勝利だギューちゃん

第1話


会社から自宅アパートへと帰宅した。

この辺りは、商店街が並んでいるが、このご時世なので、閉まっている。


まあ、この時間から普通しまるが・・・


「おにいさん」

「私ですか?」

「他に誰か?」


呼び止めたのは、ひとりの老婆だ。


「僕に何か?」

「いいものあるよ。みておいき」

「忙しいので・・・」


胡散臭いと思ったが、暇だったので構ってみることにした。


あまりいいものはない。

ただ、その中にひとつの物を見つけた。


「これは・・・ヤスリ」

「そうです。でも、ただのやすりではありません」

「そりゃあ、有料だよね」

「そういう意味のただではありません」


確かに普通のヤスリとは違う。


「このヤスリは、おにいさんの心の錆をおとすヤスリです」

「心の錆?」

老婆は頷く。


「おにいさんにも、心に傷があるでしょう?最近振られたみたいだし」

なぜ、知ってる。


確かに、あの別れ方は傷ついた。

出来るなら消したい。


「そのヤスリは、その心の錆を削ってくれます」

「記憶はなくなるって事?」

「記憶はあります。ただ、その傷から解放されます」


胡散臭い。


「でも、高いんでしょ?」

「一週間、お試しとして、ただで結構です」

「ただ?」

「もし、一週間使ってみて、お気に召したら、ご購入ください」


そういうと、老婆は去って行った。

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