異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第519話 【祝祝祝祝・その4】監察官たちによるスピーチ合戦【今、私がいるのは山の何合目ですか?】
第519話 【祝祝祝祝・その4】監察官たちによるスピーチ合戦【今、私がいるのは山の何合目ですか?】
ゴンドラが完全に降り切ると、南雲修一新郎と南雲京華新婦の姿が見え、会場は大いに盛り上がる。
拍手が途切れたわずかな瞬間を狙いすましたかのように、司会を務める山根くんがマイクを手に取った。
『えー。皆様。改めましてご紹介いたします。向かって右手にいらっしゃるのが、若くして日本探索員協会の筆頭監察官を務めます。南雲修一でございます』
「本日はお忙しい中、私どものためにお集まりいただきまこ」
『南雲は日頃から協会のために働いております。その結果、喪男を拗らせて、実に11年もの間恋人も作らず……いえ、失礼しました』
「……なんで私の挨拶遮ったのかな。山根くん? 私にも失礼を詫びなさいよ」
『訂正いたします。11年もの間、女性から見向きもされず、どうしようもなくなって真摯に仕事と向き合って参りました』
「……何が失礼しましただったの? 失礼を倍プッシュしてるよ?」
『そんな南雲ですが、この度、ついに満を持して人生を共に過ごしていきたいと願い、時にむせび泣くほどに、うわあああ! 結婚したいよぉぉ!! と叫びながらも煮え切らず、プロポーズすると宣言してから2か月も放置プレイかまされたにも関わらず、夫婦になる事を決心した。そんな奇特なメタルゲル系乙女が左手にいらっしゃる南雲京華でございます』
「……山根くん? 君さ、私を晴れの舞台で殺す気なのかい?」
『ご覧ください! お二人はお揃いのピンクのドレスにピンクのタキシード!! 林家ペーとパー子夫妻リスペクトでしょうか!!』
「やーまぁーねぇー!! この衣装! これも君の仕業か!! くそぅ!! おかしいと思ったんだ!! 恥ずかしい恰好させるなよ!!」
ずっと黙って笑顔をたたえていた京華夫人が、しょんぼりして呟いた。
「……すまん。修一。私が年甲斐もなくピンクなどを選んでしまって。そうか。恥ずかしかったか。すまなかった。うん。すまん。そうか。うん」
「え゛っ!? ……ち、違うんですよ! 京華さん!! くっ! なんて巧妙な……!! 私、ピンクのタキシードなんて生涯でこれっきりですから!! いやぁ! 嬉しいなぁ!!」
山根くんはにっこりと笑ってからマイクを再び持つ。
『ご覧ください! 夫婦最初の共同作業が旦那による無自覚なディスり!! これは意外と亭主関白なのでしょうか、南雲監察官!!』
「……もう黙っていよう。……今日、このステージでは、山根くんに絶対勝てない」
その後、ひとしきり喋った山根進行役。
とりあえず開宴の辞は済んだらしく、続けて祝辞へと移る。
『それでは、主賓から祝辞を賜りたいと思います。皆様から代表して、久坂剣友監察官』
「ああ……。久坂さん……。師匠に祝ってもらえるなんて、嬉しいなぁ……」
『と、雨宮順平上級監察官。さらに、本人たっての希望で雷門善吉監察官。同じくどうしても喋りたいと行きつけのお店の優待券を山ほど持参して枠をゲットされた、川端一真監察官。以上の代表の皆様から、祝辞と乾杯の音頭を賜ります』
「……多くない? 普通さ、1回目の祝辞って1人じゃん? 代表の意味知ってる?」
なお、ここまで南雲監察官が絶えずツッコミをしておりますが、彼も空気を読んで隣の京華夫人にしか聞こえないボリュームでキレッキレの返しを行っております。
それでは、怒涛の祝辞の始まりです。
皆様。大変申し訳ありませんが、おっさんしか出て来ません。
◆◇◆◇◆◇◆◇
誰から始めるのか。
前代未聞、4人が同時に代表のスピーチをすると言う事態。
さすが、協会を支える幹部が結婚すると式も規格外である。
「南雲くん。五楼さん。ご結婚おめでとう。私は南雲くんとは同期でして、そんな彼が遠回りをしながらも幸せを掴んだことがこの上なく嬉しいのです」
さて、これは誰でしょうか。
「わた、私、私はぁぁぁぁ!! ずっと、ずっとぉ! ンナフィィィ!! 南雲くんにぃ、恋人が出来ない事をイッヒッフゥー、心配、心配しとってぇー!! せやかてぇ、女の子紹介してもすぐ断るしィィィンアッハァァァ!! 夜のお店にもい、行かへんからぁぁ!! もう、女性に興味あらへんのかってぇぇぇ! アアアーアアーングゥフゥヒィィィィィッ、ヤ゛!!」
『はい。雷門善吉監察官でした。どうもありがとうございました』
「……なんで雷門さんにスピーチさせたんだ。……山根くん」
続いて、場の雰囲気を締めるために老兵が出陣する。
「あー。雷門のの後とか、ワシはなんちゅう外れ引かされとるんじゃ。……まあ、ええか。修一、京華ちゃん。何はともあれ、おめでとう! めでたいのぉ!」
「久坂さん……! ありがとうございます!!」
「京華ちゃんはこれまで、長いこと協会を纏めてくれちょったからのぉ。こうして綺麗なドレス着ちょるとこ見ると、なんちゅうか、こみ上げてくるもんがあるのぉ!」
「久坂殿……。人を泣かせようとするのが上手い方だ……」
「修一はのぉ。色々と苦労背負い込む性格じゃけぇ。京華ちゃんみたいに芯の強い嫁さんが傍におってくれると、ワシとしても安心じゃわい。京華ちゃんものぉ。修一はああ見えて、意外と頼りになるけぇのぉ。困ったときはしっかり頼るとええ。ワシは嫁さん貰うことはなかったけどのぉ。お主らの事も、勝手に自分の子供のように思うちょるから、これから2人が幸せを増やしていくと思うとのぉ。安心していつでも逝けるっちゅうもんじゃ! ひょっひょっひょ!! 最高の冥途の土産じゃわい!! おっと、長うなったのぉ。年寄りの悪癖じゃ。では、じじいはこの辺で下がろうかのぉ! 最後にもう一度! おめでとう!」
「うっ、うう……。久坂さん! 私、私はあなたを師匠に持てて、幸せです……」
「修一……。本当に、私たちは良い方に見守って頂けて、果報者だな……」
見事に感動的な空気を演出した久坂老人。
伝説的な探索員として、業界でも知らぬ者なしと謳われる生き字引。
これからも、南雲夫妻の良き父として、探索員たちの得難き祖父として、長生きして頂きたい。
それでは、感動パートは終了いたします。
これより、凶悪な刺客が会場をジャックいたしますので、お気を付けください。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『久坂剣友監察官でした。皆様、盛大な拍手をお願いいたします』
「おーおー。ヤメぇよ、山根の! ワシに向かって拍手してどがいするんじゃ!」
久坂は自分の席に戻ると、隣にいる55番とグータッチ。
彼も今は自慢の息子がいるため、寂しくなんかないのである。
では、お次をどうぞ。
『えー。それでは、最後に雨宮順平上級監察官と川端一真監察官。お願いいたします』
2人が同時に呼ばれると、小走りでゴンドラの陰から登場した。
「はい、どうもー!! おっぱいミルクボーイですー!!」
「どうも。男爵です。ありがとうございます。ありがとうございます。今、参列者から『OPPAI』のクーポン券を頂きました」
「あらー! ありがとうございますー! こんなもん、いくらあっても良いですからねー!!」
「雨宮さん。私の母がですね」
「うん。川端さんのお母さんが?」
「新婚生活で大事な袋の名前を忘れたらしいのです」
「袋の名前を! じゃあね、私が一緒に考えよう!」
「助かります。母が言うにはね、柔らかいらしいんです」
「なるほど。それはね、おっぱいだよ!!」
「おっぱいですか」
「うん。新婚さんで大事な柔らかい袋って言えば、おっぱいだね。簡単だよ」
「ですが、分からないんです」
「なにが分からないの?」
「母が言うにはね、その袋は小さい事もあるって言うんです」
「……そっかー。なら、おっぱいじゃないか! だいたいおっぱいは大きいからね!」
「はい。それに、母が言うにはですね。触っていると幸せになれるらしいんです」
「……おっぱいだよ! それ、おっぱいだ!! だって、触ってるだけでこの世の全てに優しくなれるもん!!」
「でも、雨宮さん。すごくいい匂いがして、時には顔を埋めたくなるらしいんです」
「そうなの? ……じゃあそれ、いや! おっぱいだよ!! おっぱいは基本いい匂いだし、顔を埋めてなんぼなところがあるから!!」
「でも、雨宮さん。その袋、普段は二重に包装されてて、使う時だけ取り出すらしいんです」
「おっぱいじゃないか!! キャミソールとブラジャーの事でしょ!?」
「でも、雨宮さん。母が言うには、それはおっぱいじゃないらしいんです」
「そうなの!? ……でも、私はおっぱいだと思うなぁ!」
「はい。私もそう思います」
「「どうも、ありがとうございました!! 南雲くん、京華さん。お幸せに!!」」
会場から、まばらな拍手が起きた。
なお、スタッフルームにてオフショルダードレスの胸を押さえて耳まで真っ赤にしている誰かによって巨大な
以上、監察官たちのスピーチでした。
皆様、乾杯の準備をお願いいたします。
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