第294話本当、素直じゃないのですから

「なるほど、炎の柱を同時に三柱作り出す事により人工的に火災旋風を作り出したのか。 つくづくこの世界はリアルなのだと思わされるな」

「感心している所悪いのですが、遠目から見てもフレイム・フィアンマは攻めあぐねているように見えます。 助けに行かないのですか?」


 この世界はゲームでは無い。


 故に起きる現象を目の当たりにし、未だどうしてもゲーム感覚で魔術やスキルを扱おうとする固定概念があるクロは目の前の奇跡に感心しきっているとサラが横から話しかけてくる。


 確かに、フレイム・フィアンマが作り出した火災旋風はグリフォンに接触した部分から炎が消えていっているのである。


 グリフォンは風を操っているのではなく空気そのものを操っている証拠であろうそれはフレイム・フィアンマらからすれば炎が効かない事を意味し、最悪の相手であろう事は間違いないであろう。


「確かに、フレイム・フィアンマの方が分が悪そうだな。 多分グリフォンは自分の周りに真空の壁を作っているのだろうな……だが、助けに行きたいのは山々なのだがフレイム・フィアンマ直々の命令を受けているため戦場に赴く事ができない」


 フレイム・フィアンマの魔術を分析したクロは次に戦況とグリフォンが炎を防げている理由を分析し始めながらサラに助太刀はしない事を告げる。


「なら私が行っても良いですか?」


 しかしその内容はあくまで自分は行けないと言っている為自分が行くと言うとクロはクツクツと笑い「ああ、あのヒス女を助けてやれ」と返して来る。


「本当、素直じゃないのですから」


 なんだかんだ言いつつバフをかけてくれるクロにサラはそう答えると「ふふ」と笑い、笑みを浮かべると行って来ますねとまるで遠足に行くかの様にグリフォンの元へ駆けていく。


「苦戦しているようですね」

「……なんで来た? あの鷲擬きなど私一人で十分だ」


 それは嘘である。


 このグリフォンに敵わないであろう事は闘っている私が一番分かっている。だからと言って負けを認めたわけではなく、獣相手なのだ。いずれ隙は生まれ、そこから勝機を切り開いていくつもりだった。


「嘘おっしゃい。 今のあなたは一か八かの賭けに出た時と同じ顔をしているんですから。 全く、そんなんだから賭け事に弱いんですよ」

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