異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第601話 【旅行先はブドウ園・その1】上位調律人バンバン・モスロン、フランスで農園を買う
第601話 【旅行先はブドウ園・その1】上位調律人バンバン・モスロン、フランスで農園を買う
「うぇいうぇいうぇーい!! フランスっていいところですね! 都市部は華やかで芸術性に優れており、少し地方へ足を向ければのどかな風景が心を癒してくれます。チョリーッス!!」
彼の事を覚えているだろうか。
せっかくピースの新しい上位
バンバン・モスロンである。
若返っていない。異世界人とSランク探索員との間に生まれたハーフ。
異質な
27歳と最近の主力たちよりも若年。
語尾に頼らず、「軽薄なのか実直なのか分からない」と言うキャラ付けは定着するほどの出番がなかったため、もう一度最初からスタート。
バンバン・モスロンくんです。
彼の生まれた異世界では苗字と名前の区分がないので、本名はバンバンモスロンなのだが、ペヒペヒエスでさえ長いからペヒやんと呼ばれている事を最上位調律人ライアン・ゲイブラムは憂慮して「お前、バンバンで良いか?」と潤滑油プレイを発揮。
そんな彼はバンバン・モスロンくんです。
ここはフランス。
とある地方のブドウ園。
彼はちゃんと暗躍していたのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『ワチエブドウ園』は代々ワチエ家が引き継ぎ、守って来た由緒ある農場。
かつては時の皇帝に献上するワイン用のブドウを栽培していた事もある。
「レオさん! うぇーい!! 修行は順調ですか? チョリーッス!!」
「バンバンくん。かなり順調さ。本当に、君が来てくれたのは天の助け。運命に違いない。僕は女神様に感謝したね。ああ、ついに僕の人生が始まるのか!!」
この男はワチエブドウ園の12代目。
レオポルド・ワチエ。32歳。
昨年、父からブドウ園を正式に引き継いだ。
それから1年。半月前の事である。
彼はバンバン・モスロンに農園の全てを売却していた。
ピースの作戦行動は基本的に上位階級の者に「ぜってぇ〇〇しろ!!」と強制されない限り、各々のやり方に全権を委任されるシステム。
バンバンは上位
「レオさん、潜在能力がすごかったですからね。けれど、ブドウ園の経営は愛着もあったでしょう? こんなに伝統のある家業ですし。まさか買い取りに応じて頂けるとは思いませんでしウェーイ!!」
「僕ね、ブドウ嫌いなんだ。あと、お酒も飲めない。なにが楽しくてじじいになるまでブドウ育てなきゃならないのか。しかも、バンバンくん。聞いてくれる? このクソ田舎、許嫁の制度があるんだ。子孫絶やさないためとか言って。ほら、ブドウ園だらけだから。子供できないと労働力がね」
「生まれた瞬間から人生の伴侶を得ているなんて、ステキじゃありませんフォー!!」
「そうだね。絶世の美女だったらね。バンバンくんは異世界人だったよね? ヨーロッパの神話に出て来る、ミノタウロスって分かるかい?」
バンバンは頷く。
彼は勤勉なので、母の故郷である現世の知識は絶えず吸収し続けていた。
「牛と人のキメラみたいなヤツですよね。それがどうかしましたウェーイ?」
「うん。あのね」
レオポルドは下を向いた。
数秒ほど地面を眺めて、おもむろに唾を吐き捨てるついでに呟いた。
「僕の許嫁のあだ名。ミノタウロスなの。もうね、見た目も気性もそっくり」
「ウェーイ!! ……お辛い話をさせてしまい、すみませんでした」
バンバンはレオポルドを元気にしようと明るく話題を変える。
「レオさんの
「本当にバンバンくんと出会えてよかった。君の
バンバン・モスロンの得意とするスキルは構築属性。
ドラゴンボールで戦士たちが気を解放したらシュインシュインってなって体の周りに出て来るアレである。
タイプとしては阿久津浄汰特務探索員の十八番『
そんな彼の指導をみっちりと受けたレオポルド・ワチエさん。
「ブドウ園辞めたい」と言う気持ちが高揚し、あっという間に潜在能力を解放させた。
例によって「スキルはメンタル勝負」理論である。
ピースは国協をベースにしている組織のため、資金源は潤沢。
割と冗談みたいな額でワチエブドウ園を買い取り、新戦力から後顧の憂いを取り除いた。
先代のワチエ父。
先々代のワチエ祖父も、提示された金額がアレだったため、納得して既にパリの一等地に引っ越している。
つまり、今回の戦場はワチエブドウ園。
実ったブドウに忖度などしない冷酷な元ブドウ農家。これは恐ろしい。
「では! レオさん! どこかしらの探索員を呼び寄せましょウェーイ!!」
「分かったよ。上手く戦えると良いけど。結果を出さないと
「います、います! 大勢います!! 下士官から
「ブドウとナニを独りでいじってばかりだった青春を今! 僕は取り戻す!! やろう! バンバンくん!!」
2人は同時に
その出力は凄まじく、すぐに近隣諸国の探索員協会が反応した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
こちらは日本本部。
フランスが朝なので、こっちはお昼過ぎである。
「南雲さん。ヨーロッパの探索員協会から報告上がってますけど」
「そうなの? どこから?」
「探索員協会が存在する、ほとんど全ての国からです」
「あっ。これね、面倒なヤツだ。なんでいつもさ、うちが最初に連絡受けちゃうの? 山根くんさ。君ぃ。オペレーターとして優秀過ぎるのも考え物だよ?」
先ほど、バンバン・モスロンは
彼は逆神六駆の協力を得て、愛する妻を守るため古龍の
南雲修一監察官。またの名を古龍の戦士・ナグモ。
「それで?
「フランスの田舎っすね。田舎過ぎて、
「とりあえずどんぶり勘定で良いから、
「んー。これ、どうやってるんすかね? なんか、
「妻を呼ぶよ」
「うーっす。自分、色々と情報取得しときまーす。ストウェアがあったとこの座標にサーベイランス転移させて、現場に向かわせとくっすね」
5分ほどで南雲夫人がやって来た。
隣には山根夫人もいる。
「修一。聞いたぞ。フランスに赴く必要があるのだな?」
「はい。京華さんか雨宮さんのどちらかに出張って頂けないと、対処できそうにないです」
既に京華さんは装備の入ったケースを持参していた。
何故か春香さんも持参している。
「修一! 私が出る!! もう雨宮に留守番は任せた! フランス観光がしたい!! 春香も連れて行くぞ! 服とかアクセサリーとか下着とか見たい!!」
「健斗さん! 新婚旅行ができますよ!! ふふふっ! それから、私の下着を全滅させた時に言いましたよね? 何でも好きなもの買っていいって!!」
あっくん提言の「結婚は人をダメにする」理論、今回も信憑性をじわりと上げる。
「山根くん」
「うっす。自分も現場に行く流れっすね。ちょっと、家からクレカ持って来ていいっすか? 春香さん、買い物する時ガチなんすよ。自分のアメックスゴールドが火ぃ噴きますよ。は、はは……」
山根夫妻、ピース蜂起によりキャンセルしていた新婚旅行へ。
南雲夫妻は2度目の海外旅行。
戦う理由は今のところ、バンバンくんとレオポルドさんの方が崇高である。
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