第398話そのとーりです!!
確かにそばかすこそあるものの、逆にそれが今の自分の顔を引き立てるアクセサリーの一部の様に思えてしまう程、今の自分は自分であり自分では無くなっていた。
男性のこぼした「ヴィジュアル系好きがこんな所で役に立つとは……学生時代バンドやってて良かった」と言う言葉は良く分からないのだけれど、兎に角物凄く綺麗な自分が男性の持つ手鏡には映し出されていた。
「さて、お嬢様?」
「なっ、何っすっ!?」
「私、クロとあそこのレストランに行きませんか?」
そして私は恭しく跪き、差し出して来る男性の手を取り「は、はいっす!クロさん!」と元気良く返事をするのであった。
レストラン系列としては珍しく庶民食堂件居酒屋としても人気である『ワイバーンの宴亭』は今日も客入りは上々である。
ただ今日はいつもと違い静かな時間が変な緊張感と共に流れていた。
普段なら冒険者や傭兵、兵隊などが集まる為ガヤガヤとうるさいのが常なのだが今日は料理を作る音だけしか聞こえない。
それもこれもこの店の常連客であるミランダと思しきとんでもない美女、いや美姫が入って来てからというもの店内は物音一つしなくなった。
そしてそれをみた店主は前髪の隙間からたまに見えるそばかすが顔を隠す原因だと思っていたのだが、何故ミランダがいつも前髪で顔を隠しているのかもう何年もまともに見ていないミランダの素顔を見て間違った方向に理解してしまうのも仕方ない事だろう。
幸か不幸か数年間素顔を隠して来たからこその効果であった。
「イノシシのごちゃ煮です」
店員が運んで来た具材の多いスープをミランダは小さな口で咀嚼し食べ始める。
しかし緊張で味は分からない上に飲み込めない。
自分は好きな味なのだが、目の前男性はこのスープを食べてどう思うのだろうか?美味しいと思ってくれたら良いなと思う。
しかし逆に万が一口に合わなかったらと思うと気が気ではない。
「みぃーらぁーんだー!! 慰めに来たよーっ!! どうせミランダの事だからここを待ち合わせ場所にしてたんでしょーっ!?」
「今日は朝まで飲むわよー!! お姉さんが慰めてやるから飲んで嫌な事なんて全部忘れて次の恋行くわよー!!」
「あんたは飲む口実が欲しいだけでしょうが」
「そのとーりです!!」
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