第352話勇者として召喚されたアマミヤ・ミズキ

 未だ平行線をたどる会話が部屋を満たしている中、気が付けば会話は無くなり皆私を見つめていた。


「勇者として召喚されたアマミヤ・ミズキ様はどうお考えですか?」


  そう問いかけられると周りは期待に満ちた視線を私に向けて来る。


  結局この人達の答えは初めから決まっていたのであろう事が伺える。


「そうですね、この世界では脅威であろうと私からすれば脅威では無いかと」


 その一言でグルドニア王国へ軍を率いてもう一度攻める事が決まった。


 そして思う。


 この世界はつくづく全てにおいて未熟であると。


「で、あるならば早速準備をしよう。 幸いにも先の戦で集めた食料や兵は何とかここブルックリンに数は揃っているところだからな」

「しかし各部隊を統率できる者がおらぬでは無いか。 揃えた所で烏合の集では無駄に兵を消費するだけであろう。 もう少し人材が揃うまで待つ方が合理的であろう」

「それでは向こうもそれなりに戦力を揃えるでしょう。 ならば奇襲を仕掛ける方が合理的では無いのか? それに戦は数が者を言うではないか」

「それで数を揃えてたった一人に負けた事実を無視するのは愚策である」

「何のためのミズキ様の参戦だ? そのにわかには信じられない化け物をミズキ様に当てれば良いではないか」

「いえ、兵は要りません」


 結局の所、目指す所は同じなのだろうがその道筋の考え方が真逆なのかやはり話は平行線を辿り始めたのだが、そこでミズキが第三の案を提示する。


「向こうは少数なのでしょう? ならば統率の取れない兵士は邪魔でしかないです。 ならば私と私と組むパーティーだけで十分でしょう」


 向こうは現在敗戦及び新国家への移行による内政の停滞状態では兵士を集めるほどの力は無く、また集めたとしても士気はほぼ無いに近い状態では集めるだけ無駄であろう。


 こちらも似たような状態であるならば私自ら出向いた方が経済的にも良い事なのは間違いないだろう。


「………よ、よろしいのですか?」

「向こうはあのアーシェ・ヘルミオネを倒した魔王の配下であるぞ?」

「大丈夫です。 見事倒して見せましょう。 安心して結果を待っていて下さい」




◇◆◆◇




「といった次第です」

「ふーん、バカだバカだとは思っていたのですがバカでは無く大バカ者でしたか」

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