第523話 蔑んでんのよ

 そう言うと私は目の前の獣人を見据えて溜息をつく。


 私のその反応に目の前の獣人は怒りの表情を隠そうともせず私に殴りかかってくる。


 確かに、並みの女性は腐ってもBランクの冒険者でもある彼には太刀打ち出来ないであろう。


 しかし、今の私からすれば雑魚もいい所である。


 はっきり言って身体の使い方がなっていない、力任せの一撃である。


 動きに無駄が多く同じパワー系のターニャと比べればあまりのも遅く隙がありすぎる為、逆にどの様に反撃又は交わして行こうか悩んでしまう程である。


 そして私は相手の馬鹿力をそのまま利用してこの馬鹿をひっくり返し返し背中かから落ちる様に地面へ叩きつける。


「ぐえっ!? ぐうぅぅぅ……くそっ、たまたまバランス崩したみたいだ……命拾いしたようだが次は無いぞっ!! おらグエェっ!?」


 しかしこの馬鹿は何が起きたのか分かっていない様で頭を振りながら立ち上がりもう一度殴りかかって来たので再度同じ様に相手の力を利用して背中かから地面に叩き落としてやる。


 受け身すら出来ていないこの馬鹿の印象が凄まじい勢いで右肩下がりである。


「ち、畜生……一体どうなってやがるってぇーんだよクソっ!」

「まだ理解できていないの? 単にアンタより強いって事でしょ。寧ろ私に転かされた事にすら気付いて居ないとか情けないを通り抜けて苛立ちすらするわね」

「そんな訳あるかボケぇっ!! この俺様がメス如き、それもどっちつかずの中途半端な奴より弱い訳がねぇだろ常識的に考えてっ!! ……あぁ? 何だよその目は?」

「蔑んでんのよ。 余りにもアンタがどうしようもなくしょうもない人間だから」

「グエェっ!!?」


 そしてこの馬鹿はどうしようもなく自分自信を過大評価し過ぎている様で実際自分自身に起こっている出来事だと言うのに一向に信じようとせず、寧ろ逆に私の「蔑んでいる」という言葉に頭に血が上ってしまったのか再び馬鹿の一つ覚えの如く殴りかかって来たので同じように背中かから叩き落としてやる。


「まだ気づかないの? 私に手加減されているって事に。こんな馬鹿に男としての魅力も感じないし、女性を見下して馬鹿にする様な人は本当キライ。顔も見たくないから出て行ってくれる? 今すぐ」

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