第521話 その表情は夢見る少女そのものである
これで少しはクロ・フリートへ意趣返しが出来たのではないかとデイモンはほくそ笑むのであった。
◇◆◆◇
「ただいまー」
「あら、……き、キンバリーじゃないっ! あ、あなたっ! キンバリーが帰って来ましたよっ!」
「なにっ!? やはりあのじゃじゃ馬娘だけあって追い出されたのかっ!?」
キンバリーは元気よく自分の実家へと入っていく。
現在クロ達は魔術学園がある街ベルホルンへと来ていたので実家があるキンバリー、ターニャ、サラと各々の実家へと足を運ぶ流れである。
ちなみに実家がベルホルンにない者たちは自由行動であるのだが、クロは外部講師の手続きの為学園へと泊まり込みで足を運んでいる。
正直な話をすれば実家よりもクロのそばに居たいというのが本心なのだが、公私混同は良くないと言うことで泣く泣くクロとは別行動である。
その時ターニャが食い下がり、スフィアに止められていたのだが気が利く女でいたいと私は思うので口にはしない。
しかしながらサラが至って冷静というかどこか勝ち誇っているのが気がかりなのだがサラは外部講師補佐的な役割、いわゆる部外者であるため私達と同じく実家へと帰っているはずである。
そしてキンバリーは久しぶりに顔を合わせる両親、妹二人と当たり障りない事を話しつつ久しぶりの家族団らんを満喫しているのだがとりあえず父親は一発鳩尾を殴っといてやった。
口笛を吹きながら「今日はご馳走にしなきゃね」と台所で母親が小気味よい音を立たせ、その横で父親が何故かお腹を抑えながら床を転がり廻り、妹二人と久しぶりの会話に花を咲かせる。
クロと一緒にいたときは実家へ帰ろうとは少しも思わなかったのだが、いざ帰ってみると懐かしい家族団らんの空気になぜ今まで一度も帰ろうと思わなかったのだろうかと思ってしまう。
「お姉ちゃんってお姫様になるんだよねっ!?」
久しぶりの家族団らんの空気を堪能していると次女がそんな事を聞いてくる。
それと共に三女もズズイと寄ってくると二人共目をキラキラしながら問うて来る。
その表情は夢見る少女そのものである。
「一応今は婚約者だけど結婚すればそうなっちゃうかなー」
自分で口にしたものの、自分自身でさえ現実味が無い話だなーとつくづく思えて来る。
今までの出来事が長い長い夢ではないのかとたまに漠然とした不安に押しつぶされそうになる時があるほどである。
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