第323話私は未だ処女なのだぞ!
フレイムの問いに待ってましたと言わんばかりに食いつくサラは、今まで喋りたくて仕方なかったのだろう。指にはめた指輪について怒涛のごとく喋りだす。
指輪を見つめるサラの幸せそうな表情から「そうなんだろうな」と思っていたフレイムは指輪云々にはやっぱり程度にしか思わなかったのだが、初夜の辺りからサラがちょっと何言っているのかわからない。
え? サラって……え? 処女ではないのか? いやまさか……そんな事が……いやだって……え?
「私は未だ処女なのだぞ! なのにサラだけ先に彼氏作って婚約して愛し合うとか……卑怯だろうが! この裏切り者おおおおおぉぉぉっ!!」
「で、クロったら可愛くて可愛くて、あんなに強いのに中性的な見た目のギャップがもう虐めたくなるのだけれども、その上で逆に虐められ…………あれ? フレイムどこ行ったのですか? もう、まだまだ喋り足りないではないですか。 っと、それよりもターニャの野郎を探しだして連行して尋問しないと」
いつの間にか消えていたフレイムに愚痴りつつも本来の目的を思い出したサラは般若の様な表情で練り歩き始めるのであった。
「グス……ううっ……すんっ……うえっ」
もう死にたい。
でも死ぬ勇気も無く砦の端まで一気に走ると剥き出しになっている岩の隅で膝を抱えて泣く事しかできない。
そんな自分に余計に虚しくなりまた涙が溢れて来る。
もう二十歳である。
行き遅れという事実から目を逸らしてきたのだがそれでも最近幸せそうな男女、特に子連れの親子を見ると胸が締め付けられ苦しくなる。
そんな私にとって親友であるサラが処女ではないという事実は心臓が杭で打ち抜かれたかと思う程の苦しみを生み出し私を襲いだす。
なんだかんだでサラという存在は行き遅れという事実に潰されそうな私の唯一の心の支えだったのだ。
一人ではないというのはそれだけ心強くなれた。
「そんな所で一人泣いて、何があったんだ?」
「……ふえ?」
「あーもう涙と鼻水で綺麗な顔が台無しだぞ」
「……あうあう」
見つかるはずがない私の秘密スポットに誰かが優しい声で語りかけ、私の頭を優しく撫でると鼻水と涙をハンカチで拭いてくれる。
しかしかまさか人が来ると思っていなかった私は事の事実に頭が追いつかず混乱しっぱなしである。
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