異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第552話 【日本探索員協会・その5】フルバースト古龍の戦士・ナグモ、再臨!!(初登場はプロポーズ回。戦場では初。通算2度目)
第552話 【日本探索員協会・その5】フルバースト古龍の戦士・ナグモ、再臨!!(初登場はプロポーズ回。戦場では初。通算2度目)
上空にはハーパー部隊のイカれた仲間たちと姫島幽星がほぼ無傷で健在。
対して、地上でも探索員チームの戦力はほとんど消耗していないが、本部建物の一号館がぶっ壊れると言う大惨事が起きていた。
だが、本部にはまだこのじいさんが残っている。
「ワシ、普段じゃとそろそろ寝ちょる時間なんじゃけどのぉ。おお。修一。仕事が増えて大変じゃのぉ。まあの、新婚じゃし? ちぃと張り切ったくらいが良かろう? 京華ちゃん産休に入ったら、ほれ。多分収入減るじゃろ? うち、産休の手当渋いからのぉ。パジャマで失礼するでー」
「久坂剣友! 周囲の警戒は私に任せて欲しい!! あなたの作業の邪魔はさせない!!」
久坂剣友監察官。
息子を連れて、パジャマで緊急参戦。
彼は日本探索員協会の構築スキル使いトップ3の一角。
筆頭の逆神四郎は疎開中。
同格の雷門善吉監察官はウォーロストへ出張中。かつ、号泣中。
久坂監察官はあくまでも「構築スキルにも造詣が深い」という括りであり、専門にしている訳ではない。
そもそも構築スキル使いは数が少なく、治癒スキル使いと同じくその分野に秀でている者を育成できる事自体が稀なため、夜勤になるとほとんどいなくなるのが実情。
「久坂さん!! ……私も正気を失っている場合ではなかった!! みんな! 無事かね!?」
「うぉぉい! 南雲さんキタコレぇ!! これで勝つる!! ぐへへっ! 後悔するんだなぁ!! この個性派集団が!! 今から、正義の鉄槌がくだるぜぇ!! へへへっ!!」
南雲監察官の中の「みんな」に逆神大吾は含まれていなかったのだが、元気よく最初に返事されると無視できないのがこの男の優しいところ。
なお、妻の京華夫人も旦那のどこに惚れたのかと聞けば、「それは貴様。当然、どこまでも優しい心だ。ふふふっ」と照れながら教えてくれる。
「ご、ご無事でなによりです。大吾さん」
「へへっ! 南雲さんのおかげっすよー!! いやー!! パチンコ屋の修理費まで出してくれるって言うし!! 日本もあんたがいれば安泰だなぁ!! へへへっ!!」
本来であれば国協の関与しているピースによる襲撃のため、同じ探索員協会である日本が被害補償をするのが当然なのだが、「大吾が関わっている」というだけで知能が小学校低学年女児くらいに低下する京華夫人が「絶対に嫌だ!!」とごね続けた事実。
その説得だけで一時間半かかっているので、南雲監察官が大吾をこの場でピースに売り払っても誰も責めない気がする。
「うにゃー。南雲さーん! 命令違反してごめんなさいだにゃー!!」
「みみっ。クララ先輩。芽衣たち、ギリギリ命令聞く前に行ってるからセーフなのです」
「屁理屈ですわよね……。またあちらに戻りますし。南雲さんの後始末を考えると、頭が下がりますわよ……」
家出中の乙女たちはきちんと大人に「ごめんなさい」が言えるいい子。
ただ、1人分声が足りない。
「ガルルルル。変態がまだ生きてる……。南雲さん? わたし、やっちゃっていいですか?」
「ええ……。どうしたの、小坂くん? 君、どんなにポンコツになってもさ。命をそんなに軽い感じで獲って来るタイプじゃなかったよね?」
なお、莉子ちゃんの姫島幽星アレルギーを掘り下げると上官にすら苺色の砲撃を加える可能性があるため、六駆くんから事情を聞いている乙女たちが耳打ちによる情報伝達を済ませる。
「あ。よし、私が本気を出そう」と彼が判断したのはすぐの事であった。
「致し方ない!! 本当は使いたくなかったけれども!! 実は覚悟して、専用武器も持って来た!! 結婚式で晒されたんだ! もう恥ずかしい事などあるか! はぁぁあぁぁぁっ!!」
南雲修一監察官。
それはやがて古龍の色に変化し、渦を巻く。
「うおぉぉぉぉぉっ!! いくぞ! 『
黒い角が伸びる。
瞳は深紅に染まり、目の周りに隈取が出現。
古龍の戦士・ナグモ顕現。
問題は制御できているかどうか。
ナグモは結婚式で辱めを受けてから数回のスカレグラーナ修行を経ており、約5割の確率で『
「チャオ!!」
ダメだった模様。
ここからは、おっさんによる濃厚な中二病の世界。
コーヒーを口に含まれた方から先に進んで欲しい。
◆◇◆◇◆◇◆◇
上空のハーパー部隊は驚き戸惑っていた。
特に衝撃を受けているのは、相手の力量が推し量れるようになってしまったハーパーくん。
「な、なぁぁ!? なんだぁ!? あの化け物は!! おい! 聞いていないぞ!! クソガキ以外にも化け物がいるじゃないか!! 見た目からして化け物だぞ!! どうする!? おい! ヘムリッツ! 下柳!!」
「……南雲くん、ずいぶんと強くなったようですねぇ。ぶひひっ。今日のところは引き分けにしておきましょうかねぇ」
下柳則夫。ここに来てついに知恵をつける。
もしくは、豚の本能が危機を告げたのだろうか。
とにかく自力の差を理解した様子。
「これほどまでとは。クリムトが執心していた古龍の戦士……。わたくしの得ていた情報とかなり乖離がありますね。だが! 装着!! 急ごしらえですが!! 『
ヘムリッツは研究者。
驚異のパワーにも己の発明品を携え挑むのがマッドサイエンティストの矜持。
「お、おおお! ヘムリッツ!! なんだお前! そのイカした格好は!! いいぞ! これなら勝てる!! いけ! ヘムリッツ!! あの化け物を殺せ!!」
「かしこまりました。ご安心ください。この装備は全ての
ナグモは自在に空を飛ぶ。
その速度は全開放状態になると、逆神六駆にも匹敵する。
次の瞬間。
ヘムリッツの顔の前には竜人が立っており、彼は指をビシッと妙な角度でキメると挨拶をした。
「チャオ!!」
古龍の間では一般的な挨拶(ナグモ談)であるが、ハーパー部隊にとっては死の宣告のように思えたらしい。
「な、なん……!? いや、焦る事は!! まず一撃を受け流したのち、反撃を!!」
「ふっ。力を誇示する事は愚かだが。力を過信し、妄信し、盲目的に道を誤る君はより愚かだな。盲目になってもいい瞬間なんて、男には1つしかないと言うのに。さあ、言ってごらん? 君には分かるかな?」
久しぶりの発現なのに、ナグモは絶好調のご様子。
手には監察官室から持参した、竜人ジェロード謹製。
ホマッハ族の鍛冶スキルとのセッションで生まれた、大太刀・ジキラント。
古龍化した際にナグモが振るう専用装備である。
「答えも聞けないなんて、哀しいな。君は愛を知らないのだね。ならば、私が教えよう。これが!! 愛を守る者の太刀!! 『
「ぐがぁあぁぁ!? わ、わたくしの! 『
ジキラントは「古龍の
かつては五楼時代の京華夫人が放つ遠距離攻撃スキルの全てを弾いて見せたヘムリッツ自慢の鎧だが、愛を伝える古龍の戦士の前では無意味。
「チャオ!!」
ご覧いただきたい。この38歳の躍動感。
短時間で3度目のチャオ。もはやノリノリである。
「これはもったいない。アトミルカの技術力は稀有。現状、1番の拾い物だ。ここで死なせるには惜しい。使うが良い。と、もう意識はないか。では、某が」
姫島が墜落するヘムリッツの体を支え、転移石による戦線離脱を支援。
マッドサイエンティスト、戦闘不能も身柄はデトモルトへ。
ちなみに、姫島の持っている転移石はあと1つ。
普通に考えると帰宅用。
「ぶひっ!?」
「久しぶりだね。下柳くん。君とは過去に色々あったが、過ぎたことだ。どうだい? 降伏するかね?」
「ぶ、ぶひひひっ!! 南雲くんは昔から実に優しいですねぇ!! ぜ、是非! ボクは無駄な抵抗が嫌いなんですよねぇ!!」
「そうか。戦いの哀しさを知った者に、刃は向けない」
ナグモ、ジキラントを納刀する。
当然だが、この好機を見逃す豚ではない。
「ぶひひひひっ!! 甘いんですよねぇ!! 君は!! 昔からねぇ!! 『
「……哀しいな。何がって? 君を信じ切れなかった私自信さ。刃は向けないと言った。だが、私には爪もある!!」
ナグモ、下柳の右腕をガッチリキャッチ。
かつて不意を突かれて三途の川まで追いやられた脂肪の凶刃を見事に防ぐ。
ナグモ無双の本番は、まだこれからなのであった。
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