第354話初老が佇んでいた

「そうね。 聞けば六十代程の外見だと言うのでまず魔族でしょう。 人間ならばとっくに引退している年齢よね。 魔族と考えた方がしっくり来るわね」

「ちょっと? 私は一体何の病気なんですかね? お二人さん? ねえ!?」


 そして二人は私を無視してこれからの事について、主に戦略や敵戦力の分析を始める。


 しかしこれは考え方によってはイジメでは無いだろうか?


 二人に限ってそんな事は無いと思うのだが若干の不安は感じてしまうのは仕方の無い事だろう。


「もうそんな顔しないで。 私達が悪かったから」

「全く、勇者と言うよりも世話のかかる妹と言った方がよっぽどミズキらしいですね」


 今からたった三人でグルトニア王国に戦争を仕掛けに行くというのに三人の会話に緊張感のかけらも感じられず、普段通りの日常が繰り広げられているあたりミズキのパーティーとして組んでいるだけの実力とそれに伴う実績にプライド、そして精神的な図太さがあるのだろう。


 それは目の前に黒の燕尾服を着込み白のシャツに黒いネクタイを締め、白髪が混じった少し長めの黒髪をオールバックに整えている高級なのが一目で分かるモノクルをかけた初老が佇んでいたのが見えていたとしても変わる事は無い。


「スーワラ聖教国から宣戦布告の一報をお受けしましたのでお待ちしておりました。 しかし軍で来るかと思いましたがまさか宣戦布告の内容通りあなた方三人で本当に来るとは思いませんでした」


 それは少し離れ対面している執事も同じらしく、この場面だけを見れば戦争開戦しているとは誰も思えないであろう。


「人間の皮を被った化け物たかだか一匹を始末し終えた後、お望み通り軍を連れて来ましょう。 そして魔族の手から故グルトニア王国を救い出し、住民を救出させて頂きます」

「誠に申し訳ないのですがその様な行為を容認するつもりはさらさら無いのでこのままおかえり下さい」

「ガーネット!? クッ!」

「炎よ我が前に立ち塞がる敵を貫きたまへ! 【フレイムランス】!!」


 目の前の執事に対しミズキは不快感を隠しもせず思った事を目の前の執事に告げると、執事はそれを拒否し次の瞬間には隣にいたガーネットが吹き飛ばされ、代わりに執事がガーネットが今までいた場所に立っていた。

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