第300話トリプルSランカーという肩書き
それこそ防御に徹していたとしても身体が勝手に反応し、動くぐらいには。
「下段弱・立ち中・立ち強・足払い・下段弱・立ち中・立ち強・ジャンプキャンセル・空中弱・空中中・空中中・ジャンプキャンセル・空中中・空中強・スキル【打ち落とし】」
「カハッ!?」
そしてクロは空中から地面へフレイムを打ち落とした後、現在装備している刀の切っ先をフレイムの首筋に立てる。
「………俺の反則負けだな…」
そう言うとクロは全装備をストレージに保管し、やけに静かになっている広場中心からサラ達のいる方へ帰って行く。
◆
何時間そうしていただろうか。
クロとの決闘の後、日が沈んでもフレイムはクロにより地面に叩き付けられた場所で仰向けになっていた。
目に写るは輝く星に二つの月。 その星々に照らされた雲が緩やかに流れて行く。
「風邪ひきますよ?」
「………ああ。 そうかもな」
そんな私の隣にサラが同じく寝転び、心配気に話しかけてくる。
しかしその事が逆に私を更に惨めにさせるとも知らずに。
「負けて打ちひしがれてる私を笑いに来たのか?」
「そんなわけないじゃない。 心配して来たに決まってるでしょう」
笑いに来たのではない事は誰よりも私が知っている。
だが、その優しさが今は辛く感じてしまう。
あの決闘の敗因はどう見ても自分にあり、しかも手加減までされての惨敗である。
悔しくて堪らない。
「どうせあなたのことです。 実際には勝負に勝っているのに私の夫に惨敗したと気落ちしているのでしょう?」
「ああそうだよ。 勝負に勝ったといってもあのハンデは向こうが勝手に作ったハンデだ。 私は認めたわけじゃない」
そう。
あのハンデを私は了承していないのだ。
その事から相手は私の力量を看破しており、逆に私は相手の事を何も見えていなかった事が伺えてくる。
トリプルSランカーという肩書きも誇りも何もかもが馬鹿らしく思えて来ると、もう泣き枯れたと思った涙がまた流れて来る。
「夫の国では柔よく剛を制すという言葉があるそうよ」
「………」
「意味は相手の力を巧みに利用し小さき者でも大きな者を豪快に投げ飛ばす事が出来るという意味らしいですね。 あの時夫はまさにこの言葉通り、貴方の力を巧く利用して避けていました。」
静かに泣き出した私にサラは慰めるでもなく静かに語りかけてくるれるも私は相槌さえ打てず、ただ嗚咽を堪えることしかできない。
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