第192話【閑話】スムージー1
◇◆◆◇
ミキサー……若しくはジュウサーと呼ぶらしいその見たこともない道具を使い今、セラ様が紫色をしたこれまた見たこともない物体をこの世に産み落とそうとしていた。
どうしてこうなった……。
この世の誰がこうなると、今目の前で繰り広げられている錬金術を予測できたであろうか?いや無理であろう。
だからこそ私は今刻々と刻まれる時と共に近づく処刑の執行を待つ身に落ちてしまったのである。
「ミセル……貴女の屍はちゃんと弔ってあげるわ……」
そんな私の心境を知ってか知らずか………いや、あの顔は間違いなく私の心境を理解し上で「ヨヨヨ…」とわざとらしい泣き真似を入れながら宣う。
ゴポウ……
初めは固い物を砕く音が徐々に高速で液体をかき混ぜる音とそれを回転させている音に変化するのだが……先程明らかに件のミキサーから聞き逃せない音が聞こえてきた気がする。
………ゴポポウっ!!
聞こえない。私は聞こえない。
「ご…ゴポポウ………だって」
そんな私の心境をまたしても見透かしレイチェルが笑うのを必死で我慢しながらも先程聞こえた音を嬉しそうに真似る。
レイチェルは後で殴ると心に刻み、どうしてこうなったと再度ミセルは頭を悩ませる。
事の発端は今から半刻ほど前まで遡る。
丁度その時私達は美肌の維持と秘訣について姦しくも話し合っていた。
やれヤルムの若葉を食すのが良い、やれ虫蜜が良い、やれ瓜を顔に寝る前貼るのが良い等盛り上がっていた時である。
「そういえば思い出したのですが、昔クロ様達の会話で健康と美肌の秘訣は毎朝のスムージーだそうです」
そうセラ様が発言し、ウィンディーネ様とルシファー様がスムージーなる物を今まで忘れてたと悔しそうにしだす。
しかしスムージーなる物を見たことも聞いたことも、それが食べ物かどうかなんて勿論知らない私はレイチェルの方を向き目線で「知ってるか?」と聞いてみるもやはりレイチェルも知らないみたいである。
それから十分ほど経過した時、セラ様がストレージからエールを飲むときによく見るジョッキのような物を取り出して来る。
ようなものと表現したのは、セラ様が取り出した物はジョッキであってジョッキではなかったからである。
本来飲み口である部分には蓋がされており、下に何か金具が取り付けられていた。
「スムージーは飲み物なのですか?」
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