答7 新たな世界へ
……などと言うと思ったか?
誰だ、貴様は?
余を、大魔王せきかわを常しえの眠りから目覚めさせるとは、命が惜しくないのか?
この大魔王せきかわも随分と甘く見られたものだ。
余は漆黒の闇の中目覚めると、虚空に浮かぶ何かに殺気を放った。
「あら? どうしたの、関川くん? 私よ、忘れたのかしら?」
彼女……の姿をした何かは、余の殺気を物ともせず涼しげに肩をすくめた。
どこまでも夢で何度も見た彼女そのものに見える。
しかし、この何かは彼女とは全くの別人だということは、余の目には一目瞭然だ。
「……へえ? やるじゃない。あたしがあんたの彼女と別ジンだって気がつくなんて、あんたをちょっとナメてたわ」
何かは、大魔王である余に偽物だと見破られたのに平然と笑っている。
何とも男を惑わす危険な笑みをしている。
この何かが本当に夢の彼女であれば、余も虜にされていたかもしれない。
しかし、あり得ん話だ。
なぜならば夢の彼女と比べれば、胸が異次元の存在だからだ。まさに事象の地平線とでも言ってもよいほど、凹凸が視認できないぐらい胸がないのだ。断崖絶壁など生ぬるい。光ですら到達できないほど宇宙の果てまでも真っ平らだからだ。つまり、一般相対性理論が予言する産物……ぶべら!?
「うるさい! 小難しい単語を並べればセクハラが許されると思ってんの?」
ば、バカな?
この闇の中で余にダメージを与えた…だと…?
こ、こいつは一体?
胸が無いくせに、なぜこんな力が?
巨乳こそ、この世の真理にして宇宙の真理であるはず。だが、当然ながらデカければ良いものではない。形、ハリ、ツヤ、全てが黄金比率であることこそ、究極の巨乳、美なの……あべし!?
「しつこい! あんたがこの完璧な闇で悟ったことはそれか? あん? 乳だけか? 乳だけにしか興味ないんか? どこまで煩悩全開やねん?」
何かは殺気を放ってきた。
ぐっ!?
この力は一体何だ?
け、気圧される
大魔王ですら驚異どころか有象無象の虫けらにすら感じていないというのか?
何なのだ、こいつは?
……まさか!?
この闇を創り出した存在、神、か?
「ああ、やっと気付いた? そうよ、あたしがこの空間の支配者、運命の女神様よ」
何!? ……本当だと信じてやろう。だが、女神様とやらが何の用だ?
「あら? 最初に言ったじゃない。良い知らせと悪い知らせがあるって」
運命の女神はとぼけるように肩をすくめた。
何ともわざとらしい。
だが、今更、今の状況よりも悪いことなどあるのか?
ならば少しでも良いことでも聞きたいではないか。
「そう。じゃあ、良い知らせから教えてあげるわ。あんたは夢の彼女に出会えるわよ」
な、何…だと…?
ほ、本当か!?
そ、それなら……
「あ、悪い知らせ何だけど、前世の記憶全部なくなるから」
……は?
「あと、いつどこで出会えるかも決めてないから」
……へ?
「だって、教えたら面白くないじゃない。あんたら人間はあたしたち神のおもちゃなんだから、好きに踊ってあたしたちを楽しませなさいよ。じゃあねぇー」
……はぁあああ!!?
余は、ボクは漆黒の闇から眩い光の世界に放り込まれた。
ボクは新たな世界へと旅立った。
そして、全てを忘れた。
☆☆☆
オギャー!
「まぁ、元気な男の子が生まれましたよ?」
白衣を着た看護師が生まれたばかりの元気な男の子を抱きかかえ、ベッドに横たわる母親に手渡した。
母親は出産により疲れ果てていたが、我が子を全力の愛情で受け取った。
そして、慈しむように微笑んだ。
「生まれてきてくれてありがとう。あなたの名前はフタヒロよ」
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