第525話 デートで行きたい場所

 もう顔も見たくないし声も聞きたくない為さっさとこの場から消え去ってくれないかとこの馬鹿を追い払おうとしたその時、おそらくターニャであろう声と何か人を思いっきり殴った様な音がしたかと思うと声のした方から牛の獣人が降って来ると見事にこの馬鹿へと直撃し、馬鹿共々目を回し気絶してしまう。


 仲いいのか悪いのか、二人は折り重なるように倒れ込む。


「あ、キンバリーじゃない。どうしたの?」

「やっぱりあの声はターニャだったのね……全く、何をやってんのよアンタは」

「いやだってこの馬鹿が余りにもしつこく求愛? というか一方的な脅迫? してきたからつい殴っちゃいました」


 件の男性を殴り飛ばした女性が私に声をかけるとにこやかに駆け寄って来る。


 やはりというかなんというか先程の声の主はターニャであり、また殴り飛ばしたのもやはりターニャであったようだ。


「殴っちゃいましたってアナタねぇ……」

「だってこのゴミ虫っ! 私の、クロ様の為の胸を揉もうとしたんですよっ!!」

「あーそりゃ殴られても仕方ないわ。ただのセクハラじゃんそれ」

「でしょーっ!!」

「それはそうと今日はどこで何をします?」

「うーん、そうね。何も決めて無いわ。とりあえず一度ギルドには行きたいんだけどそれ以外は全くもって未定ね。因みにターニャは行きたい場所とかある?」

「勝手知ったる地元ですからねー。クロとデートで行きたい場所は数え切れない程あるんですけどねー」

「それに関しては同感ね」


 元々今日は久し振りの地元という事でターニャと遊ぶ約束をしていたのである。


 と言っても遊び慣れた地元であり一緒に遊ぶ人も同じ地元というターニャであるため別段予定などは決めておらず適当にブラブラとするつもりである。


 もちろん相手がクロならばこの街のデートスポットを効率よく巡るためのスケジュールなりシュミレーションは睡眠時間を削ってでも何十回とやるだろう。


 そして先ほどの茶番など元から無かったかと言わんばかりである。


 せっかくのターニャとのお出かけをあいつらの事でイライラなどという感情で費やしたくないため早めに忘れるのが一番である。


 キンバリーと会話し歩きながらギルドへと向かう。


 ちなみに今は仕事をしていないが一応休職扱いである。

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