第9話 苦戦
街に来た日の夜
村人視点
「あの子、変じゃないか?」
「あの子ってあのメイって子か。」
「確かにな...」
「誰かに教えられたわけでもないのに魔法なんて使えるはずがない。」
「他の子供とも遊ばずに、一人で何かしているしな。」
「あの一家は何かヤバいことをしてるんじゃないか?」
「村から追い出すか?」
「いや、それよりも先に何をしているのかを聞き出すのが先だ。」
「待て、あの子供の力を見ただろう。あの一家には手を出さない方が良いんじゃないのか。」
「何を考えているか分からない人間は一定数いる。そいつら全員何か企んでいるというのか?」
「いや、そういうわけじゃないが...。」
「あの子供は我々の命の恩人だ。その恩人を悪く言うのはやめないか。皆、疑心暗鬼になっているのだ。」
はぁ...パパを呼ばずに集まっているから何事かと思えば、馬鹿なことを話しているな~。
真面なやつがいて良かったよ。あいつは確か...村長の息子のアデルだ。アデルが注意してくれたおかげであの馬鹿どもは命拾いしたな。
だが、もし家族に手を出そうとするなら、容赦はしない。
パパはどうしたって?部屋でぐっすり眠っているよ。呑気だね~。
街から帰ろうとしたとき、突然そいつはやって来た。
「あれは...炎龍だ!」そう聞こえた時には炎龍は街の真上にいた。
「炎龍?」
「炎龍は種族名なんだけど最上位に位置するドラゴンの一種だよ。でもなんでこんなところに...普通なら縄張りの外に出ないはずだ。」
こんな時でも優しく教えてくれるパパ大好き!
さて、ふざけている場合ではなさそうだ。
アレに生半可な攻撃は怒らせるだけになるだろう。
あ、警備隊がバリスタで攻撃した。攻城兵器でもかすり傷一つつかないのか...。
龍が怒って攻撃を始めたな。
やつが一度動くだけで数百人の怪我人、数十人の死者が出ている。
今の私の魔力量では混沌魔法を使っても痛手を負わせることはできないだろう。
超越強化はあれだけの大きさの相手には使えないし...。
どうすればいい?
とりあえず、これ以上被害を出さないために街の外に出て、あいつの注意を引こう。
混沌魔法«カオスインパクト»
よし、背中の一部にダメージを与えられた。
!?あいつ魔法使えるのか!
混沌魔法«カオスイーター»
魔法の相殺に成功したな。
ギリギリで防げてはいるが、さっきダメージが入ったのは、炎龍が私に注意を払っていなかったからだ。しかし、炎龍は私のことを認識し、警戒している。有効打を入れることはできないだろう。ホント、ここからどうしよう?絶体絶命ピンチとはこのことだな。
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龍・・・いくつもの種族があるが、元をたどると始祖龍フェーマスに行き着く。
この世界にいるのは龍だけで、竜と呼ばれるものはいない。
始祖龍フェーマス・・・世界を作った神が世界を調整するために生み出したもの。すべての龍の頂点に位置している。
炎龍・・・炎を司る最強のドラゴン。火龍の上位種族。
混沌魔法«カオスイーター»・・・相手を喰らい尽くす大魔法の一つ。今回は、魔力量の差で有効打を入れることができなかったため、炎龍の魔法を消滅させるためだけに使われた。
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