第351話怒号が飛び交い始める

 結果、規模が規模だけにサラも首を縦に振るしか無くスフィア・エドワーズ姫とクロが婚約した事を少し後ろで聞き入っていたフレイムは、クロの元へ猛アタックをかましに来ていた。


  その姿にもはや余裕は無く涙と鼻水で顔は濡れ、嗚咽まじりの恫喝に近い求婚をされもはやこれは一種の恐喝なのでは?と思ってしまうのも仕方のない事であろう。


  そしてその必死な気持ちが痛い程分かってしまう、婚期を逃し少なからず焦っていたであろうサラ、ターニャそしてスフィアは形振り身振り構わず求婚しているフレイムの姿に見てられずついに心折れ、フレイムの求婚をクロの意思を交えず承諾するのであった。



◇◆◆◇



「隣国であるグルドニア王国が魔族に支配されるだけではなく新国家として建国する事を先日発表しております。 グルドニアには魔獣の氾濫区域の一つを食い止める砦都市フイルド、また海外国からの貿易拠点の一つである都市サーゲルがあります。 その二つを魔族の手に握られるのは我々人類にとって無視できない脅威になる事は間違いありません」

「しかし一度兵を向けたが歴史的な大敗をしたばかりであろう。 もう一度恥をかきに兵を向けると言うのか?」


 スーワラ聖教国に建てられた白銀に輝く巨塔の最上部では今国の中枢達が緊迫した空気の中話し合いをしていた。


 しかし話は纏まらず同じ問答を繰り返すだけの会話を果たして話し合いというのだろうか?


 今でこそ両派閥声を荒げていないのだが怒号が飛び交い始めるのも時間の問題であろう事は両派閥の表情を見れば明らかである。


「何を緩い事を言っているんだ? 前回は捕虜数百名奪われただけで死者すら出ていないではないか。 だというのにおめおめと退陣した事が虎視眈々と我が国の首元を狙っている他国や従属国にバレれば複数国に攻められ国が分裂しかねない程の失態であるぞ? であるならば我が国の力を示す為にもう一度攻め、グルドニア王国を従属国にしなければ成らないのは正しい選択であり英断である事は間違いない」

「それは勝利してこその英断であろう。 人の口に戸は立てられぬ様に前の失態は既に他国へ流れているだろう。 ここでさらなる失態を犯した時のリスクを考えれば余りにも大き過ぎる。 更に捕虜された人物は兵を指揮する権利を持つ者ばかりであった。 分かるか? 死者を出さず関係ない役職の兵を巻き込まず数万もの兵を退陣にさせているのだぞ。 それ程の者である。 殺そうと思えば一人で全兵士を殺す事も出来たのではないかと考えるのが普通であろう。 攻めるには余りにも次元が違い過ぎると言っているのだよ」

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