第373話服装も和風にするか

「長旅ご苦労様です」


 帝国から出発して一週間かけてフランボワーズはようやく目的地であるグルトニア王都東の果てにある森林地帯のど真ん中、そこに建てられた豪邸に到着した。


 そして今まで見た事もない木製のシックであるが豪華な門構えをした入り口が鈍い音を立てて開くと中から複数のこれまた見た事もない布を羽織っただけの様にも見える服装をしつつもこの屋敷のメイドである事が一目で伺える服装の女性が複数名横一列に出迎えており、その中の一人が代表して労いの言葉をかけてくる。


「あら、見慣れない服装だけど一応メイドでよろしのでして?」

「厳密には違いますがメイドという認識で間違いありません。また服装ですが、我がご主人様が『せっかく門構えや屋敷を和風にしたんだから服装も和風にするか』と仰ったので和風に揃えております。」

「和風というものがどの文化を指しているのか分からないのですけれども、今までに無い雰囲気で良いのではなくて?」


 メイドの受け答えに対して貴族の娘然とした態度で対応するフランボワーズなのだがメイドだと言った彼女達が中には武器や防具を装備している者も見える。


 服装だけではなくその不自然さからもフランボワーズはメイドであるかどうかの確認をしたのだが、なぜ一介のメイドであるにもかかわらず槍や弓や長剣を装備する必要性があるのか分からないままである。


「失礼します」

「っひ!?」

「すみません、後ろにブラックタイガーの親が襲いかかっているのが見えましたので失礼は承知で始末させて頂きました」


 そんな中でメイド長であろう先程社交辞令程度の会話をしていた女性がフランボワーズの右頬すれすれに無詠唱で発動させた雷系統であろう魔術を放ち、メイドの説明を聞き恐る恐る後ろを振り向けばそこには焼け焦げた見た事もない巨躯のブラックタイガーが横たわっていた。


「この辺りは少し物騒ですのでメイドも武装しているのです」


 そしてわたくしが思った疑問を先程のメイドがその答えを言い疑問が氷解する。


 しかしあれ程のブラックタイガーが存在する場所を少し程度の認識でしか無いこのメイド達は少し…いや、かなり一般常識からかけ離れた戦闘能力を持っているのだろう事が先程の一撃で垣間見える。

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