第261話見えない翼

「【竜尾の一振り】」

「ぐうぅ……っ!」


 クルムは【竜肌の壁】を使う暇さえ与えられず防御体勢は取るものの高威力の技を受けそのまま闘技場の壁まで吹き飛ばされる。


「【龍鳴一閃】」


 そこへ更にレニアは先程と同じスキルを少し遅れて叩き込み着地、間髪入れずに突進する。


 そのスピードはまるでレニア自身が槍のように見えてしまう程の速さで疾る。


「クルム一人で闘ってんじゃあないんだよこの三下ぁあ!!光魔術段位三【リフレクター】」

「【刺突】」

「【横薙ぎ】」


 クルム側の後衛が光魔術段位三【リフレクター】を唱え光の壁を作りレニアがそこへスキル【刺突】を放つとクルム側の中衛がスキル【横薙ぎ】で無防備になっているであろうレニアに向け放つ。


 しかしその【横薙ぎ】はレニアに当たらず、何故か空中にいるレニアが空を駆けて迫って来るではないか。


 まるでレニアに見えない翼があるのではないかと思いたいぐらいである。


 レニアがやった事と言えばスキル発動中にジャンプを意識しているだけなのだが、これによりレニアはスキル撃ち終わりには空中にいるのである。


 この原理を理解するのは大変だったのだが一度分かれば後は簡単に使用出来る上、空中ダッシュ及び空中ジャンプまで覚えているレニア達はスキル終わりに空中へ、そこから空中ダッシュで一気に距離を詰め【スラッシュ】をガード中の相手へ中段攻撃をガードさせ、そこで崩せれば良し。崩せなくても着地で下段か投げ技か中段攻撃かの三択で翻弄出来るのである。


 更に今のレニアはユーコにより様々なバフが掛けられている状態である為本来二段ジャンプが限界なレニアなのだが更にもう一段ジャンプ出来る状態である。


 【スラッシュ】をガード中の相手に空中ダッシュで近付いた時、わざと攻撃をせずにもう一度空中ダッシュをし相手を捲りガードを崩す選択肢も増える為、レニアはスキル終わりに切れるカードの幅が増え読み合いでの勝率を上げる事ができるこの戦法を相手を崩す常套手段としてすでに定着していたりする。


 とはいえこれを覚えるにあたりお師匠様の「本来のコマンド入力の最後に斜め上か上コマンド入力を追加するイメージでスキルを撃ち終われば良い。【スラッシュ】の場合だとそれをする事で本来地上でしか撃てないこの技を空中で発動する事が出来る」という意味は未だにあまり理解はできていないのだが、要は空中で【スラッシュ】を撃つというイメージではなく地上で【スラッシュ】を撃ち空中へズレるイメージで撃つと地上で撃ったはずの【スラッシュ】が低空ではあるものの空中で撃つ事が出来たのである。



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