第477話結婚できないという事
「そんなんじゃクロの子を一番に産むのは厳しいわよっ!?私がいの一番に産んで見せるんだからねっ!!」
「やだぁ……っ、私が一番最初に産むぅー……っうぅ」
ある意味で赤子をあやすよりも面倒くさいであろうこの、泣きだす大の大人をキンバリーが優しく喝を入れて来る。
しかし、一番最初にクロの子供を産むのは自分であるとここに集まっている婚約者全員が思っている事である為、私も負けじと反論する。
ここで反論できなければ一番最初なんて夢のまた夢であろう。
結局譲ってしまい一番最後になってしまうのが目に見えてしまうのでその想像を振り払う。
「あら、一番最初はどう足掻こうがもう無理よ?だってもうお兄ちゃんの子供はいるんだから」
「「「………え?どういう事?」」」
アーシェ・ヘルミオネさんが放った言葉で世界が止まった気がした。
先程の微笑ましい光景など無かったかの如く静まり返る室内。
それ程までに強烈な一言。
飾ってある花を生けている花瓶からピシリと音が聴こえてくる。
既に、クロに………子供がいるって……聞き間違いなんじゃ……。
「あれ?……みんな知らなかったの?ほら、これがお兄ちゃんの娘でこれが奥さん。いわゆる第一夫人っていうのかな?」
そう言うとアーシェ・ヘルミオネさんは【スマホ】という魔道具を取り出すと可愛らしい人間族の小さな女の子と、同じく人間族の美人な黒髪の女性を写しだすと私達に見せてくる。
な、何ぞこれ……何ぞこれ……。
女の子の顔と女性の顔を見れば嫌でも分かる。
とても幸せであると。
「……この世界にはいないけどね」
その言葉の意味を理解して行くにつれ先程まで感じていた怒りや嫉妬と言った感情は一気に霧散してしまう。
この世界にはいないという事はもう会えない場所に旅立ってしまったという事である。
クロの婚約者に魔族が居ないのは今は亡き奥さんと娘さんの面影を無意識に求めていたのかもしれないと想像してしまう。
そしてアーシェ・ヘルミオネさんは語ってくれた。
奥さんと娘さんがいる事を知らなかったとは言え自分がクロを追い詰めてしまったという事、そしてクロは奥さんと娘さんを守る為に自分を犠牲にしてしまった事。
だから自分はクロとは結婚できないという事。
次はクロに出来た奥さんと子供達を守って行くと誓った事。
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