第233話聞いたこともないスキル

「でさ、お前、今の状況わかってんの?」

「その言葉をそっくりそのままお前に返そう」


 そういうとクロ・フリートは疾走し俺へ細い片刃剣を何もない空間から取り出すとその片刃剣を俺へと打ち下ろす。


 その太刀筋は明らかに素人のそれでありクロ・フリートの自信を裏付けるものではない。


 そして俺はクロ・フリートの余裕は単なるハッタリだと考え、反撃しようとするが、身体が重く硬直した様な感覚に陥る。


 そしてその1秒にも満たない拘束から解放されると、既にクロ・フリートは技の構えを取っており、反撃は諦め防御に集中する。


「抜刀スキル・一ノ太刀、納刀、居合、ニノ太刀、納刀、抜刀、三ノ太刀、納刀」


 そこから放たれるクロ・フリートの聞いたこともないスキルを続けざまに防御してゆく。


 そのスキルはダメージこそ少なそうなのだが恐ろしく速い。


 更に彼が納刀と言い武器を鞘に納める度に言いようもない不安が増して行くが、クロ・フリートは三ノ太刀後武器を納刀した後ステップを踏むかのように後ろに二三歩分後ろに下がる。


 それを見逃さず攻めようと一歩前に出ようとするも違和感を感じぐっと立ち止まる。


 そして次の瞬間には自分が一歩踏み込んでいたのならば本来足が踏み込むであろう場所に避けきれない起動で斬撃が「下段中」と言う言葉と共にクロ・フリートから放たれる。


 彼の後退が自分を誘い込む誘導であると気付きゾッとする。


クロ・フリートは明らかに魔術だけでなくスキルを中心とした闘いにも慣れしている。それも強者との闘いにだ。


 其れ程にクロ・フリートが繰り出した先程の一連の流れは隙が無い上に無駄が全くないのである。


 S級の冒険ですらスキルを多用した攻撃は何処かしらに隙が生じるものであり、その隙を見付け出し攻めると言うのが常識である。


 あの一連の流れだけを見れば明らかにクロ・フリートはS級以上の実力であるといえよう。


「四ノ太刀、納刀」


 そしてクロ・フリートは明らかに斬撃が届かない位置に居ると言うのにスキルを放つ。


 ただでさえ隙が生じるスキルの空打ちをする理由、そしてクロのスキルに四が付く事を考えるにクロ・フリートの放つスキルは空打ちしてでも数字を上げたい代物であり、それだけのリターンが必ずそこにあると言う事である。


 そして先程の一連の流れは四ノ太刀までがデフォルトであり、確実に四ノ太刀まで安全に繋げる事が出来る事がうかがえる。

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