056 標10話 母に捧げる子供ハロウィンですわ 4


 その日の夕食が終わったサンストラック邸です。

 三つあるソファーセットの島の一つに三人の奥方様がいました。

 グレースジェニアとシルバステラの向かい、ルージュリアナの横にはルーンジュエリアが座っています。

 お嬢様は自分の母たちにジェントライト領で行なう予定の子供ハロウィンに付いて説明していました。

 教会の横の運動場中央にやぐらを組み、そこから少し離した四方で焚き火をします。

 そして明るく安全なやぐらの周りで、あの家族が輪になって歩きながら踊ります。

 夜更けから夜が明けるまで踊って終わりです。


 お嬢様はハロウィンとはワルプルギスの夜の様なものと考えています。

 前世の記憶で例えるなら一年に二度、昼と夜が入れ替わる、夜が逢魔が時に近似して生者と死者の住む世界の境目があやふやになるとか、そんな感じを妄想しています。

 この世界では季節がちょっとずれていますが、内容はそう変わらないと考えています。

 それはともかく大人にとってのハロウィンは恐怖の一夜です。

 いかに魔法術の使い手とは言え、娘一人ではもしもの時が心配です。


「ではジュエリア。護衛にはジェントライトの従士達が出てくれるのですね?」

「ふみ。共同墓地の横ですからゾンビたちは町に行かないと推測しています。万一の時にはジュエリアが転移します」


 ゾンビ対策がありますので他の場所に墓を建てる事は基本禁止されています。

 問題は山や川で事故死した遺体だけですが、これはお嬢様の索敵魔法で常に警戒をしておきます。


「やはり駄目ですね。ジュエリア一人では会場と町の両方を守る事ができません。もう一人は必要です」

「もう一人なら手配してありますわ」

「へ?」

「護衛魔法術師はジュエリアを含めて二人ですわ。腕前はジュエリアと互角以上ですわ」


 グレースジェニアはこの言葉に驚きます。

 思い付くのは預言者ヘルパー様です。

 まさかとは思いますが、このバケモノならやりかねませんね。

 もはやあきらめの極致です。


「貴女にその様な知り合いが居ましたか。相手の了承は貰っていますか?」

「大魔導士様は承諾済みですわ」

「「「大魔導士!」」」


 ここでグレースジェニアは折れました。

 反対するのはただの感情論です。

 警護程度の事はどうにでもやり終えますね。

 彼女は自分の娘の力を信用しています。


「待て、ジュエリア。いつの間にそんな伝手を持った?」

「春ですわ」

「春?ああ。もしかしてあれか?」

「ですわ」

「分かった。あたしは認める。残りの二人を説得しろ」


 シルバステラも折れました。

 納得できたなら即断即決です。


「ちょっとステラ。わたくしにとってジュエリアはまだ子供です」

「ごめんなさい、ルージュ。私も許可を出します」

「そんなグレース。ぶー」


 ルージュリアナは下の娘を真似してぶーたれます。

 いえ、娘の方が母の真似をしているのかも知れません。

 ここは母親の顔を立てておきます。


「判りました。それでは母の言い付けを守るなら許します」

「ふみ」

「ハロウィンの日は夜中中起きているのですね?ではその昼と翌日は十分にお昼寝をしなさい。寝不足は許しません。

 それを守れるのでしたら母はジュエリアを許しましょう」

「かしこまりました、お母様。ジュエリアはお母様の言い付けを守る事を誓いますわ」


 ルーンジュエリアは母の目を見て答えます。

 ルージュリアナは娘に見られている事を嬉しく思います。


「話は終わったね。じゃあ、あたしは失礼するよ」

「ええ」「ありがとうステラ」


 三人を席に残して、シルバステラは部屋を出ました。

 ふと廊下で立ち止まって、従うメイドの一人に向き直ります。


「キサラ。大魔導士様とやらに挨拶しておきたいんだけど、あたしが行っても大丈夫かな?」

「既に皆様が顔なじみですので支障は無いと考えます。用件が無い行動をお嫌いな方なので手土産を持参すべきです」

「分かった、用意してくれ。あんたが戻り次第、足を向ける」

「かしこまりました」


 母たちの許可を得る事が出来ました。

 夜通し行なう夜更かしの準備開始です。

 お嬢様は教会横の運動場へと転移します。


「ふみ!」

「うわー。人がいっぱいですよ、ジュエリア様」


 ラララララララーラーララーラー、ラララララララー、

 何故か五十人ほどが踊っていました。

 しかも子供だけではありません。十人以上の大人が混ざっています。


 ジェントライトの従者と共に十数人の領民が運動場中央に監視用のやぐらを建てています。

 これは分かります。

 周りには大人や子供、三十人ほどの見物人がいます。

 これも分かります。

 何故踊りの練習をしている人たちがこれほど居るのでしょうか?

 踊るのはあの家族だけの筈です。

 亡くなった母、妻、娘に元気な姿を見せてあげたい。

 あの家族だけが踊る予定でした。

 そんな唖然としたお嬢様の元へエリスセイラが駆けつけました。

 ちょうどこの会場へ向かっていたところ、お嬢様のワープアウトが目に入ったようです。


「セイラ。これはなんとした事ですの?」

「これはこれはルーンジュエリア様。この者たちはあの家族と同じく死に別れた者に一目会いたいと願う者たちでございます」

「時期尚早ですわ。これが上手く行くとは限りません。今夜の様子を見定め、結果が良ければ来年に門を開くべきですわ」

「ルーンジュエリア様。これは父が家臣たちとも相談した結果でございます。

 いっそのこと領民全てをこの広場に集めた方が護り易しと判断したものでございます」

「それで死霊と化した知人を見た者たちの心をどう癒しますの?」

「皆十分に承知しております。結果がままならぬ時は二度とこのような催しを行なわないだけでございます」


 お嬢様は目を閉じて考えます。

 実は今回の催しはお嬢様のテストでした。

 母を亡くした子供たちを見た時にルーンジュエリアは考えました。

 いずれ自分の父や母たちも亡くなります。

 その時に死霊と化した両親と会って話ができるのか?

 ゾンビとなった両親と会うとか、いかに非常識なお嬢様でもそんな馬鹿な事を考えた事はありません。

 ですがオディールと会って心が変わりました。


 ゾンビとなったオディールは知性があり、普通に会話ができました。

 では、普通の人が化けて出たゾンビはどうなるのでしょうか?

 そのテストが今回のハロウィンの目的です。

 だからお嬢様はあの子供たちが亡き母と会い、言葉を交わす事を心から望んでいます。

 今日のあの子たちは明日の自分自身なのです。



 そしてハロウィン当日です。

 焚き火の数も増やして運動場の周りの草を刈り、持ち寄ったござを敷いて観客席を作りました。

 すでに日は落ちていてもうすぐ暗くなります。

 ローソクもらいを終えた子供たちと領民が集まり始めています。

 特別ゲストとしてルージュリアナが来ています。

 母は娘の活躍を楽しみにしています。


「もうそろそろ頃合いですわ」

「はて?何をなさるのでございますか?」

「ア」


 お嬢様は肩の前に右手のひらを上げて短縮呪文を唱えます。

 空間転移魔法術でできた小さな魔方陣が空中に浮かびます。


「ヒョイ」


 その中へ両腕を差し入れます。

 そして抜いた両手の先には黒いモフモフを乗せていました。


「ラッシー、行きますわ」


 くりくり目玉のトビリスはお嬢様の顔を見つめます。

 その首が小さく頷き返します。


そうー!」


 ルーンジュエリアは右手を握ると高々と掲げました。

 そして真横に伸ばしていた、ラッシーが載る左手をゆっくりと前へ移動します。

 お嬢様はラッシーを目の前へ差し出します。


「ジュエリアー‼︎」


 片手で持っているのがつらかったのか、一度顔の上まで引き寄せてから再び魔獣を目の前へ差し出します。

 ラッシーが重いので左手首を右手で掴んでサポートします。

 ラッシー+ルーンジュエリア。

 その強大な魔力が可視化します。


 お嬢様の身体からほとばしるハイパーオーラは数個の塊となって空中に浮かびました。

 そして転がりほどける巻物の様にその体を数本の光の帯が次々と囲います。

 一方、ラッシーの身体から溢れ出るハイパーオーラは無数の花びらの様に光り輝いてその小さな体を包みます。

 お嬢様は左手で掲げたラッシーを、頭上高くで両手に持ち直します。

 零れ落ちるきらめきの花びらがお嬢様とその周辺へ降り注ぎます。

 そのまま降りしきる花びらの中、魔獣を頭へ載せました。


 お嬢様は両腕を揃えて左下へ構えます。

 それから大きく上を通して一周回します。

 次に両手のひらを下向きに手を前へ突き出したかと思うと、大きなバッテンを書いて両手を左右に切り下します。

 そしてゆっくりと胸の前で二回手をはたきました。


 胸の前で両手を合わせて動きを止めます。

 直立不動のかっこいいポーズです。

 誰も盆踊りだとは思いません。

 と言うか、それを知る人はいません。


『はっはっはっはっは。我こそは大魔導ラッシーである』


 エリスセイラは嬉しそうに小さく拍手を送り続けます。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ハロウィンの夜が始まりました。

 大人も子供も嬉しそうです。

 この世界の人々にとってハロウィンの夜は恐ろしい一夜です。

 毎年みんな、息を殺して夜が明けるのを待っています。

 こんな風に大勢が集まって楽しく騒ぐ夜は初めてです。

 やぐらを囲む踊りの輪は既に二重になっています。

 このまま何事も無く終わるのか?みんながそう思っていた時でした。


「おかーちゃん!」


 子供の声が聞こえました。

 あの子です。あの次男坊です。

 共同墓地側はみんな怖がって、人がほとんどいません。

 会場の奥の林、一本の木の下に人影がありました。

 ゾンビです。

 顔は見えません。

 けれども家族には着ている服で判ったようです。


 人々に緊張が走りました。

 護衛の侍従たちにも緊張が走ります。

 その女性ゾンビはゆっくりと近寄って来ました。


「おかーちゃーん‼︎」

「あ!待てー‼︎」

「ジュエリア!行きなさい!」

「ふみ!ヒ」


 あの子は母に向かって走り出しました。

 小さな体で走り続けます。

 転んでも泣かないで、自分で立ち上がって走ります。

 女性ゾンビはしゃがみ込みました。

 両手で顔を覆っています。

 ルーンジュエリアは子供に追いつきました。

 侍従たちも数人が集まりました。

 女性ゾンビは、ごめんね、ごめんね、とつぶやいています。


「おかーちゃん。ぼくたちげんきだよ」

(ごめんね。強くなったね)


 顔を上げてルーンジュエリアのファイアーで照らされた女性ゾンビの顔は普通の人と変わりありませんでした。

 生者と死者の境が曖昧な夜。

 これがハロウィンの魔力なのかもしれません。

 こんな事は有り得ませんわ。

 お嬢様だけではなく集まった人々はみな内心でそう思います。

 ゾンビの姿が生者と同じで変わらない。

 集った全員がハロウィンの奇跡に驚愕しました。


 それからも五人、十人と墓地側の林の陰からゾンビたちが現われ始めました。

 そして会場のあちらこちらで感動の再会が起こります。

 念のために大魔導ラッシーは林の側で見張りをしています。

 けれどもなんとなく、その必要はないんじゃないかと思い始めています。

 いつの間にかルーンジュエリアの側にルージュリアナが来ていました。


「良かったわね」

「はい、お母様」


 母の声に笑顔で答えたお嬢様は、しばらくその顔に笑い掛けました。

 娘を見ている母の顔も笑顔が終わりません。

 見つめ合って、もうそろそろ監視に戻らないといけないですわ、と林に目を向けたお嬢様の顔が固まります。

 林の陰で一人で立っているゾンビを見つめたまま微動だにできません。

 後ろに立つルージュリアナも娘がおかしい事に気付きました。

 その視線を追って、一人の老婆にたどり着きます。

 墓地を後ろにした木々の陰、ゾンビたちが立ち並ぶ中で一人外れて彼女がいます。


 それは不思議なゾンビでした。

 まず、人種的にルージュリアナが知らない存在です。

 そんな風体の民族なんか、話に聞いた事もありません。

 加えて着ている服装がおかしく感じます。

 これも思い当たる知識を持ちません。

 自分が知る異国の文化にさえ当てはまるものが思いつきません。

 娘をみると、何かを言おうとしています。

 だからその言葉を待ちました。


『かあ、さん』


 ルージュリアナは自分の娘が発した言葉を聞き取りました。

 けれども意味が分かりません。

 それは彼女が聞いた事も無い言葉でした。

 魔法語の一種だろうかとさえ考えます。


 娘に尋ねようとして驚きます。

 娘はそのゾンビを見つめて固まったままです。

 けれども母だからこそ分かります。

 最初驚いていた娘は今、喜んでいます。

 その笑顔は自分を見つめるものと同じです。

 自分が幼い頃、仕事から帰ってくる父を待っていた時の事を思い出します。

 道の彼方に父の馬車を見つけた自分はこんな感じでした。


「ジュエリア?」


 声を掛けても聞こえていません。


「ジュエリア」

「あ。なんでしょう、お母様」


 体を揺さぶるとようやく娘は戻って来ました。

 ですが心ここにあらずは変わりません。


「あちらの方が困っておられますよ。お声を掛けて来なさい」

「え?あ、はい!」


 お嬢様は優雅にスカートを摘まんでひざを折ると、老婆の元へと駆け出します。

 母はそんな娘を優しく見送ります。


『おば様?何かお困りですか?』

『え?ああ良かった。お嬢ちゃんは日本語が判るのね』


 不安そうにあたりを見回していた老婆ゾンビはやっと安心したように気を落ちつけました。


『気が付いたらこんな所に居て、言葉も分からなくて困っていたのよ』

『それは大変でしたわ。でもジュエリアが来たからにはもう心配はありませんわ』

『ジュエリアちゃん。ここで盆踊りをやっているの?』

『ですわ。この世界はそちらと違って死んだ人が本当に帰って来ますわ。今日はその日です』


 相手が日本人ですから何も気にせず話します。


『おば様はご自分が亡くなった事を覚えておられますか?』

『え?あら!そうだ、そうね。私は死んだはずだわ。じゃあ私はお盆だから帰って来たのね。

 だけどなんでこんな外国に来たのかしら?』

『それはきっとジュエリアが、』

『え?』

『ふみ!』


 お嬢様は言葉を濁します。

 死んだ母には会いたいと思っていました。

 けれどもそれはいづれ亡くなるこの世界の母たちです。

 前世の母と会おうなんて思った事もありません。

 だからそれについて考えた事もありません。


 老婆はまだ不安そうです。

 けれど、あまり子供に迷惑を掛けられないと思ったのか、こう提案してきます。


『ねえジュエリアちゃん。わたしはもう大丈夫だから踊って来なさいな』

『大丈夫ですわ。ジュエリアはおば様が心細くない様に付いていますわ』

『ありがとうね。だけど私はこっちの踊りは知らないのよ。ごめんね』

『構わないですわ』


 と、そこでお嬢様は名案を思いつきます。


『ふみ!それではチャンコの唄ではいかがでしょうか?』

『チャンコの唄?』

『ジュエリアはこう見えても伯爵令嬢ですわ。チャンコの唄くらいは踊れますわ』


 お嬢様は得意げに胸を張ります。


『ジュエリアちゃん、』

『ふみ?』

『チャンコの唄のチャンコって、何?』

『馬の鈴の音ですわ、あ!』


 シャンシャンシャン、シャンシャンシャン。

 正しい歌詞はシャンコです。

 チャンコは替え歌と言うか、良くある間違いです。

 シャンコと言う単語が耳慣れない為に聞き間違いが多発します。


 この老婆の子供は変わった口癖を持っていました。

 そして何度正してもシャンコをチャンコと言い続けて間違いは直りませんでした。

 そんな楽しい思い出はつい昨日の様です。

 自分は死んでしまった。

 だったら自分の子供も死んでいておかしくない。

 母の勘と女の勘が一つの方向を指し示します。


『――よしかずかい?』

『母さん……』


 どうすべきか?お嬢様は悩みました。

 けれども答えは既に知っています。

 親は自分の子が元気ならそれだけでいいのよ。それ以外は何も要らないわ。

 優しい伯母が教えてくれた言葉です。


『おば様。ジュエリアはおば様に紹介したい方が居ますわ。こちらへ来て欲しいですわ』

『うん、いいわよ。誰かしら?』


 ルーンジュエリアはルージュリアナの横に立ちます。


『おば様。こちらはジュエリアの実母、ルージュリアナお母様ですわ。ジュエリアは今、とても幸せですわ!』

「おば様。こちらはジュエリアの実母、ルージュリアナお母様ですわ。ジュエリアは今、とても幸せですわ」

「ルージュリアナと申します。初めまして」

『ルージュリアナと申します。初めまして』


 ルージュリアナは裾を摘まむと大きく膝を折って頭を下げました。

 老婆もこれに応えて頭を下げます。


『これはご丁寧に、水原と申します』

「お母様。こちらはミズハラ様。生まれる前のジュエリアにとって一番大切な最愛の方ですわ!」

『お母様。こちらは水原様。生まれる前のジュエリアにとって一番大切な最愛の方ですわ!』


 詳しい話は後で訊けばいい。

 こちらの方は娘にとってとても大切な人の様だ。

 その前提で対応します。

 話しの主導は嬉しそうな娘に一任します。


『立派なお嬢様ですね。何よりもとても幸せそうです』

「あ、立派なお嬢様ですね。何よりもとても幸せそうです」

「ありがとうございます。ミズハラ様にそう言って頂けると肩の荷が下りた気になります」

『ありがとうございます。ミズハラ様にそう言って頂けると肩の荷が下りた気になります』


 自分の評価へ話が及ぶと通訳は困ってしまいます。

 けれども正しく相手に伝える事が大切です。


『それはようございました』

「それはようございました」


 二人の母の挨拶はもうしばらく続きます。

 けれどもルージュリアナは気付いています。

 ルーンジュエリアは老婆しか見ていません。

 ここまであからさまな娘を見るのは初めてです。


『それでは、おば様。チャンコの唄をお願いしますわ』

『チャンコって歌った方がいいかい?』

『ジュエリアにとって、あの歌はチャンコの唄ですわ』


 二人の母を前にしたお嬢様は一人、みんなから離れて別の歌を踊ります。

 やがて周りの見物客たちが一人二人とこの歌を踊り始めました。

 たった一曲を踊り続けていた踊り手たちが二曲目へと切り替えるのにはさして時間を必要としません。

 異国の言葉なので歌詞は良く分かりません。

 けれども一曲目だってラララで歌っていたのです。

 今更問題にはなりません。


 会場の人々が輪になって歌い踊ります。

 ですがルーンジュエリアはたった二人の観客の前で踊ります。

 何よりもお嬢様が亡き母の姿を瞳に焼き付けておきたいのです。

 その後ろにはユリーシャとエリスセイラが従います。


 チャンコチャンコチャンコ、チャチャンチャチャン、

 手拍子を揃えてルーンジュエリアは踊り続けます。

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