第351話 任務完了! お疲れ様、急襲部隊!!
アトミルカ構成員2番による不敵な予告を受けてから3時間。
五楼京華の指示のもと、協会本部からやって来た面々はそれぞれ与えられた仕事をこなす。
「ふんふふーん。いやぁ、みなさんご精が出ますね! 僕も何かお手伝いしましょうか!? あ、山根さん! そのパソコン、叩くんですか? じゃあ、僕が!!」
「おっとぉ! 逆神くん、気持ちだけで充分っすよ! あっちで五楼さんが機密文章読んでるっすから! お手伝いしてあげてくださいっす!」
山根健斗Aランク探索員。
その危機回避能力だけは既にSランクのそれに到達していると思われた。
六駆は暇を持て余していた。
仕事のできないおっさんが暇を持て余すとろくな事がない。
ある者は纏まった資料を散らばらせ、またある者は知識がないのに案件に首を突っ込むのだ。
「五楼さん! 僕に出来る事があると伺って馳せ参じました!」
「なっ!? ……山根か。あの痴れ者め! 逆神、この司令官室で貴様にできる仕事はない」
「ええー? つまり、デスターを粉々に粉砕するしか僕の仕事はないと?」
「痴れ者が……! 粉々に粉砕されて堪るか! この軍事拠点は保存される事になっている。ああ、分かった。お前には仕事をやってもらう。顔の広いお前にしかできない仕事だ。……ほら、2万円」
五楼京華は人の上に立つ資質に溢れた女性である。
仕事のできないおっさんのあしらい方と、逆神六駆の危険の少ない運用法のどちらも熟知していた。
「うひょー! じゃあ、行ってきます!!」
逆神六駆のおつかいクエストが始まる。
◆◇◆◇◆◇◆◇
六駆はデスターの外へ向かう。
道すがら、福田弘道Aランク探索員にドーナツを差し入れられて満足気な木原監察官にご挨拶。
「うぉぉぉん! 逆神ぃ! 芽衣ちゃまがよぉ! 自分の
「はい! そうですね!!」
面倒なおっさんは、別の面倒なおっさんの対処をするのが意外と上手い。
同族だからだろうか、何故か彼らは完璧にそれをやってのける。
これは、おっさんの持つ108ある必殺技の1つである。
「みみっ! 六駆師匠!」
「六駆さんもこちらにいらっしゃいましたのね。でも、アトミルカさんの怪我人はほとんど搬送が済みましたわよ? 六駆さんの『
デスターの外では、芽衣と小鳩が救助作業に参加していた。
今回の作戦で死者を1人も出さなかった南雲修一。
これは彼の優秀さの表れでもあるが、脇を固めた者たちが優秀だったからでもある。
「あららー! 逆神くん! なんだか大活躍だったらしいじゃないの! ふぅー! 君が成人してたら、活きの良いおっぱいがあるお店に連れて行くんだけどなぁ!! ねー! おっぱい男爵!! もう予約取ったんですよねー!! おっぱい男爵!!」
「ヤメてください、雨宮さん!
「……水戸くん。私を殺してくれないか?」
人工島・ストウェア組も元気そうで何より。
『
中学生かな?
「逆神くん。お疲れ様です」
「聞いたところじゃ、敵の大将取ったのおめぇらしいじゃねぇか! さすがだぜ、よろしくぅ!!」
「青山さんと屋払さん! ご無事で何よりです!」
潜伏機動部隊のコンビは、地味だが大事な「デスターの入口の防御」と言う任務をしっかり果たしていた。
なお、加賀美政宗は負傷の治療のため先に協会本部へと戻っている。
雲谷陽介はとっくに回復しているが、こっちに交ざっても出番はないだろうと自己判断して、宿舎に帰って睡眠中。
しばらく3人で雑談をしていると、竜人の大きな羽音が聞こえて来る。
「うにゃー! ナポルジュロさんの背中、乗り心地バツグンですにゃー!!」
「バルナルドさんの背中は大きくて安心できますっ! わたしも飛行スキル覚えたいなぁ」
莉子とクララが、竜人トリオと和泉正春Sランク探索員を連れて戻って来た。
なお、この任務は六駆に課せられたものだったのだが。
「うひょー! 何にもしてないのに仕事が終わったー!! 2万円ゲットー!!」
本人は仕事を失っても特に不満はないようだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
竜人ジェロードが六駆に申し出た。
「逆神六駆。和泉正春の治療を頼めぬか? この男、我が身を犠牲にして他者を守り過ぎるものだから、すっかり
「それはいけませんね! 『
和泉正春は帰還後、一等戦功を授与される事となる。
彼の判断は、結果論だが3番との遭遇戦を最も安全な形で消化するきっかけとなった。
さらに、自分の命を省みず敵であるアトミルカ構成員を防御スキルと治癒スキルで死者0人とした功績は大きかった。
「げふっ。これは逆神くん。申し訳ない。やはり小生に現場は合わないようでごふっ」
「何言ってるんですかー! 大活躍だったのに! もう一本! 『
和泉の治療が行われている間にも、竜人たちと会話は進む。
ナポルジュロが歩み出て言った。
「逆神六駆よ。ナグモと交わした約束が履行されるのか心配なのであるが」
「はいはい。何のお約束を?」
「バルナルド様の助太刀をする代わりに、スカレグラーナの防衛のシフトを1週間変わってもらうと言う話になっている」
「えっ!? 卿ら、余を案じて来てくれたわけではないのか!? 余、ここに来て大き目のショックを受けているのだが?」
落ち込むバルナルド様。
この約束は、後日しっかりと果たされる事になる。
南雲修一が仕事を抱えてスカレグラーナに1週間の出張に向かうのだ。
そこでは「ナグモ! 来た!」「ナグモ! なんかちょっと老けたナグモ!!」と、スカレグラーナ人に歓迎されるのだが、その話は割愛する。
それから、アタック・オン・リコをミンスティラリア魔王城の謁見の間にサプライズ返却しに行ったり、改めてやって来た久坂剣友と55番を五楼のところへ案内していたりと、2万円分の働きをした逆神六駆。
気付けば、結構な時間が過ぎ去っていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
再びデスターの最奥に構築した『
そこには、主だった監察官が並んでいる。
南雲が代表として、口を開いた。
「諸君。今回の作戦はこれにて無事完遂と言う事になった! 最初は下柳則夫の捕縛を目的としていた本作戦だが、いつの間にかアトミルカ最大の軍事拠点を制圧し、責任者だった4番をも捕らえる事ができた!! これはもう、文句のつけようのない大成功だ!!」
急襲部隊のメンバーは思い思いに指揮官の言葉を胸に刻む。
各々の戦闘能力は急襲部隊の演習で大きく向上し、作戦ではより実戦的な力を成長させる事になった。
このような作戦は生涯でも一度きりかと思われ、その点では部隊に参加した者たちは幸運だったのかもしれない。
「では、協会本部に帰還する! 貴様たち、本当によくやった!!」
五楼京華が短く、だが心を込めてメンバーを労い、彼らは帰途に就く。
これから先、アトミルカとの全面戦争が待ち受けているのだが、この戦いを切り抜けた彼らならばきっと未来だって勝ち取れるだろう。
「いやー! 今回もかなり稼げたなぁ! そろそろ隠居できるかな!?」
最強の男、逆神六駆の戦いはまだ終わらない。
——第5章、完。
◆◇◆◇◆◇◆◇
いつも拙作にお付き合い頂きまして、ありがとうございます。
さて、拙作はドラノベコンで最終選考落ちを喰らったくせに、カクヨムコンに挑んでおります。
正直なところ読者選考の突破は微妙な雰囲気をビンビンに感じておりますので、よろしければ☆や作品フォローによるご支援をお願いいたします。
既にご支援頂いている多くの方々におかれましては、こんなしょうもない話に長らくのお付き合い、大感謝でございます。
日々少しずつ増えていくフォロワー数と☆の数を見て私のモチベーションへと変換されておりますれば、皆さまは拙作を一緒に書いて下さっているようなもの。
本当にいくつありがとうございますを重ねても足りません。
拙作もそろそろ終盤戦へと差し掛かっていく予定ですが、もう当初の予定していた結末から結構な勢いで離れてしまっておりますので、きちんと着地できるのか、その点が不安でなりません。
とは言え、不格好でもしっかりとゴールまで走り抜けるつもりでございますので、これからもご愛顧を賜りたく存じます。
明日から6章、スタートでございます!!
ストックが激減しておりますが、気合の毎日更新です!!
どうぞよろしくお願いいたします!!
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