第525話 【チーム莉子の夏・その7】アリナ・クロイツェルに良くない知識を授けまくるチーム莉子の水着乙女たち ~同時上映! バニング・ミンガイルのオアシスになった六駆くん~

 門から煌気オーラ反応を察知したバニングさん、全力疾走で駆け寄る。

 クララと小鳩がやって来てから15分ほど経っての事であり、想定よりもかなり早かったことでまだこの歴戦の雄はギリギリ生きていた。


「いやー! すみません! 遅くなっちゃいました!! どうしたんですか、バニングさん? なんで『ゲート』で倒れてるんですか? 熱中症ですか? ダメですよー。意外と若くないんですから! はい、ポカリスエットどうぞ!!」


 綺麗な六駆くん、バニングさんを思いやる。

 ポカリスエットを受け取った彼は「かたじけない」と言ってグビグビとやった。


「……六駆。お前の来訪を心より感謝する。六駆に命を救われたのはこれで2度目だな」


 アリナさんの水着攻撃でガチの瀕死まで追いつめられていたご様子。

 ちなみにお気づきだろうか。


 バニングもアリナも、六駆くん含めチーム莉子のメンバーの事を名前で呼ぶようになっている事を。

 これまでアトミルカのメンバーですらナンバーで呼んでいたバニング。

 例外的にザールだけは名前で呼んでいたが、彼は弟子と言う立場にあるため特別枠。


 この2人にとって、チーム莉子は本当の意味で友誼を築いた親愛なる仲なのだ。


「大げさなんだから! あら! アリナさん! 水着すごく似合ってますね!! 初めて着たとは思えないなぁ!! 可愛いですよ!! スタイルも抜群じゃないですか!! そう言えば、莉子がアリナさんは着瘦せするタイプって言ってたもんなぁ!!」

「ふふっ。六駆はなかなかに紳士であるな。その言葉、素直に喜ぼう。ありがとう」


 そう言って穏やかに微笑むアリナさん19歳。


「六駆……。お前、とんでもない男だな。何と言う淀みないセリフ……。ふっ。私ごときでは勝てん訳だ」


 一方、六駆くんが女子の水着とプロポーション褒めただけで畏敬の念を抱かずにはいられないバニング氏。

 あの頃の常勝無敗を誇っていた氏はもういない。


 既にこの数時間で彼はいったい、何度敗北感を味わったことだろう。


「みみみみみっ!! お待たせしましたのです!! みみっ! アリナさん! 芽衣とお揃いの色なのです!! みみみぃ!!」


 黄色のフリフリビキニで登場した芽衣ちゃん。

 アリナさんと色被りを無邪気に喜ぶ。


「チーム莉子のメンバーは……化物なのか……!?」


 バニングさん……。

 とりあえず、いちいち驚愕して汗を流すのヤメてもらえますか。

 話が進みません。


「ふぇぇ。年下の芽衣ちゃんにパッド付けるの手伝ってもらっちゃったよぉ……。あぅぅぅ。これは結構恥ずかしいよぉ……」


 魔道具装備。

 フルアーマー莉子ちゃんが最後に登場した。


 3人の遅刻の理由はお察しの通りである。



 莉子ちゃんが胸部装甲の改修工事に手間取っていたからに他ならない。



 なお、乳の嵩増しをおっぱい強者のクララや小鳩が手伝うと莉子ちゃんがすぐに覚醒モードに入るため、最もおっぱい強度の近い芽衣ちゃんを生贄にした悪いお姉さんたちが先行して来ていた理由もおわかりいただけただろうか。


「やっぱり女の子は色々と準備がかかりますからね! 莉子は日焼けしてもきっと可愛いのに!! 日焼け止めってあんなに念入りにしなくちゃいけないんだねー!!」

「ふぇっ!? あ、えと、あ、その、えと。……うんっ!! やっぱり、女の子は紫外線対策って大事だもんっ!! め、めめめめ、芽衣ちゃんにはね!? あの、えとえと! 水着の中をちょっとアレしてもらってたんだぁ!! えへ、えへへへへへへへっ」


 これで誤魔化すことが出来るのは、六駆くん程度のものである。


「……市街戦? 探索員と言うのは、水着で市街戦をするのか? 大したものだな……」


 バニングさん……。

 すみませんが、しばらく黙っていて頂けますか。

 尺が足りなくなるので。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 小坂莉子AAランク改め、Dランク偽装探索員。

 砂浜を駆けると、その成長した胸がポヨポヨと揺れる。



 「最近の高級品のパッドってしゅごい」と乙女たちは息を吞んだ。



「すみません! 遅くなっちゃって! アリナさん、水着ステキです!! やっぱりスタイルが良いから似合いま……!? ま、まま、まーまーまー!! ……アリナさん!! なんですかそのおっぱい!? わた、わたしの想定となんか違うよぉ!!」

「ああ。莉子たちが用意してくれた水着な。半分くらいサイズが合わなかったのだ。すまぬ。妾の自己認識力の低さに落ち度があった」


 莉子ちゃん、砂浜に崩れ落ちる。


「ふぇぇぇぇ……。アリナさんが……!! わたしの思ってるよりずっとおっぱい強者だったよぉ……!!」

「そんなに水着の選択肢が狭まった事を悲しんでくれるのか。優しいな、莉子は。しかし、莉子も存外着痩せするではないか。立派なプロポーションだぞ」



 莉子ちゃんはしょんぼりと体育座りをして、30分ほど無言でいじけました。



 アリナさんに悪意がまったくないため、むしろ言葉の切れ味が増すと言う惨事。

 チーム莉子のお姉さんコンビが出番を察知した。


「さ、さー! アリナさん!! 水遊びするぞなー!!」

「え、ええ! そうですわね!! 水の中に入ってしまえば、色々とアレですものね!! 視覚情報が減って、目に訴えかけてくるアレもナニしますものね!!」


 だが、これはミステイク。


 クララパイセンと小鳩さんがアリナさんの手を引いて砂浜を走った結果。

 おっぱい強者3連星による大震動が莉子ちゃんに襲い掛かった。


「……わたし、帰ろっかなぁ」

「みみみっ! 莉子さん、莉子さん!! 莉子さんは脚です!! 太ももです!! お尻です!! 普段からトレーニングしているから、とっても魅力的です!! みみみっ!!」


 芽衣ちゃまは今最もホットな気遣いのできる妹系探索員。

 これは木原監察官でなくても「うぉぉぉぉぉぉん!!」と叫びたくなる男性は多そうである。


「そっかなぁ。……男の子ってさ。結局おっぱいだもん。知ってるんだぁ、わたし」

「みみみぃ!! 六駆師匠は莉子さんが好きなのです!! つまり、逆説的に考えるとです!! 莉子さんのおっぱいが六駆師匠のジャスティスなのです! みみみっ!!」


 芽衣ちゃんは由緒あるお嬢様学校で学年十傑に入る優等生。

 ここぞの機転は既に並の探索員を凌駕する。



 ところで逆説的なおっぱいとは。



 一方、海に入ったアリナさんは最近ちょっと恋愛脳に侵され始めた小鳩さんと、愉快犯を地で行くクララパイセンに良くない知恵を授かっていた。


「むっ! バニング!! すまぬが、ちと来てくれぬか!! 足をつったようだ!!」

「なんですと!? それはいけません!! 自力で海から上がれませぬか!? お待ちくだされ!! すぐに参ります!!」


 バニングさん、煌気オーラを解放して高速移動を駆使しアリナさんの元へと駆けつける。

 すると、彼女は「ふふっ。容易いヤツめ」と笑って、そのままバニングの鍛え抜かれた胸板に抱きついた。



「ああああああああああああああああっ!!!」

「ふふふっ。クララが教えてくれたのだ。男と言うものは、こうすればだいたい喜ぶのであろう? どうだ? 嬉しいか? バニング? ん?」



 アリナさんのハグから上目遣いのコンボは強力であり、バニング氏は敗れ去る。


「くぁwせdrftgyふじこlp」

「バニング!? いかがした!? おい、しっかりせぬか!! 六駆!! 助けてくれ!! バニングが死にそうだ!! どうすればいい!? なに? そうか! よし分かった!! クララの助言は勉強になる!! 妾が精いっぱい抱きしめて体を支えておるゆえ!! 早く来てくれぬか!!」


 バニング氏の意識が回復したのは、それから5時間後の事であった。

 全然海水浴していないうちに、ミンスティラリアの海水浴は終わりを迎える。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ベッドの上で目覚めたバニング。

 キッチンに立っていたアリナが急いでやって来る。


「ああ、良かった。気が付いたか。まったく、やはりバニング。そなたは高齢なのだな。熱中症で倒れるとは。妾を驚かせるなどと、困ったヤツだ」

「……はっ。言いたいことは色々とございますが、それを口にすると。何でもありませぬ」


「ちょうどお粥ができたところだ。食べられるか?」

「あ、アリナ様がお作りになられたのですか!?」


「それほど驚くこともあるまい。妾とて、ハナミズキの屋敷では自炊しておったのだぞ。さあ、身を起こすのを手伝おう」

「も、申し訳ございませ……!! んはぁぁあぁぁ!? アリナ様!! エプロンの下にお召し物が見えませぬが!?」


 アリナはにっこりと微笑んでから、事も無げに言った。



「これか? クララがな。男の人の看病はこの恰好がマストだにゃー!! と申しておったのだ。水着の上にエプロンを着ておる。裸ではないゆえ、安心せよ。ほら、見てみるが良い。黒い水着を纏っておるぞ?」

「くぁwせdrftgyふじこlp」



 再びバニングの視界はブラックアウトした。


 遅れてきた青春を謳歌しているようで、結構な事である。

 なお、1週間ほどザールとバッツが交代でバニングを見舞ったという。


 次のミンスティラリア回も諸君におかれましては是非ご期待いただきたい。

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