異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第482話 【五楼京華&逆神大吾の地獄隊その2】長き悪夢から目を覚ます時!! さらば、逆神大吾!!(なお……) 異世界・ゲレ
第482話 【五楼京華&逆神大吾の地獄隊その2】長き悪夢から目を覚ます時!! さらば、逆神大吾!!(なお……) 異世界・ゲレ
和泉正春Sランク探索員の治療をしながら、阿久津浄汰が呟いた。
「あぁ。ありゃあ悪手だぜぇ。なぁ、屋払さんに青山さんよぉ。上級監察官様は親父と組んだ途端にものすげぇ勢いで戦闘力が落ちたんだが。あの女王様が親父を嫌ってるのは感じてたがなぁ? 戦闘に支障が出るってのは理解に苦しむぜぇ?」
潜伏機動部隊の2人が沈痛の面持ちで答えた。
「オレらも詳しくは知らないんですけど、五楼さんは昔、大吾さんの弟子だった時期があるとかでよろしくぅ」
「五楼さんの剣技の師匠が大吾さんだったみたいです」
それだけ聞くと、阿久津は「あぁ。全部分かったぜぇ」と五楼に対して深い同情の念を抱いた。
「そりゃあ戦闘に集中できねぇよなぁ。俺が上級監察官様の立場だったらよぉ。親父に指導されたとか言う黒歴史を目の当たりにすりゃあ。……まあ、舌噛んで死ぬな」
「あ、阿久津さん……。そこまでですか!? 確かに、ちょっとおじさん特有の鬱陶しさはありますけど……」
阿久津は青山に「あんた、男選びには気を付けなぁ。親父が一般男性に見えてるって、かなり異常だぜぇ?」と忠告してから、和泉の治療へと戻るのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
五楼京華上級監察官。
彼女は、阿久津の見立て通り苦境の中にいた。
本来の実力の3分の1も発揮できない、想像を絶するバッドコンディション。
「何時如何なる時も正しく力を行使すべし」と己に使命を課している彼女にとって、そのアイデンティティが侵害される事で一層冷静さを失っていく。
「んっふっふ! どうしましたぁ? お得意の剣技はもう使われないのですか? データによれば、五楼京華さん。あなたの戦闘スタイルは剣術が主体とありますが?」
「そうだぜ、京華ちゃん! 遠慮することねぇ! やっちまえよ!! オレと一緒に鍛えたその剣技でよ!! やれる、やれる! 京華ちゃんならやれるぅ!!」
「私が再び剣を抜く時……。それは、この痴れ者が死ぬときだ!!」
「あなた……。時々すさまじく頭の悪い発言をされますが。それが普段のお姿なのですか?」
五楼は意地でも
そして、本流の逆神流剣術を考案し、確立したのが逆神大吾。
なるほど。これは察するに余りあるピンチである。
「んっふっふ。上級監察官の極大スキルでも私の『
反対に、4番のご機嫌は極めて上々。
本調子でないとはいえ、五楼の極大スキルを全てその身で受けてノーダメージなのは賞賛されるべき成果に他ならなかった。
「よっしゃ! オレに任せとけ!! こんなコンピューターおじさん、オレだけで充分よ!! いくぜぇ! 二刀流!! 『
大吾の逆神流剣術は技の数にフォーカスを当てるとかなり豊富である。
相手に応じて適時適切なスキル選択ができれば、戦闘を優位に進める事は難しくない、逆神大吾が作ったとは思えない優れた剣技。
「
「く、くそぉ!
「眩暈がしてきた。すまんな、南雲。私はここで死ぬのかもしれん」
「京華ちゃん! 気をしっかり持って!! やれる、やれるぅ!!」
哀しみの地獄が終わる気配を見せない。
五楼は初めて神に祈った。
「どうか、この痴れ者を生まれた時まで遡って存在ごと消してくれないか」と。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、和泉に変化が起きていた。
「ごふっ。げっふ、げふ。……これは」
「あぁ。気が付いたかよ。そいつぁ何より。大げさな恰好させちまって悪かったなぁ?」
「阿久津さん……。小生のために、ここまでして頂けるなんて、ありがごふっ、ございまげふっ」
「俺の気まぐれだからよぉ。気にすんな」
和泉は血を吐きながら阿久津に「ご迷惑ついでに、もう1つよろしいでげふっ?」と尋ねた。
阿久津は「乗り掛かった舟だからよぉ。俺にできる事ならしてやるぜぇ?」と応じる。
和泉は言った。
「どうか、五楼さんと大吾さんの助太刀を。小生はもう大丈夫ですので」
「あぁ? 和泉さんよぉ。俺ぁ言ったよなぁ? できる事ならしてやるってよぉ。そんな檄ムズな難題はごめんだぜぇ?」
だが、和泉は折れない。
この男は体が弱い分、心に宿した正義と使命感は人一倍強い。
「作戦の成功のためならば、どんな手だって打つべきである」と言うのが彼の持論だった。
咳き込みながら阿久津を説得し続ける和泉。
こうなると、阿久津が折れる事になるのは必然であった。
「ったくよぉ。どいつもこいつも、人使いが荒いんだよなぁ。もう
そう言うと、阿久津は『
疑問に思う屋払が行動の真意を尋ねる。
「阿久津さん。なんで大吾さんにスキル使うんでよろしくぅ?」
「あぁ。手札がどんなに悪くてもよぉ。使いどころさえ見誤らなけりゃ、どうにかなるもんなんだよなぁ。いくぜぇ。『
大吾の体がビクンと震えたかと思えば、突然姿勢が良くなった。
これは、本来はモンスターに対して使用するスキルであり、体のコントロールを奪い同士討ちさせる事を目的とした中等術式である。
「あらら!? なんか体が勝手に!!」
「んっふっふ! 無防備に近づいて来るとは、愚かな男ですよ! 今度こそ、息の根を止めて差し上げましょう!! 『
「おぎゃぁぁぁぁっ! いってぇな、この野郎!! ああ! 体が勝手にぃ!!」
「な、何故、この男は攻撃を受けても倒れないのですか!? よ、寄って来るな!! ええい、さらに連射を増やします!! 死んでしまいなさい!!」
だが、大吾は悲鳴を上げているだけで体には刀傷のひとつもない。
そのまま彼は、4番の背後に回り抱き着く。
「お、おやめなさい!! なんですか!? まさか、自爆を!?」
「冗談じゃねぇ! なんでオレがお前と心中せにゃならんのじゃい! つか、避けろよ!! 動きが鈍いんだよ、おっさん!!」
「ぐぅっ! このフルアーマー状態のわたくし唯一の弱点に気付くとは……!!」
おっさんたちが絡み合う。
阿久津が小さな『
「上級監察官様よぉ。今なら、敵を2人同時に攻撃できるぜぇ? くははっ」
何度でも言おう。
阿久津の得意とする戦法は、相手を罠にはめて策謀ののち始末するスタイル。
五楼の瞳に希望が戻って来た。
「阿久津……! その機転に感謝する!! はぁぁぁぁっ!! 南雲の作ってくれたソメイヨシノよ、頼むぞ! 私に力を貸してくれ!!」
五楼の
4番も余裕で構えてはいられない事はすぐに察知したものの、背中にタコのように絡みつくダメ親父を振りほどけない。
「ど、どきなさい!!」
「オレだって離れてぇよ! あれ? 京華ちゃん? 何してんの?」
「喰らえっ!!
雷を帯びたソメイヨシノは、稲光のような速度で伸びていく。
その先には、汚いおっさんが2人で仲良く絡み合っていた。
「んぐぅぅぅっ!? わたくしの最高傑作がぁ!? ぐげぇあぁぁぁぁっ!!」
「おぎゃああぁぁぁっ! なんでオレまでぇ!? あべぇあぁぁぁぁぁぁっ!!」
2人の汚物を貫通させたソメイヨシノを元のサイズに戻し、五楼は一言だけ感想を述べた。
「痴れ者どもが。……恥を知れ」
おっしゃる通りである。
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