第495話物理魔術師

 例え物理魔術を100年間修行したとして十年修行した獣人には攻撃力、防御力、身体能力その全てにおいて敵わない。


 それにエルフという種族そのものが打撃に弱く接近戦自体自殺行為とされているのもその理由の一つなのだが、マリアンヌからすればそんな欠点など当たらなければ問題ない。


 そんな、今までバカにしてきたであろう存在である物理魔術師のわたくしに自慢の、選りすぐられたハイエルフの騎士達が倒される様はハイエルフの王にとってまさに悪夢そのものに違いない。


 しかし、だからこそわたくしはこの物理魔術師として育ててくださったクロ様に感謝と敬意を抱く。


 確かに、獣人と正面切って馬鹿正直に戦えば間違いなく負けるであろう。


 しかし物理といえど魔術師である。


 当然攻撃の一つ一つには魔力が込められており当然それは打撃であると同時に魔術でもある。

 その打撃は扱える属性を付与でき相手の弱点をつく事ができる上にエルフ特有の獣人には無いしなやかさと唯一凌駕出来るスピードで差別化を図る事が出来るのである。


 同じ物理といえどもはや別物であろう。


 そしてこの様に相手の意識外、想像すらしなかった戦法により意表を突いた攻撃は相手を錯乱させこの様に一気にかたをつける事が可能である。


 そもそも圧倒的に数の少ないハイエルフの物理魔術師対策をしている者はまずいない。


「物理魔術師は強いでしょう。同じ物理でも獣人との差別化もしっかりとしてますのよ?それこそ絡め手で獣人と互角に戦える程には」

「き、貴様……貴様だけは許しはしないっ! この俺に恥をかかせやがってっ!!」

「だからなんなんですの? そう言われてはいそうですかとわたくしが首を差し出すと言うとでもお思いですの?」


 周囲を見渡せば王自慢のハイエルフの騎士達は皆床に倒れうめき声を上げており、立っている者はいない。


 この部屋では今、わたくしとお姉ちゃんに三人のハイエルフとエルフ、そして王一人しかいないのだ。


 ハイエルフの騎士の戦力からしてあの王も強いとは言えないでしょうし、どう考えても王にどうこう出来るものとは到底考えられ──


「かはっ!?」


 いきなり横腹に強烈な一撃を食らい、その衝撃で吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。

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