第456話譲るつもりなど当分無い
それ以降メイドは真っ赤になってしまった顔が元の顔色に戻るまで俯いてしまうのだが、やはりその事にクロは気付きはしない。
そしてクロはデモンズゲートを開き「ウィンディーネの報告が少し気になるから少し出かけて来る。夕方までには多分戻ると思う」と言うとゲートの向こう側へと消えて行った。
◇◆◆◇
「マリ姉さんどうだった!? 今日のクロ様は!!」
「もうっ最高にっかっこよかたわ!!」
クロ・フリート様が家臣であるウィンディーネ様の元に向かわれた後の昼の食堂では一人の、赤髪をボブカットに切られたメイドが興味深々と言った表情を隠さずに、眼鏡をかけ長い黒髪をポニーテールに縛っているメイドに感想を聞き出す。
それにマリ姉さんと呼ばれた女性はまるで夢見る少女の様に答え、その答えに周りにいるメイド達から黄色い声が上がる。
最早そこにクロ・フリートを魔族と怖がる者は皆無である。
それもその筈でここのメイド達の殆どが田舎からその容姿故に無理矢理連れて来られた者達ばかりなのである。
都心ならばいざ知らず田舎の者の殆どが生粋の帝都民である可能性は低く、また高い税金により貧乏暮しを余儀無くされた者達からすれば前王よりもクロ・フリート様の方が断然好感が持てるというものである。
「クロ様曰くジャケットというデザインの上着を初めてみた時は襟が折れて胸元まで行くデザインを変なデザインだと思っていたんだけど、いざクロ様が着ている姿を見目にすればすっごく似合っているのっ!」
その瞬間マリに羨望の眼差しが四方八方から向けられる、「マリ姉だけずるい」という声があちこちで聞こえて来る。
ずるいと言われてもマリからすればこの【クロ・フリート様の身の周りの世話係担当】という役職を初め皆んな怖がって誰もやりたがらない結果、痺れを切らしたマリが崖から飛び降りる覚悟でやる事に決めたのである。
後になって変わって欲しいと言われても譲るつもりなど当分無い。
しかしながらこのまま独占していると後々厄介な事になりそうなのでいずれは役職を交代制にしてもらえるようにクロ様に相談してみるつもりではある。
それこそ最初の頃はクロ様が魔族だと知り他の皆んな同様に私も恐怖を抱いていたのだが田舎に帰っても居場所など無くここで働かなければスラムの住民になっていた可能性が高かっただろう。
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