異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第530話 【あっくん&小鳩さんの日常・その1】愛弟子の春の到来を感じ取って暗躍する久坂剣友監察官with55番くん ~あっくん、ついにラブコメさせられるってよ!!~
第530話 【あっくん&小鳩さんの日常・その1】愛弟子の春の到来を感じ取って暗躍する久坂剣友監察官with55番くん ~あっくん、ついにラブコメさせられるってよ!!~
探索員の歴史にこの人ありと謳われる、伝説の男。
久坂剣友監察官。
彼の経歴はすなわち探索員の築いてきた道そのもの。
日本のみならず、探索員協会のある国へ行けば誰もがその名を知っている。
文武に優れ、多くのスキル格闘術と久坂流として形にし、もったいぶる事もなく教本として世界中に技術を広めている。
また、人格者としても大いなる尊敬を集めている事も有名で、久坂剣友の指導を受けた者は多くいる。
南雲修一監察官もその1人。
60を過ぎて「そろそろワシ、弟子取るの控えるけぇの!!」と宣言してからも、塚地小鳩Aランク探索員と55番くんの2人を精力的に育成しており、「あやつらはワシの集大成じゃて」と言って憚らない。
そんな伝説の老兵が、動く時。
その晩。
山奥にある久坂家では、老兵がご機嫌で晩酌をしていた。
「ひょっひょっひょ! 55の!! 話が付いたで!! 修一と京華ちゃんが新婚旅行から帰ってきたけぇのぉ!! 既に計画は盤石じゃったが……!!」
「久坂剣友! 私もあなたの指示通り、塚地小鳩に連絡を済ませた!!」
暗躍する老兵と最後の弟子。
彼らは、久坂一門の長女である塚地小鳩のために骨を折っていた。
「いやー。小鳩、どがいするんじゃろのぉ! ワシが知っちょる限り、小鳩は男と付き合うたことはないけぇのぉ!! 美人じゃし気ぃ利くし、何よりなかなか立派なボデーしちょるけぇのぉ!! もったいないと思うちょったんじゃ!!」
「私も塚地小鳩には幸せを掴んで欲しい!!」
「のぉ! いやいや、小鳩がのぉ!! 男嫌いじゃったのにのぉ! あの小鳩がのぉ……。 ……あ。ワシ、既にちぃと泣けてきたわ。55の。もう一本つけてくれぇ」
「久坂剣友! それはできない!!」
「なんでじゃい!! 今日はお主の飲酒チェックの許容値よりも低かろうが!! ええ日本酒貰うたんじゃ!! もうちぃとくらい良かろうが!!」
「久坂剣友!! あなたには、塚地小鳩の幸せを見届ける義務がある!! 私はあなたの健康と長寿のためならば、疎まれても良い!! お酒の量を今日から減らす!!」
剣友おじいちゃん、またしてもちょっと泣く。
「55のぉ……。お主、そりゃあ……その言い方は反則じゃろうが……」
「晩酌の代わりにこちらを作っておいた! 自家製ヨーグルトのマカダミアナッツ入りだ! 南雲修一がお土産に持って来てくれた!! 長寿にはこれだ!! 長生きしてくれ、久坂剣友!!」
「おお……。貰おうかいのぉ。……ん。意外と美味いのぉ!!」
「結構いいヤツを買って来てくれたらしい! 毎朝、毎晩の習慣にしよう!!」
久坂家の夜は更けていく。
◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日。
帰って来た南雲京華夫人。
便宜上これからも五楼上級監察官と呼ぶが、幸せいっぱいの彼女は今回、暗躍に加担している。
「と言う訳だ。阿久津。お前には特務探索員として緊急任務を頼みたい。やってくれるな?」
「あぁ。そりゃあ、上官のあんたがやれって言うならよぉ。……ただ、ちょっと待て。どうしてよぉ、私服でイオンモールなんだぁ? 探索員の範疇から逸脱してるよなぁ?」
京華さん、視線をガッツリ逸らす。
「……その、あれだ。イオンモールってちょっとダンジョンみたいなところがあるじゃないか。な、なあ! 日引!? そうだろう!?」
「確かに! そうかもしれません!!」
「あぁー? 京華さんがよぉ、露骨に目ぇ合わせねぇんだよなぁ。日引さんに至ってはよぉ。久坂さんとこの弟子の口癖流用してんだよなぁ? あんたよぉ、んな適当な相槌するかぁ? キャラ違ぇだろうが。……まあ、仕事なら反抗はしねぇよ。行ってくらぁ」
あっくん。
日須美市のイオンモールへ転移。
「やれやれ……。どうにも人を騙して動かすのは性に合わんな。日引! お前! もっと上手く誘導せんか!!」
「あ。すみませーん! ですけど! 京華さんの新婚旅行のアルバム見てたら、次は私だなって!! このバナナボート、すっごい密着してますね!! 参考になります!!」
「ああ! それか!! ふふっ。良いところに目を付けたな!! 修一のヤツが意外と怯えるものだからな!! ふふふふふっ。つい意地悪したくなってだな!! 思い切り抱き着いてやった!! ふふふっ。結構可愛かったぞ!!」
「ハワイ、いいですよね! 私、グアムとバリ島とハワイで迷ってるんですよ! 新婚旅行!!」
「日引。……ハワイのホテルは良かったぞ!! ムードが上がるんだ!! あの修一が随分と積極的になってな!!」
「えーっ! 京華さん!! そのお話、詳しく!!」
新婚さんの京華夫人と新婚カウントダウンの春香夫人予定。
彼女たちは「うふふ」「あはは」と惚気全開であった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
あっくん。
緑のシャツにジーンズと言う、珍しい私服姿をご披露する。
彼は意外とオシャレなので、私服にもこだわりがあったりするのである。
「す、すみません! お待たせしてしまいましたわ!! あっくんさん!!」
「あぁ? 塚地じゃねぇかぁ?」
そこにやって来たのは、紺色のワンピースで普段は出さない肩を大胆に開けている、チーム莉子のお姉さん。塚地小鳩。
あっくん。秒で全てを理解する。
「……ちっ。やられたぜぇ。五楼さんはよぉ。結婚してからちょいとダメになったなぁ? 普通、任務って嘘ついて出動させるかぁ?」
「どうなさいましたの? ……あっ。もしかして、お待たせした事を怒ってらっしゃいますの? も、申し訳ありませんですわ!! せっかく、あっくんさんが誘ってくださったのに!! あの、わたくし、恥ずかしながら男の方と、お、で、おデート……!! させて頂くの、初めてでして!! 服を選んでいたら、あの……!! 申し訳ありませんですわ!!」
阿久津特務探索員。
「はー。なんだぁ? この純真乙女はよぉ? こりゃあ選択肢なんてねぇだろうがぁ」と小声で呟くと、思考を切り替える。
「いやぁ? 女が男待たせるのは普通だからよぉ。気にしねぇで良いぜぇ? あとなぁ。そのワンピース、似合ってんじゃねぇか。塚地ぃ。お前、私服は案外可愛いタイプかぁ? くははっ。新鮮だぜぇ?」
あっくん。イケメンムーブもお手の物。
「ひゃ、ひゃい!! あ、あの! この服、クララさんと莉子さんが選んでくださったのですわ!! へ、変じゃありませんこと!?」
「あぁ……。一気に不安が高まったがなぁ? 今のところ、よく似合ってんぜぇ? おおい、頼むからよぉ。ぜってぇ脱ぐなよ? クララと
小鳩さん、顔を真っ赤に染める。
なお、この初心なリアクションは恋愛に興味ゼロのどら猫パイセンや、恋愛のステージを飛び出して戻って来なくなった莉子ちゃんには絶対にできない、高等テクニック。
「でぇ? 今日は何を……。ちっと待ちなぁ。なんでよぉ。サーベイランスが飛んでんのかねぇ? おい、てめぇはどこの所属の誰だぁ?」
『あっくんさん!! わたし、小坂莉子ですっ!! 今日はお仕事で監察官室に来てて!! あ、そだそだ! 六駆くんとクララ先輩もいますよぉ!!』
「……撃ち落としちゃダメかぁ? ぜってぇこいつら、映像データとして俺らを記録してやがんぞぉ?」
『えへへへへへっ! あのですね、あっくんさん!! そこには『OPPAI』って言う、ステキなお店が——』
あっくん。
『
「へっ!? あの、あっくんさん!? サーベイランスを!? ご、ご存じありませんの!? そちら、一基で300万はする……!!」
「あぁ? ご存じだぜぇ? 俺ぁよぉ。プライベートを束縛されんのはぜってぇ嫌なんだよなぁ。300万? それで俺らの空間が邪魔されねぇならよぉ。安いもんだろぉ?」
あっくん。ナチュラルに口説いて行くスタイルを見せる。
「ぷ、プライベートを邪魔されないように、ですの……!? ……はっ!! あ、あのぉ! あっくんさん!!」
「あぁ? なんだぁ?」
「わた、わたくしぃ!! 莉子さん監修の勝負下着をつけて参りましたわ!! 覚悟、できております……!! 男女がデートすると言う事は、そ、そーゆうことですものね!?」
「いや、塚地よぉ? そんな事ぁまったくねぇんだが? ちっ。こいつ、既に小坂に汚染されてやがる……!! おい、塚地ぃ!! あぁ……。クララの野郎を名前で呼んでる以上、こりゃあ不公平かぁ? ……おい、小鳩。とりあえずよぉ、なんか飲むかぁ?」
小鳩さんは不意うちの呼び捨てに対して、体力と精神力の半分と理性の大半を失いました。
既に足取りがおぼつかず、フラフラしておられます。
ここで久坂監察官からのお知らせです。
「お主ら! まっずいコーヒーの準備はええか!? ひょっひょっひょ!!」との事です。
各探索員は、甘い空気に対する準備を整えてください。
Bランク以下の探索員にこの任務は厳しいかと思いますので、各員無理をせず息苦しくなったらよく換気をして深呼吸するようにと、五楼上級監察官室から通達も出ております。
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