第2話
帰宅する。
簡単な食事をして、お風呂をわかす。
その間に、ヤスリの説明書を読む。
なになに・・・
【このヤスリには、特別な使い方はいりません。
嫌な過去を思い浮かべて、お腹をこするだけす。
すると、あら不思議。すっきりします。
ちなみに、お腹自体や臓器にも影響は全くありません】
ものは試し、やってみるか・・・
僕は、あの忌まわしい失恋を思い浮べてお腹をこする。
すると、彼女との忌まわしい過去が、すがすがしいものになっていく。
あの失恋すら、楽しい思い出となった。
「なかなか便利だな」
そう思い、僕はこのヤスリを持ち歩くことにした。
最初のうちは、「明るくなったね」「前向きになったね」
みんなは、喜んでくれた。
しかし、数日もすると、離れて行った。
「前のあなたの方が、優しくて素敵だった」
「とても、かっこよかった」
そんな声を聞くようになる。
ここで、今更ながら気が付いた。
僕が人にやさしくできたのは、悲しい過去があったからではないか?
心に傷があったらから、悲しませたくなかったのではないか・・・
今からでも遅くはない。
今日はお試し期間の最終日。
あの老婆に返そう。
「やはり、お気に召しませんでしたか」
「はい。申し訳ありません」
「いいんですよ。今のあなたは、この前よりも生き生きとしていらっしゃる」
「もう少しで、大事なものを無くすところでした」
おばあさんにお辞儀をする。
顔をあげると、おばあさんはいなかった。
「魔女だったのかな・・・なんてね・・・」
錆 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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