第三章/第九話:アンナの心
「それじゃ」
「はい。お疲れ様でした」
カズトの部屋の前までお見送りで付いてきた
……正直、少々名残惜しい気持ちもございましたが、流石に今日一日お付き合いさせてしまいましたし、きっとお疲れでしょうからね。
何処か切ない気持ちを振り払うように首を振ると、
……今日、カズトは
正直、シャリア様がこの案を提案頂いた時には、本当に恥ずかしかったですし、不安だったのです。
カズトの前で肌を晒すなど、破廉恥だと思われないかも心配でしたし、それで嫌われてはしまわないかと不安でもありましたから。
結果として貴方様の優しさで杞憂に終わりましたが、時折困った笑みを浮かべられておりましたお姿を見る度に、
ですが……やはりカズトは優しく、素敵でした。
そして、
本当に貴方様はお優しくて、本当に、お強い方ですが……それだけ、辛く、苦しい道も歩まれたのですよね……。
確かに、
あの時貴方様が魔王に斬られた時にも、胸が張り裂ける想いがいたしましたが、再会できた喜びの中で、その記憶は薄れておりました。
ですが、あのお背中の傷……あれは間違いなく、あの時に受けたもの。
そんな肌を、きっと他の御仁に見られたくなどなかったのではないでしょうか。
ですが……それでも、
その優しさと現実に憂いを見せた
……本当に、お優しすぎます。
だからあの時……
魔導昇降機を降り、自身の部屋に戻った
何故、あの日もう一歩勇気を出せなかったのでしょうか。
マルージュでの一夜。
あの時、
ですのに……何故、あそこでちゃんとお慕いしていると言えなかったのでしょう。
思い返す内に、あの日の恥ずかしさが込み上げてしまい、
一人きりの部屋。誰に見られるわけでもないのに……。
……カズト。
先程別れたばかりだというのに、共にいた時間がもう恋しくなる位。
ただ貴方様はきっと、
ですから、この想いは
少し冷めた心に顔を上げた
でも、それは仕方ありません。
貴方様が仲間だと想い続けたロミナ様達は皆様魅力的です。
一介のメイドでしかない
だからこそ、あの時想いを伝えられていればと、後悔もしてしまいます。
……ただ。
あの時お供したいと逃げの言葉を口にした
皮肉なものですね……。
きっとカズトは、何時か
ですが。
同時にそんな時でも、貴方様が幸せとなった方の下で、メイドとしてお仕えできないかとまで考えてしまいます。
それはお慕いしている事もございますが。
ですが、そんな
……いえ。
まだそれ以前に、
きっとロミナ様達も、そんなカズトの魅力を知っているからこそ、共に旅立つのではと感じております。
ですが、その場にご一緒できるのです。まだ、ささやかな夢位は見させてもらっても良いですよね。
自身の心を奮い立たせるように、ふとカズトの事を思い返した時。
ふっと頭を過ぎった言葉がございました。
──「こういう事が起きるって事は、アンナが美人な証拠だよ。そんな女性と一緒にいられるなんて、男名利に尽きるってもんさ」
……
……男冥利に、尽きる……。
その言葉を改めて思い出した
思い出される、共にストローで飲み物を飲んだ時、側に迫った貴方様の顔……。
それは今思い返してもやはり素敵であり、とても恥ずかしい経験。
……ああ。
こんなに恥ずかしいのに、顔が緩んでしまう自分が恨めしいです。
カズト。
申し訳ございません。
こんな情けない、想いすら誤魔化せない
何時もご迷惑ばかり掛けてしまう
ですが、その代わり
ですから、今はこの想いを心に持ち続けることをお許しください。
そして、できればこれからもずっと、貴方様の幸せを、見守らせてくださいませ。
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