第228話帰る場所
その顔は怒りたいが相手が好きすぎて許してしまう自分に対して「もうっ」と言っているのが手に取るように分かる。
「さて、そこのヴァンパイアさん、私達は我が主の為に今以上に強くなりたいのです。ですのでここ以上に難易度が高いダンジョンを教えて下さらないかしら?」
「わ、分かりました……」
そんなセラとは対照的にどこか余裕めいた表情をしたウィンディーネはデイモンに高難易度のダンジョンを聞き出しているようである。
そのデイモンは今までのヴァンパイアの真祖というプライドも誇りもその表情からは見受けられず目の前のウィンディーネに怯えている。
その姿は以前の彼を知るコンラッドからすればまるで別人である。
「ねえコンラッド大佐……」
「なんだベッテン」
急にベッテンに話しかけられて振り向くとそこには何処かスッキリした表情をした彼女がいた。
そに目には力強い意志が確かに見える。
「私、もっと強くなりたい……」
「………いって来い。お前が帰って来るまで、帰る場所として帝国は俺が守っているから」
「は、はいっ」
彼女の考えんとしている事は手に取るように分かる。
ならば自分のすべき事は彼女が帰る場所を守る事だろう。
そして彼女は返事一つするとウィンディーネの方へ走っていく。
その姿は帝国軍の若獅子の一人と言われ、それを受け止め誇りにしていた頃の彼女よりも何処か生き生きしてるのは気のせいではないだろう。
「彼女が帝国から居なくなると寂しくなりますな」
「いや、帝国に戻ればやる事が山済みなんだ。それを感じれないほど忙しくなるぞ」
帝国を内側から破壊して新たな帝国にしようと言うのだ。生半可ないそがしさでは無いだろう。
帝国という国にはもう未練はないのでブラッドに命令をして新しい国を作って一からやり直すという事をしても良いのだが、そう思うだけにしておく。
「国民は事の真相なぞ知らないだろうしな」
そう言うとコンラッドは静かに苦笑いして溜息をつくのであった。
◇◆◆◇
学園都市ベルホルンで開かれる学園闘技大会まであと一週間まで迫り太陽が沈み三つある月のうち二つが夜空を照らし輝いている現在、街の飲屋街は益々活気に溢れだしている。
「大魔王さん、今日くらいはエールを飲んでも良いんじゃないのかい?」
「自分には合わないみたいなんで遠慮しときます。その代わりなんでも良いんで果実汁を二つお願いします」
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