第252話 揺れる各地のダンジョン
各地のダンジョンで同時多発的に発生したアトミルカの武装蜂起。
だが、探索員協会だって普段から有事に対する備えはあった。
その証明の1つが、素早い精鋭部隊の派遣である。
協会では攻略済みのダンジョンに直行で転移できる【
また、特別に警戒すべきダンジョンにはサーベイランスも常駐させている。
「特別」に該当する事案としては、「高価値のイドクロアが採れる」「レアなモンスターが出る」「繋がっている異世界の重要性が高い」等が挙げられる。
今回のアトミルカ発生ダンジョンに多くのサーベイランスがあった事も、そんな理由に起因していた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「山嵐くん! 盾を頼む! 土門さんと自分でまずは力の弱い相手を一掃する! 坂本くんは何もしないで見ていてくれ!!」
「了解しました! 『アダマントウォール』!! 分裂展開!!」
山嵐の土で出来た壁は、6個に分裂して発現する。
これは土門佳純に配慮したもので、彼女のスキル『アイアン・ツインテール』の邪魔をしないような環境を構築して見せる。
「山嵐くん、ありがと! 加賀美さん、ここは私が! 『ストーンバレット』追加!! 『ストロング・ツインテール』!!」
「すまない、土門さん! 先に何人いるか分からない以上、自分の
加賀美隊は加賀美政宗をリーダーに、両脇を土門佳純と山嵐助三郎が支える。
そこに4人のBランク探索員が補助として加わる。
坂本アツシBランク探索員は対抗戦で良くないハッスルをしたため、現在加賀美の信頼度が急落していた。
あの情に厚い加賀美を失望させるとか、なかなかできる事ではない。
「よし! 第1層制圧完了! 続いて潜るぞ! みんな、無理はしないでくれ!!」
「了解です! 俺、頑張ります!!」
「対抗戦で自信のある顔になったわよ、山嵐くん!」
鵜飼ダンジョンは加賀美隊に任せていれば大丈夫そうだと、サーベイランス越しに監察官たちは判断している。
◆◇◆◇◆◇◆◇
さすがは対人戦闘に特化した屋払たち。
「おらぁ! 『ソニックナックル』ぅ!! まだまだ行くんでよろしくぅ!!」
「隊長、前に出過ぎです! 後続の事も考えて下さい!」
こちらは隊長の屋払文哉が突貫していくと言う、加賀美隊とは真逆のスタイル。
だが、そのスピードは流石の一言。
2桁ナンバーを含むアトミルカ構成員をバッタバッタと薙ぎ払っていく。
「リャン! 大丈夫か!?」
「こっちは問題ありません! 柳浦さん! 索敵頼みます!」
「よし来た! 『サーチングアイ』!! 隊長、下の階層に5人います!!」
「任せろい! おらぁぁ!! こっちは準決勝でえらい目に遭ってフラストレーション溜まりまくってんだ! 大けがしたいヤツから掛かって来いや! よろしくぅ!!」
潜伏機動部隊の侵攻速度が早すぎて、後続の捕縛部隊が追いつけない。
そのため外崎が
万が一にも倒した兵の中に回復スキル持ちが潜んでいた場合、挟撃される可能性を排除するためである。
決して外崎が妻のよし子と口論になり心がモニョっているからではない。
潜伏機動部隊は里深ダンジョンの最深部まで到達したのち、異世界の様子を探るためにサーベイランスを異界の門へと送り込んだら次のダンジョンへ移動する手筈になっている。
彼らの能力を協会本部が高く評価している証拠であった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
さらに、頼れる男たちも異世界から帰還を果たしていた。
「もしもーし。どがいしたんじゃ? なんか調子が悪いのぉ」
「じーさんが蹴り飛ばすから壊れたんじゃねぇのか?」
「冷蔵庫に改造しちょるお主にだけは言われとうない。もしもーし」
『はい! すみません、久坂さん! こちらセーラです!!』
久坂剣友と木原久光。
両監察官がタンプユニオールから引き揚げて来ていた。
「おお! 繋がったわい! あののぉ、ワシらアトミルカの残党を処理して来たんじゃがのぉ。現世になんぼか逃がしてしもうたヤツらはどうなったかいのぉ?」
久坂と木原は現世の状況を一切知らない。
そのため、セーラが2人に状況を説明する。
「なんと、そがいなことになっちょるんか? ほいじゃったら、なおのこと面倒増やして申し訳ないのぉ。どれ、まだ手が届いてないダンジョンの座標を教えてくれぇ。ワシらでちぃと黙らせて来よう」
セーラの代わりに、五楼がマイクを手に取った。
『久坂殿、まずは遠征ご苦労様でした。
「じーさん! 後は任せた! 福田ぁ! 代永ダンジョンの座標を【
『そう来ると思ったのでもうしてあります。起動されて結構ですよ』
「うぉぉぉん!! 仕事ができるじゃねぇの、福田ぁ!」と叫んだ木原は、ヒュンと姿を消した。
久坂が「もう木原の小僧が行きおったわい」と五楼に返事をする。
『そうですか。ところで、そちらに話の分かりそうなアトミルカの構成員はいますか? できれば、2桁以上の者がいれば良いのですが』
「こっちにゃ11番がおったんじゃがのぉ。木原の小僧がむちゃくちゃしたせいで、ありゃあ当分喋れりゃあせんで」
木原久光は11番をボコボコにしていた。
ちょっと腕が立ったばっかりに木原の戦闘本能に火を付けてしまい、結果、いつもより余計にボコボコにされていた。
『そうですか。それは残念です』
「おお、でものぉ。2桁なら、話が分かるヤツがおるんじゃ。のぉ、お主!」
「くっ。まさか捕虜になってしまうとは……!」
「55番なんじゃけど、役に立つかのぉ?」
これは五楼にとって思いがけない手土産だった。
2桁ナンバーならば、今回の作戦の全容とまではいかずとも、ある程度の情報を得る事は出来るだろう。
『では、久坂殿はその捕虜を連れて、至急本部に戻ってください』
「い、行きたくないぞ! どうせ拷問するつもりだろう!?」
「55の。ちぃと考えてみぃ? ここで駄々こねても、お主にゃなーんも得るものはありゃあせん。それがじゃ、素直に知っちょることを全部話せば、もしかすると司法取引でお主の罪が軽くなる可能性がある。しかも、日本の飯は美味い。悪い話じゃなかろう?」
「た、確かにそうかもしれん!!」
『久坂殿。あなたのコミュニケーション能力は凄まじいですね』
現状、不意を突かれ後手に回っている探索員協会本部。
だが、久坂剣友の帰還と共に情報ももたらされ、少しずつだが反撃態勢が整いつつあった。
「良かったのぉ。55の。お主が
「確かにそうかもしれん!! 久坂剣友! 貴様との出会いに感謝する!!」
「ひょっひょっ」と笑った久坂は、タンプユニオールの後始末を遠征部隊に任せて【
各地のダンジョンが揺れに揺れている一方で、チーム莉子は。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「うわぁ! お金を生む人たちがこんなにたくさん!! うわぁぁ!!!」
チーム莉子がアトミルカの構成員とまさに今、遭遇戦に突入しようとしていた。
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