第340話 アトミルカの秘密兵器! サイボーグ戦士、起動!!

 デスターの奥にある司令官室。

 そこでは、軍事拠点に設置された全ての監視カメラの映像を見る事が出来る。


 6番ヒャルッツ・ハーラント。

 4番グレオ・エロニエル。


 この2人は、3番と南雲修一の戦い、および777番と急襲部隊の戦いをモニターで見ていた。


「まずいぞ、こりゃあ。3番のおっさん、やられちまったじゃねぇか」

「やはり、日本の探索員協会が開発したナグモが脅威だ。手から古龍のブレスを放出するなど、人間には到底できない」



 そんなスキルを割と頻繁に使うおっさんを我々は知っている。



「だがよ、ナグモもあれだけ煌気オーラ使い散らかしてるって事は、消耗が激しいだろう。あいつが強化人間の類だとしても、無尽蔵に煌気オーラを供給する技術は探索員どもにだってねぇはずだ。うちの3番の野郎だって作れてねぇんだからな」

「恐らく、デスターの外壁を破壊したのも先ほどのナグモのスキルだろう。ならば、もうヤツの煌気オーラは枯れていると見るのか? 確かに、あんなスキルを連発できる人間も存在しないだろうが」



 あんなスキルを連発できる少女も我々は知っている。



「とりあえずだ。20番台の小隊は全滅。3番の野郎も勝手に逃げ帰りやがった」

「そうだな。このデスターで戦えるのは、もう私とグレオ。あとは……」


 4番と6番が同時に視線を移す。

 その先には、日本の学校にある掃除用具入れのような金属製の箱があった。


「どうすっかな。3番の野郎の開発技術はオレも認めてはいるが。サイボーグだとよ。果たして、ちゃんと動いてくれるのかね?」

「この期に及んでは、とりあえず投入してみるのも手ではないか? 使えなければ、敵の真ん中で自爆させると言う手もある」


「ははあ! ヒャルッツ! お前ぇ、ひでぇこと考えるな! それ、使えるぞ!」

「私としては、このサイボーグが普通に活躍してくれる事を望みたいが……」


 アトミルカで秘密裏に研究されていた、サイボーグ戦士。

 ちなみに、その研究過程で造られたものが『人造人形クレイドール』である。


「それじゃあ、起動してみるかね。ボタン1つで動くってのが、また胡散臭ぇんだよな。おらよっと!」


 4番が黄色いボタンを押すと、掃除用具箱が開いた。


「視界良好。動作良好。認識。完了。4番エロニエル様。6番ハーラント様。ご命令をくださいますか」


 このサイボーグには人工皮膚などは施されておらず、機械が剥き出しである。

 その姿だけでも、見る者を圧倒する不気味さが売るほどに垂れ流されていた。


「おう、意外と普通に動いたな。よお、サイボーグ。お前の識別コードは?」

「ワタシは01番。アトミルカサイボーグ計画のプロトタイプです」


「……驚いたな。これほど円滑にコミュニケーションが取れるのか」

「こりゃあ、3番の野郎の思わぬ置き土産だな。よし、01番。お前の任務は日本探索員協会どもの殲滅だ。できるか?」


「命令、承諾。条件、検索。日本探索員協会のデータベースを参照。4番エロニエル様の命令は、実行可能と判断できます」

「はっは! そりゃあいい!! んじゃ、行ってこい!! 基地の壁や天井がぶっ壊れても気にすんな! やりたいように戦えばいい!!」


 01番は「行動許可、取得」と言って、司令官室からゆっくりと出て行った。

 前述の通り、デスターは迎撃態勢に移行しており、司令官室から急襲部隊のいる地点までは一本道。


 つまり、必ず遭遇戦が発生するのである。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「南雲さん! 古龍の力でみんなが捕まってるこのドームを破壊してやって下さい!!」

「くそぅ! いつまで私の体にこの煌気オーラを纏わせとくんだね、君ぃ!! さっき1回解除したじゃん!! やれと言うならやるけれども!! うりゃ! ……ちょっと手刀を振っただけで、バリアが粉々になったよ?」


「それは『古龍手刀ドラグブレイド』ですよ!」

「やーめーろーよー!! 名前付けるなよぉ! もう私、2度と古龍の煌気オーラは纏わないからね!?」


 南雲の心情はひとまず脇に置いておくとして、急襲部隊が合流した。


「お師匠様! ご無事でなによりですわ! 心配しましたのよ!!」

「おーおー。小鳩、抱きついてくるこたぁなかろうが! こんな年寄りとハグして何が楽しいんじゃ」


「確かにそうかもしれん! だが、言葉では言い表せない何かがある!!」

「55の。お主はもうそれ、やったじゃろうが! ヤメんか、2人とも!!」


 小鳩と55番に抱き着かれる久坂。

 文句を言いながらも、幸せそうに表情を緩めている。


「六駆くーん! わたしたちだけで777番さん倒せたよぉ! すごいでしょー!!」

「うんうん! 莉子の成長はちゃんと煌気の揺らぎで感じてたよ! 『苺光閃いちごこうせん』のコントロールが上手になったね! 偉い、偉い!!」


「えへへ! 六駆くんに頭撫でられちゃったよぉー!」



 高校生カップルモードに移行する六駆くんと莉子さん。



「本当に逆神くんと小坂さんは仲がいいね! 師弟関係と恋人関係を両立させるとは、逆神くんから学ぶことはまだまだ多いなぁ!」

「加賀美さんが学ぶことはないと思いますにゃー。あの子たちは特別過ぎるんですにゃー」


「みみっ? 雲谷さん、どうしたです?」

「いやー。ははっ。それがね、足を捻っちゃってさー。ふふっ」


「みっ! さっきの戦いの中でです!? 六駆師匠に治療してもらうです!」

「あー、いやいや。たった今なんだよね、ふふっ。段差につまずいた時にやっちゃった! はははっ」


 負傷者ゼロでここまで攻め込んで来た急襲部隊。

 なお、川端、雨宮、久坂は途中参加のためノーカウントとする。

 が、雲谷が戦闘以外のところで普通に怪我をしたため、その記録が途切れる。


「のぉ、修一。ワシ、どうも今回はあんまり役に立てそうにないわい。煌気オーラをごっそり放出させられてしもうたからのぉ。おまけに、張り切って魔王拳なんちゅう懐かしいスタイルで戦ったけぇ。ぶっちゃけ、もう疲れたんじゃけど」

「確かにそうかもしれん! 南雲修一! 久坂剣友を休ませてやってくれ!!」


 その申し出には南雲もすぐに頷いた。

 本来ならば3番を相手にしていたのは自分であり、割と普通にやられて、下手をすると死んでいたかもしれない南雲修一。


 老いてなお頼りになる師匠は充分に働いてくれたと頭を下げる。


「逆神くん。『ゲート』を出してくれるか? さっきの、連結のヤツ。あれを使えば協会本部と直通のルートが作れるんだろう?」

「えー。あれ、結構疲れるんですよねー。連結する門の数に比例して、維持するだけでも煌気オーラ使いますしー。いち、に、さん……。4つめの門じゃないですかーやだー。疲れるんだよなー」



「逆神くん。10万円あげよう」

「ふぅぅぅぅんっ!! 『連結ガッチムゲート』!! 準備できましたよ、南雲さん!!」



 六駆が床から門を生やしたタイミングで、通路の奥の方がわずかに光った。

 それが煌気オーラを含んだ光線だと気付いたのは、久坂と六駆、南雲に加賀美。


「ふぅぅぅんっ! 『青空暖簾スカイガード』!!」

「仕方ないのぉ。これで最後じゃぞ? 『梅花ばいか』! 三十二枚咲き! 『梅吹雪うめふぶき』!!」


 2人の防御スキルで光線を反射させることに成功する。

 敵襲を退けたタイミングでさらに戦力を投入するのは戦いにおいて実に有効。


「じゃあ、久坂さんたちは門の中へどうぞ! 雲谷さんも行きます? ちょっと治療するの面倒なんで!」


「すまんのぉ。誰か、若いもんに出られそうなのがおったら代打を出すけぇ。じゃあの。お主ら、怪我するんじゃないぞ」

「確かにそうかもしれん! 久坂剣友と共にあなたたちの武運を祈っている!!」

「ふふっ、じゃあ俺もお言葉に甘えて! お疲れっしたー! ははっ」


 こうして、久坂、55番、雲谷が戦線を離脱。

 代わりに戦局を動かすのは、アトミルカのサイボーグ01番。


 急襲部隊に休息の時はない。

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