第46話 ニイの恋煩いの続き
レイは帰って来たニイを見て何かが違うと感じた。
「俺に惚れたか?」
凝視するレイにニイがモデルのように髪をかき上げポージングを取った。
「タイプじゃない」
レイはプイっとキッチンへ行ってしまった。
レイは今から1時間かけて大量の作り置きおかずを作っていく。レイの後を追ってニイはキッチンに入った。
「ヨンとイチは?」
「ヨンは上で洗濯物入れててイチは買い物に行っている。今晩はカキフライが食べたいんだって」
ニイがレイの後ろをうろうろしているとヨンが降りてきた。大きな男二人がレイの後ろに張り付ていると落ち着かないし邪魔だ。
「二人ともここにいなくても大丈夫だから向うで座ってて」
「レイのそばにいたいんだよ」
ニイのふざけた発言にヨンの眉毛があがった。ヨンがニイの背中を押してキッチンから出て行った。
イチは牡蠣と海老を買ってきた。フライができるタイミングを待って男三人でご飯と味噌汁を用意して待っている。
レイが千切りキャベツの横にフライを置いていくのを見つめる姿はまるで小学生だ。レイは三人の子持ちになった気分だった。
「フライの大きさで喧嘩しないでよ」
レイがからかっても、男三人は瞬きせずにフライを見つめていた。
夕食後片付けが終わると、イチは勉強すると自分の部屋に行ってしまった。試験は今週で終わりだ。
ニイはミータを撫でながらソファーでくつろいでいる。レイはリビングの床でストレッチをしながらテレビを見ていた。ヨンはニイが淹れてくれたコーヒーを持ってリビングに移った。
「サンキュー。気配りが完璧だな」ヨンがニイの隣に座った。
「俺と結婚するか?」
「冗談でも嫌だ」
ヨンの想定内の反応にニイはからかいがいがあると嬉しそうだった。
ニイは急に真顔になった。
「レイ、葵と会ったんだって。ありがとうな」
「葵さんが今どこで働いているのか知ってる?」
「大手町にいることしか知らない」
「私と同じ会社」
「マジで」ニイが思わず呟いた。
「葵さんと……どうなった?」レイは恐る恐る聞く。
「友達からやり直すことになった」
「友達からって結構辛いぞ」ヨンがしみじみと言う。
「少し前進したから希望は持てるだろう?辛い経験者の話は聞かなくても見て知ってるから大丈夫だ。俺はヨンよりは気が長い」
ニイが笑った。
その前向きな感じがニイらしい。らしさが戻って来てレイは安心した。
「レイみたいに強くなりたいから友達からやり直したいって。正直、こんなに強くならなくていいんだけど。俺の手に負えなくなるだろう」
ニイは真面目な顔で言う。
「私をディスってる?」
レイが目を細めた。ヨンがニイに「そこで止めとけ」と目くばせするがニイは全く気付かず続けた。
「それにレイは気は強いけど心が強いわけじゃない、大雑把な性格なだけだ」
「強いものがあと一つある。ボクシングもニイより強いと思うけど。私のグローブ取ってくれる?」
レイの言葉にニイは「力も強いも追加する」と小声で言った。
「彼女はこの家に住んでいることを知ってるのか?」
ヨンはそのことを心配した。ヨンと付き合った女性は例外なく、この家で四人で住んでいることを嫌がった。特に四人の中に女性がいることに強く反発した。
「付き合ってた時に話してた。で、今日レイ家で四人で住んでいることを言った」
「そっか」
ヨンは葵に理解があるのか、それとも俺が付き合った女性は俺がこの家にいたいとい気持ちを察知して嫌がったのだろうか、と思いを巡らす。
「焦らず、今度は振られないようにしないとな」
ニイは自分自身に言い聞かせるように言った。
それに俺には解決しないといけないこともある。部外者からの雑音がない状態で付き合えるようにしなければならない。
「大丈夫だと思うけど、私のことで葵さんを不安にさせてちゃったらこの家に連れてきて」
レイはニイやヨンの今まで付き合っていた彼女から良く思われていなかったことを知っていた。その理由は十分理解できるから知らないふりをしていた。
「締める気か?」
ニイがふざけた。
「締め方を伝授するんじゃないか」
「やめてくれ!」
ヨンの言葉にニイが慌てた。
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