第417話ここまで無知だとは思わなかった

 緋色亜竜は確かに強い。


 だがいくら強くても数や強者を駆使すれば亜種級だろと親級だろうと人間でも討伐討伐できる存在である。


 ゆえにいくら強くても亜竜であり、亜竜というからには元となる存在がいる。


 それが緋色皇竜である。


 この緋色皇竜とは人語すら喋る個体もいると言われる赤竜、青竜、黄竜、黒竜、白竜と略される伝説級の竜種よりかは若干劣るもののそれらより弱い存在は居ない種の一種である。


 その種族の中でも緋色亜竜は一番好戦的で、一度怒らせるとその原因を全て消し去るまでどこまでも追いかける程執着心も強い種とされている。


 即ち、緋色皇竜が俺たちに気付き、一度こちらへ視線を向けるという事は俺たちも消し去る存在に入ったと言う事だろう。


『良いですか?私達が一度手本であのトカゲを倒してみせますので良く見て、そしてクロ様から頂いたこのタブレットと言う道具を使い動画撮影もしていてください。その後分らない箇所などありましたら撮った動画を参考に口頭で説明いたします』

『『『分りましたっ!』』』


 俺たちのパーティーが死を覚悟し、それでもなお頭を回転させ生き残る方法を模索していた時、またも聞き耳スキルがとんでもない内容の会話を拾ってきた。


 先ほど後輩冒険者に緋色亜竜の亜種を倒させた女性パーティーの内、先ほどの戦闘に参加していなかった先輩であろう三人の女性が何を思ったのかあの緋色皇竜を討伐すると言い出したのである。


 しかも先ほど緋色亜竜の亜種を討伐した三人の女性に手本としてである。


 もはや人間の相手にできる存在じゃない緋色皇竜相手にたった三人で討伐すると言ってる時点で無知にもほどがある。


 無知だ無知だとは思ってはいたのだがここまで無知だとは思わなかった。


 おそらく先ほどの三人が緋色亜竜を簡単に倒せてしまっていたのを見て、緋色亜竜よりも一回り小さな緋色皇竜を自分たちでも討伐できると勘違いしたのであろう。


しかし、緋色亜竜を討伐出来るほどの実力を持つ後輩三人が緋色皇竜の強さを知らないとは思えないのである。


にも関わらずパーティーの先輩冒険者であろう三人があの緋色皇竜を倒すと疑わない、それでいて尊敬の眼差しを先輩冒険者に向けている事が腑に落ちないでいる。

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