第471話取り返しのつかないミス
危うく私は取り返しのつかないミスをするところであった。
そして私はボナに合わせてデモンズゲートを開くとクロ様の家臣でありメイドでもある方達がいる館へと運び込んだ。
頭の中はクロ様でいっぱいで胸は息苦しいほど染め付けられてクロ様意外何も考えられない状況にも関わらずその間ちゃんと目的の場所であるクロ様の部屋へ運び混めた事が意外である。
「クロ様っ、クロ様っ、クロ様っ、クロ様クロ様クロ様クロ様クロ様クロ様っ」
不安を搔き消すかの様に何回も何回も何回も私の主人であり愛する愛しい人の名を口にする。
何かしていないと不安であるが名前を口にする事しか思い浮かばない自分が腹立たしい。
何の為の回復要員だ。
ゼロにいくら数字をかけようがゼロであると言わんばかりにクロ様の体力はゼロのまま。
たった一だけで良い。
子供だってそんぐらい回復出来る回復量では無いか。
「な、何をやっているですかっ!?それでも勇者である私を子供の様にあしらったクロ・フリートのヒーラーですか!!」
「ふえ……あ、あなたは……」
そんな私に叱咤する声が飛ぶ。
声の方を振り向けば走って来たのであろう、息を切らせて力強く睨む敵国の勇者の姿が目に入って来る。
「蘇生と回復は似て非なる物だというのは初歩中の初歩でしょうっ!!良いから変わりなさいっ!!」
「な、何で……」
何で敵である貴女が……。
そう疑問に思ったが必死の形相で魔方陣を展開して行く勇者であるミズキを見ていると、それを声に出来なかった。
しかし、声に出来なかったその言葉はミズキにしっかりと届いていた。
「当たり前です! この方は私に真の平和というものを見せて頂きました! ここの館のメイドは人族も魔族も獣人も分け隔てなく皆クロ・フリートを慕い、尊敬し、敬愛し、そして皆心で通じ合う仲間でありここで暮らした日々は当然の様に人種間で争いなどありませんでした!」
そう叫ぶ様に言いながらミズキは溢れ出る涙をこらえようとも拭おうともせずひたすら魔法陣に魔力を流し続ける。
「確かに、私の世界では魔族に多くの笑顔を奪われて来ました! しかし、それは同時に私も魔族から笑顔を奪っていたという事から目を背けていたのだとっ! 私はっ……私は、もう目を逸らさない!逸らしたくないっ!! 死ぬんじゃ無いこのクソ魔族!!」
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