第146話 追走曲 13
※『大雑把な後宮の地図』(フィクションです)は、近況ノートにあります。(お話のトップページにある説明文のアドレスからも飛べます。)
・後宮➡https://kakuyomu.jp/users/momeaigase/news/16817139558960595439
*
もちろん
それから姫君が滑るように、一瞬で目の前を通り過ぎたあと彼は目を閉じて額に手をあて、沈痛な面持ちで絞り出すような声を出した。
「いま見たのは
「残念ながら、本物の葵の君にございました……」
無情にも“六”はそう返事を返す。横で
「歩いてもいないのに、横切ってゆくなど
別当が意見を述べていると、遠くでなにかが派手にぶつかる音がした。いままでの姫君の『やらかし』を身に染みて理解している
「お待ちください!!」
そう言って、あとを追いかけた“六”が遠ざかるのを見送った“弐”と“伍”は、しばらく顔を見合わせていた。
「あの、どうしましょうか? 帝のところに全員でゆかねば、この度の怨霊騒動が、もし帝を狙ったものなら、“六”がいないと方陣が完成いたしませんが……」
「そうだな……お前、“六”の式神を作れ……」
「そんな問題ではないでしょう!!」
自分は「間違ったことを言っていないよね?」“伍”はそう思いながら、いつもいい加減だと思っている“弐”は、やっぱりどうしようもなく頭の悪いことしか言わないので、彼を怒鳴りつけたが、なぜか
「あまり気負わなくていい。儀式はまだとはいえ、第一皇子が東宮(次の帝)に決定している。帝の守護は気楽にやれ、気楽に。そのための東宮だ」
「気楽って、勘弁してくださいよ……」
『みんなして、なんていい加減なんだ!!』
いつも周囲の理不尽に振り回される“伍”は、そう思い、頭痛をこらえながら、今度は“六”にそっくりの式神を作り出す。
当の昔に、帝に愛想をつかしていた
「もう少し離れていただいてよいでしょうか?」
この人、そういえば
“弐”がそんなことを思いながら、うっとおしそうに別当を
「これは霊験あらたかな高僧の数珠、きっと別当を守ってくださいます! 第一皇子のことが心配ではありませぬか? ほら、次の帝になにかあったら大変! 第一皇子が住む
「ああそうか!!」
そんな“弐”の気持ちを知らない、数珠を渡された別当は、慌てて東宮の住む
「あとで、ちゃんと返してくださいよ――! 高値で売り渡す約束、わっ!」
“弐”は“壱”に引きずられるように、やはり紙になってしまった武官に守られている清涼殿の
中にはなんの変りもなく、一日中、夜のお楽しみと決め込んでいただろう、あられもない姿の帝と、その腕の中で顔を真っ赤にして、そのまま気絶する
「ご無事でなによりでございました……」
「………」
帝になにかを言われる前に、外に出てぴしゃりと扉を閉めた“壱”は、葵の君のことが気になったが、あちらは“六”が向かっている。念のために“伍”を残して、彼は冷静に残りの陰陽師で手分けして、内裏に張られた結界を調べて回ることにした。
皆は無事な帝を見て、まあ、それなりに神聖な存在なんだな。それで桐壺更衣も守ったんだと、内心失礼なことを思っていたが、彼らが無事であったのは、単に運命の女神の憧れの主人公、光る君の父母であったからに他ならなかった。
もとから帝の安全は、一応の確認であった“壱”は、声を張り上げる。
「すべて調べつくせ!! 必ずどこかに穴ができているはずだ!!」
*
『本編と多分関係のない、とある日の平安小話』
葵「素朴な疑問なんだけど、こんな血筋の近い人同士で、結婚続けても大丈夫なのかしら?」
まあ、お話の世界だからかもしれないけど、めちゃめちゃ血のつながりが濃い人どうしで結婚してるけど、なんの問題も起きてないのが不思議だと思ってる。
弐「えっと、それはですね、例えば葵の君は、中務卿と結婚していますけど、将来生まれる子供は中務卿の子供だとは限らないでしょ? ほとんどのご家庭はそうでしょ?」
帝の後宮は別にして、父親が違っても正妻が生んだ子供は、夫の子になるシステムの母系社会。
葵「えっっ?!」驚愕してる。
弐「右大臣のところなんて、わたしが思うに……あいたっ!!」
通りかかった中務卿と六にグーで殴られているのでした。
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