第4章3話『三つの殺意』
「あ、ユーシャ。どこに行っていたの?」
「あぁ、ちょっと……男同士の話……かな」
「男同士の話……つまり決闘ね?」
「だいぶ違うかな!?」
セバスさんとの話し合い? が終わった後、僕とセバスさんはエルジット達の所に戻った。と言っても元々視認できる範囲に居たのだが。
「まぁそんな事はどうでもいいわ。ユーシャ、早くこの魔境から帰ろう? ここはユーシャにとってすっごく危険な場所だよ!」
「魔境? 魔境か……うん。まぁ、確かに言い得て妙だね」
一瞬何が魔境なのかと思ったが、よくよく考えてみればこの村の住人全員がどこか頭がおかしく、能力値もインチキなのだ。このラストの村は魔境と言っても差し支えない村なのかもしれない。
「そう、魔境だよ! それでユーシャ。一つ確認しておきたいんだけど……子供はもう出来たの?」
「OK分かった。僕とエルジットの間には大きな認識の壁があるという事がよく分かった」
どうやらウェンディスから無い事無い事吹き込まれたらしい。
「そして私との子はいつ作ってくれるの!?」
「お願いだから落ち着いてくれないかな!?」
ウェンディスの影響だろうか。元の世界に居た時よりもエルジットが積極的だ。正直、背中から殺意をバリバリ感じるのでやめて欲しい。
「とにかくユーシャ! そこの泥水で体全体を洗って元の世界に帰りましょう!」
いつの間に用意していたのか。エルジットの指さした先には大人が一人浸かれるくらいの大きさの泥水があった。
「なんで!? 元の世界に帰る云々は置いておくとしてもなんで僕が泥水で体を洗わないといけないの!?」
「ユーシャ、知らないの? これは汚された部位を泥水で洗う事によって汚した人たちに自分の意思を見せつける儀式なんだよ」
「そんな儀式見たことも聞いたことも無いよ!?」
一体どこの国の儀式なんだ。元の世界に戻ったら抗議文を送ることにしよう。
「いーいーかーらー! 大人しくしてよユーシャーー!!」
「ゼッッッッッッタイ嫌じゃーーーーー!」
僕を無理やり泥水のある場所まで引っ張っていこうとするエルジット。
なのだが、
「……ねぇエルジット」
「むーーーーーーー! なに!? 大人しく泥水で体を洗う覚悟ができたの!?」
「いや、そうじゃないんだけど……本気で引っ張ってるの?」
「もちろんよ!」
「…………」
ぜんぜん強く引かれる感じがしない。まるで赤子に引っ張られているようだ。
そのまま僕はエルジットのステータスを見て、
★ ★ ★
エルジット・デスデヴィア 16歳 女 レベル:28
クラス:勇者
筋力:37
すばやさ:56
体力;38
かしこさ:28
運の良さ:34
魔力:39
防御:35
魔防:18
技能:従者召喚・言語理解
★ ★ ★
「……(ギュッ)」
「あれ? ユーシャ? 私の手を握ってくれるのは嬉しいんだけど少し痛いから力を抜いてくれると嬉しいな~なんて」
「……」
「あれ? 本当にどうしたのユーシャ!? そんな親の仇でも見るような険しい顔つきで私を見て。いた、いたたたっ、ちょっ、ユーシャー!」
「あぁ、ごめんごめん。
エルジットの手を放しながら僕は謝る。
なんで……なんで僕が”前科持ちの勇者”でエルジットが”勇者”なんだっ!? 地図でエルジットのステータスを見た時から知っていたのだが、こうして直に見るとついつい妬みが先行してしまう。
「そうなんだ……。これがユーシャの
そう言ってエルジットは満開の笑顔で笑いながらその指先を僕の口元へとやさしく乗せる。外国人だからなのか、エルジットはこういった触れ合いに
「に~い~さ~ま~?」
「ふっ、ふっ、ふっ、主様、少し良いかの?」
「いえいえ、まずは私と男同士の話し合いなどいかがでしょう?」
「僕は無罪だぁ!!」
背後から湧き上がる三つの殺意によって僕は目を覚ましました!! してない! ドキッとなんてしてないぞぉ!!
しかしそんな言い訳など通用せず、この後僕は理不尽すぎる仕打ちの数々を受けた。
どんな仕打ちを受けたかはご想像に任せる……ガクッ……。
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