第三章
第168話悔いだけは残して欲しくない
大会まで一ヶ月を切りここベルホルンはにわかに活気付き始めている。
そんな中クロは学園の練習場であるグラウンドに生徒であるレニア、ユーコ、エシリアを呼び寄せ今日の授業の説明をしだす。
「今日は向こう側にいるチームと模擬戦をしてもらう」
「……へ?」
「い、今何と…?」
「聞き間違いかしら?今あちらの方達と模擬戦をすると聞こえたのですけれどもそ…そそ…そんな訳ないですわよね?」
そしてクロの短い練習内容と説明にレニア達は冗談であって欲しいとクロに今一度説明を求める。
「聞き間違いじゃない。模擬戦だ。いきなり本番を迎え緊張で本来の力を発揮出来ず負けるなんて嫌だろ?」
クロがそう言うと三人は首を縦にふり、クロの次の言葉を真剣な面持ちで待ち構える。
「その為に今から一ヶ月はみっちりと模擬戦を組ん出来た。試合本番とまでは行かないまでも試合の空気に慣れる事が今後の目標で課題だ」
本番で緊張してしまうのは仕方ないとは思うが、それが適度な緊張感なら良いのだが度がすぎると本来の力を発揮出来ず負けてしまうのは今まで必死に練習してきたレニア達を間近で見てきたクロからすれば回避させてあげたい課題である。
負けるのなら全力を出させてあげて負けさせてやりたい。
もちろん勝たせてやりたいと当然思っているのだが今回の大会で悔いだけは残して欲しくないと思う。
そこでぶっつけ本番で久しぶりの試合による緊張と本番という緊張、自分の力が本当に学生達に通用するのかという緊張から、試合に慣れさせ自分達の力量を把握させて学生達にも通用するという自信を持たせる事で上の三つの緊張する原因のうち二つを取り除いてやるのが模擬戦をする理由である。
「し、しかしお師匠様…?」
「何だレニア?」
「あそこに見えるお方達は……わたしの見間違いで無ければランクBの冒険者さん三名に見えるのですが…?」
「よく分かったな。サラの呼びかけで二つ返事でこれから毎日違う冒険者達と模擬戦の相手をしてくれるらしいぞ」
そしてクロが連れてきたチームはランクBの冒険者パーティーでもあり、その事に気付いたレニアはたかだか学生である自分達ににランクBの冒険者は荷が重過ぎるとクロに視線をやるのだがレニアに視線を向けられたクロは何故か誇らしげにこれから毎日冒険者さん達と模擬戦をする事を告げられる。
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