第242話クロの婚約者
「ええ、そうです。私はクロ無しでは生きて行けない身体にされてしまいましたので……彼女程度のサラとは違い私は婚約者ですし」
「私もクロの婚約者なのだが、婚約者と言いながらクロを信じ切る事が出来なかった事を悔やんでいる……だから今回は婚約者としてクロに謝りたいんだ…っ」
そんな二人はクロとの関係性では自分達の方が上だと言いたげに「婚約者」という言葉を強調してサラの問いに返す。
その言葉に一瞬サラも含め周りは信じられないとでも言いたげな、声にならない声を出し驚愕するのだが幾つかおかしな点にサラは気付くと冷静さを取り戻す為に深呼吸一つ、意識をクリアにする。
「婚約者だという割にはクロからその様な事は聞いていない上に、半年間も婚約者がクロに音沙汰無しでは信憑性に乏しいのではないのですか。証拠があるなら別ですが……」
そう、おかしな点とはクロから婚約者について聞かされていない事と、婚約者だと言いつつ半年間も音沙汰無しだったという事である。
これだけで見れば彼女達がクロの婚約者だと言うのは何かしらの事情が無い限りは無理があるだろう。
「証拠なら」
「あ、あるぞ…っ!」
しかしミイアとメアはサラのいう通り証拠はあると言うといきなり彼女達が持っている片刃剣と見たこともない魔杖をサラに向け、辺りは緊張感が走る。
◇◆◆◇
「貴様……何者だ。何故俺の名前を知っている」
そんな少女に抱いた感情はただただ純粋に少女が誰であるかという事であり、自然と口が開き少女へ問いかける。
だと言うのに何故か自分は目の前の少女がルル・エストワレーゼであると確信めいたものを感じている部分もある。
頭では彼女がルルでは無いと分かっていても目の前の少女が醸し出す雰囲気や一挙手一投足がルルであると言ってくるのである。
「あら、貴方は私の顔を忘れたのかしら?………確かに、今の私の姿でしたら気付かないのも仕方ないのかもしれないわね」
そう言うと目の前の少女は少し寂しげな表情を浮かべると門の向こう側へ行こうとし、しかしそこで何かを思い出したかのように足を止めると俺の方へ視線を向ける。
その顔には既に寂しさは伺えられず代わりに何かを懐かしむ様な表情をしていた。
「そうそう、もしお父さんに勝ちたいのなら、お父さんに対してスキルは使わない事ね、ロッド」
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