤いものとは違い、どことなく神々しい魔力を感じる。
飲むとたちまち体の傷が癒えていくのがわかった。
「あの・・・ジムにも!」
「もちろん。すぐに飲ませましょう。」
ダリアさんとジムのものへ行って、あまりの状態に言葉を失った。
「ジム・・・」
「こんなになっても抵抗するなんて・・・本当によく頑張ったわね。」
ダリアさんが小瓶の中身を飲ませると、ボロボロだったジムの体がみるみる体が治っていく。
ただ、傷はいえたもののまだ気を失っているようだった。
「すぐに目が覚めるわよ。大丈夫。」
「ダリアさん、これはいったい何なの?」
「私の故郷の秘薬よ。ちょうど故郷に戻ったばかりだったから・・・分けてもらっておいてよかったわ。」
ダリアさんの笑顔に肩の力が一気に抜けた。
私たちは生き残った、そのことを実感できうれしかった。
「そうだ!王様が!」
「そっちも大丈夫よ。一応レンが向かってるわ。それに・・・ジョシュアがいるなら大丈夫。あのおじいちゃん、強いのよ?」
「・・・よかった。」
私とサクラは安堵した。
本当にとんでもないパーティーだったけど、私たちは生き残り、そして襲撃を退けたのだった。
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